表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薄明の空を君と見ながら。  作者: 佐野いさ
二章、二番大隊編
29/64

悪魔退治 ー泉と宇野ー

「うわあああああああ!」


 体の軽い泉は竜巻に煽られ、あらぬ方向へと飛んでいく。その首根っこを体の大きな宇野は思い切り引き寄せた。


「げふっ」


 泉が無様に着地すると、そこは街を見下ろせる山の上だった。



「大丈夫!?大隊長!?」


 土に顔面が突き刺さっている泉を宇野は心配する。


「ぷへっ…!よし、大丈夫だ!」


 顔を上げ、プルプルと頭を振り土を払うと、泉は宇野に向き直りあたりを見回した。


 天邪鬼から距離が離れたからか、雨は降っていない。しかし未地区上空を一体の悪魔が飛んでいる。どうやら泉たちは元居た場所に逆戻りしたようだった。


『~~~~~~~』


 聞き取れぬ言語を叫び、悪魔は街の上で笑っている。

 このままでは街が危ない。

 が、しかし。泉たちにはさらに良くないことが起こっていた。


「あ、マズい…」


 見上げた先の数人の隊員たちの顔ぶれに泉は思わず声を漏らす。

 宇野も同じことを思っていたらしく、表情が芳しくない。


「マズいね。あいつらだけじゃ決定打にならない…。どうするよ?」


 泉たちが懸念したのはここに滲、榎本、大路がいないことではない。むしろその逆である。ここに泉と宇野が揃ってしまったことだった。


 最強と謳われる一番大隊の中では、それぞれの得意を活かした明確な役割分担が存在する。

 大路が敵の情報を集め矢面に立ち、榎本がそれを踏まえたうえでの奇襲、攪乱を担う。さらにそこから指揮を執るのは作戦立案の滲の役割である。

 しかし肝心の魔族を倒す決定打はいつも泉と宇野が担っていた。


 決定打のない中隊がどうなるか、泉たち二人は身をもって知っている。

 だが焦りを覚えた宇野に、泉は迷いなき瞳でこう言った。


「簡単なこと。奴を倒し、他中隊を助けに行く!」


 決意の瞳で泉は悪魔を見据え、再び浮遊する。


「この場にいる隊員を臨時で宇野中隊とする!私が悪魔を気絶させたら即座に他中隊の下へ走れ!」


 その姿は、歳の十二離れた宇野でさえ驚嘆するほど、頼もしい大隊長の姿だった。


 大隊長の号令に宇野は火をつけられたように跪く。


「大隊長、副隊長から伝言です!“悪魔の体をぶっ壊せ”と!」

「え!?どういうこと!?」


 復活してしまうから倒すことを避けようとした泉に、宇野は不敵に笑った。


「よくわかんないけどあんたの旦那が言った言葉です。信じていいでしょう!」


 副隊長の言葉に絶大な信頼を寄せる宇野は泉を後押しする。その言葉に泉は深く頷いた。


「いいだろう!それなら話は早い!宇野、攻撃力が必要だ!お前の力を借りたい!私を奴まで投げ飛ばせ!」

「了解ッ!」


 宇野は浮遊した泉の足をつかむ。

 そしてその場で大きく回転すると、足が地面にめり込むほど強く泉を投げ飛ばした。


 宇野の剛腕と、装置の力で泉は加速する。

 隊の中でも一二を争うほど頭の弱い二人は、己が経験の蓄積による感覚のみで、遠心力と推力を掛け合わせた。


「どりゃああああああ!」


 加速した泉は一気に街上空の悪魔に距離を縮め、短刀を構える。

 そしてその速さによけきれず、悪魔の体は泉に貫かれた。


『~~~~~~ッ』


 聞き取れぬ断末魔とともに、悪魔の体が瓦解していく。

 未知の魔族に泉は、攻撃の暇さえ与えず一撃で悪魔を仕留めたのである。

 やがて漆黒の体は脆くも灰のように崩れ去り、消えてなくなった。


 泉はすぐさま方向を変える。

 走り出した宇野中隊とともに、泉は他中隊のいるところを目指した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ