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探偵でSPとか、聞いてない  作者: 岳川渓湖
3章 南のかくれんぼ

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 車内は暗く、揺れだけがはっきりと伝わってくる。床に押しつけられ、汗で髪が額に張りつくのを感じた。制服の袖が腕に巻き付き、足元のスニーカーが床に擦れる。

突然、口元に湿った布が押し当てられた。息が一瞬止まる。タオルの匂いと、車内の油と樹脂の混じった匂いが鼻を突く。声は出せない。目だけで状況を把握するしかなかった。


 前方で、男たちの声が気の抜けた調子で交わされる。


「五人は多すぎだろ」

「文句言うな。向こう着いたら分かれるんだからよ」

「それより時間だろ。首都高、今なら空いてるよな」

「あぁ湾岸回りなら」

「あそこなら、夜は誰も来ねぇよ」


 湾岸——その一言で、胸の奥が冷えた。


 外の街灯が窓に反射し、暗い車内にちらちら光の筋を落とす。


「旧冷凍の方だよな」

「倉庫番号も変わってねぇ」

「管理会社、もう潰れてるって聞いたぞ」


 笑い声。まるで、行き慣れた場所に向かうかのような軽さだった。


 車は速度を上げ、街灯は後ろに流れ、振動が床から全身に伝わる。

足元に、小さな何かが当たった感触。指が、空を掴む。


(あれ)


 もう一度、探る。ポケット。バッグの内側。それでも、無い。


 胸の奥が、すっと冷えた。姉からもらった、スマホのキーホルダー。何でもない日に、何でもない顔で渡されたもの。私は唇を噛み、額にかかる髪を払いのけた。外の街灯が窓にちらつき、街の光景がまるで遠くの夢のように揺れる。


 ——どこで、落とした?

あそこなら……考えようとしたその瞬間、腕をさらに強く掴まれる。


 自分勝手なのは分かっているのに、考えてしまう。

助けて。

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