表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

3

 妹とは何か。 再定義しよう。

それは癒しであり、救いであり、人生の最終兵器である。妹がいれば、世界はもう少し優しくなれる。

少なくとも、俺はそう信じていた。


 たとえば——

朝、布団に突撃してくる元気な妹。

台所を覗いて「今日のごはんなに〜?」と聞いてくる甘えん坊。

紅茶を淹れて「お兄様、お疲れさまです」と微笑むメイド系。

「お兄ちゃんって、太宰に似てるね」と言ってくれる文学系。

「ぎゅってして〜♡」とぬいぐるみを抱えてくる天然系。思い出してほしい。これこそが至高である。

ちなみに、双子は至高は至高でも、嗜好の方である。このボーダーラインが分からなければ、それはただのシスコンである。

え? お前はなんだって? フェミニストでも呼んでほしい。


 さて、話は戻るが、妹たちに囲まれて、俺は「お兄ちゃん」と呼ばれながら生きていきたい。 俺の人生の理想形なのだ。


「お兄ちゃん、起きて〜♡」

「にぃに、あそぼー」

「あんちゃん、今日もかっこいいね!」

「お兄様、今日は一緒に寝ましょ??」

「おにぃ〜、ぎゅってして〜♡」


 そう、それでいいのだ。

 年の離れた甘えん坊、ツンデレ、文学系、天然、メイド風。属性のフルコース。 デザートは子守唄で。我ながら気持ち悪い。


 そして、極めつけはこうだ。

リビングは白を基調とした洋館風。

テーブルにはパンケーキと紅茶を添えて。

妹たちは俺の隣を奪い合い、膝に座り、腕に絡みつく。


「お兄ちゃんって、世界一素敵だよね♡」

「にぃにがいるから、毎日が楽しい〜」

「お兄様、今日もご無事で……」


 俺は震えた。

これは夢か? いや、夢でいい。夢であってくれ。

このまま永遠に——


「起きろー。現実に帰ってこい」


 ——その瞬間、世界が崩れた。

目を開けると、そこは俺の部屋。

天井。布団。スマホの充電コードが首に絡まってる。

ドアの前には仁王立ちの真琴姉さん。


「……何その顔。キモい」

「えっ……あ……え……どこ……?」


「現実だよ」

「うそだ! 俺には最愛の!」

「だから、妹いねぇよ? いるのは姉5人。まだ寝ぼけてんのか?」


 俺は枕に顔を埋めて、叫んだ。


「うわあああああああああああああああああああああああああああ!」


「愚弟が」


 真琴姉さんは冷酷に言い放ち、バンッとドアを閉めた。

 俺は夢の余韻に浸りながら、スマホを手に取る。


「あ……」


 時刻は、8時15分。遅刻決定である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ