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滲が簡易施設に戻ると、泉たちは取り乱していた。
「え!つまりあの榎本さんという方は占いができるんですか!?」
「そっ、そうなんだ。い、いっぱいできるぞ…!」
「初耳です。大路中隊長から榎本中隊長のお話は聞いたことがありますが、そのようなことは一度も…」
「な?!びっくりだろ!」
何がどうしてそうなったのか、泉は大ぼらを吹いていて話を繋いでいた。
だが、滲はすぐさま状況を理解し、そして泉に呆れてため息を吐いた。
「あ!滲!来たのか!」
振り返った泉は待ち遠しかったように滲のもとへと駆け寄る。
そしてあたふたと滲に耳打ちする。
「マズいぞ!キュリー副隊長来ちゃった!」
「わかっています。まずは状況を整理しましょう」
「うん!」
滲は泉にひそひそとこの先の概要を打ち出す。
「理解しましたか?」
「わかった!それで行こう!」
この場を切り抜ける指示を得た泉は元気に返事をする。
「それと…」
「ん?」
滲が追加で耳打ちすると、泉の耳はポッと赤くなる。
「ふふふ、わかりましたか?」
余裕の滲に泉は無言で頷く。そしてくるりと香山たちに向き直った。
「…?何かあったんですか?」
「なんでもない!なんでもないぞ!」
泉は慌てて首を振る。そんな泉を後押しするように滲は話題をすり替えた。
「申し訳ありません、香山大隊長。私は次に予定ができてしまったので、例の件は泉さんとお願いします」
「例の件…?」
「えっ、あ、はい!わかりましたっ!」
キュリーに勘繰られぬよう、香山はすぐさま滲の言わんとしていることを理解し勢いで押し切る。
「それでは泉さん、では後ほど」
「ああ!さっ、早く行こう!あまりよそ見をせずに早く行こう!」
「はっ、はい!そ、それではキュリーさんごきげんよう!」
「はい、ごきげんよう」
泉たちに押し切られるまま、キュリーは呆然と香山たちの背中を見送った。
「ごきげんよう?」
冗談のような上品な挨拶に滲は一瞬面食らう。
しかしここで長居をしても仕方がないので、滲はキュリーに向き直った。
「では私たちも行きましょうか。キュリー副隊長」
「はい。よろしくお願いします」
キュリーはワンピースの裾を揺らしながら、滲にキッチリと頭を下げた。




