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探偵でSPとか、聞いてない  作者: 岳川渓湖
3章 南のかくれんぼ

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そんな中——


デデデデ、デデデデ、デェーデン!

空気を裂くような着信音。全員の視線が一斉に向く。

スマホを取り出したのは——。


「はい、和希です」


 その一言で、誰の着信音かは十分だった。


「……地下鉄? うん」


 詩織が近づく。俺は通話を切り、短く頷いた。

美羽からの電話が終わったあと、黒川が腕を組み、杉並区の地図をゆっくり指でなぞる。


「……南阿佐ヶ谷から六時間。ドローンじゃ追えない。なら、地下鉄だけで移動してるんじゃないかって」

「だとすると、足跡がつかめるのは駅構内のカメラだけ」


 俺が端末を操作しつつ言う。亜紀は淡々と、しかし鋭く付け加える。


「複雑な乗り換えは避ける。直感で行きやすい場所、つまり──一本で行ける駅か、乗り換えが単純なところね」

「丸ノ内線か、せいぜい半蔵門・銀座との接続くらいだから、降りるなら」


 黒川が地図を見下ろしながらつぶやく。


「渋谷」


 すると、詩織がスマホを操作しながら眉を上げた。


「今日、渋谷でイベントやってる。人が多くて、外に出てもまず見つけられないレベルの」

「地下鉄から出ても、完全に人の波に紛れられる。派手な場所ほど逆に死角になるって知ってる」


 皐月が感心したように言う。俺はスマホをポケットにしまい、息をつく。


「……ビンゴなら、今頃渋谷にいるってわけだな」


 雑踏、喧騒、光。そして、人波の底に沈む影ひとつ。

六時間の空白。胸の奥で、微かなざわめきが形を結ぶ。


(南——)


 気づけば拳を握っていた。

渋谷の方向から吹くはずのない風が、どこかでドアを揺らす。

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