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黒川の絶叫がぷつりと途切れ、白目をむいて泡まで吹き始めた。
「泡って出るんだな」
和希の素朴な声をよそに、皐月部長は無言で黒川の首根っこをつかみ、ズルズルと引きずり始めた。
「酸素が足りてないようだな」
「ひゅ……ぅえ……」
(※言語機能消滅)
宮本が慌てて手を挙げる。
「おおおれは関係ないっすよ?」
「連帯責任……素晴らしいな」
「んでぇぇぇ!!?」
宮本も同じように引きずられ、二人は完全に問題犬の扱い。
その横で——
「部長〜♪」
詩織が嬉しそうに駆け寄った。
さっきまでのバラ粉砕鬼はどこへやら、甘えた顔。
「詩織。今日も元気だな」
皐月部長が微笑むと、亜紀も自然と柔らかい表情になる。
「皐月さん、詩織に会いに来たんでしょ?」
「まぁな。というか——詩織、あの少女の件だ」
「目撃情報は?」
「駅と公園付近には全くなかった」
空気がすっと引き締まる。
さっきまでの殺伐ギャグが嘘のような真面目モード。
「ただ、南サイドの商店街で似た子が歩いてたって情報。身長と髪型がだいたい一致してる」
詩織が真顔で小さく頷く。亜紀も眉を寄せる。
「一人じゃ限界がくるころ」
和希と拓人は遠巻きにその会話を見ていた。
「かずくん俺もそろそろ会話に入——」
和希に軽く押さえつけられ、拓人は即退場。
二人は完全に景色。一方で、詩織・皐月・亜紀の三人は真剣な顔で続ける。
「——絞れる場所は」
すると、黒川と宮本は遠くで「うぅ……」と立ち上がった。




