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薄明の空を君と見ながら。  作者: 佐野いさ
一章、一番大隊編
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面白い男

 日没を迎えた夜。

 後藤は軍部大臣邸宅で、先ほどまで机の上の小瓶にいなかった蝶を見て、暗い窓の外を眺め重いため息をついた。


「失礼します、大臣」


 扉の向こうに、菊が音もなく現れた。


「入れ」


 後藤は菊の声に顔すら動かさず、不機嫌そうに窓の外を見ている。


「また魔族が復活したようだな」

「ええ。しかしそんなことよりもこれを」


 中に入って来た菊は後藤に気まずそうに一枚の書類を差し出した。


「なんだ?」

「井上滲についての調査資料です。ご覧ください」


 後藤は菊から無言で書類を受け取る。そして書面に目を向けると、驚いたように片目を見開いた。


「これはどういうことだ…!?」


 後藤にしては珍しく声を荒げた。


「私にもわかりません。こんなことがあるとは…」


 隠密と情報収集能力に長けた菊は冷や汗をかいている。

 後藤は手の中にある書類を信じられないという風に片目で睨んだ。


「あの男、想像以上に面白いらしいなッ…!」


 後藤は口の端を上げながら焦燥の汗を流し、書類を机に叩きつけた。

 そこには軍入隊までの井上滲の出生、身元、あらゆる過去のすべてが不明と記されていた。


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