表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探偵でSPとか、聞いてない  作者: 岳川渓湖
2章 家出します……

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/39

29

 昼過ぎ。

俺たちは、警察署へ向かっていた。

車内の空気はやけに静かだった。


 運転席には斎藤拓人。タイミングのいい気遣いが売りのドM。こんなやつの隣に南を座らせるわけにはいかないので、おれが助手席に座る。ウイルスバスターです。後部座席では、南が窓の外を見ている。反射する街並みを眺めながら、どこか遠い世界にいるような顔。


「緊張してます?」


 と拓人。


「……別に」


 南は短く答えた。


「塩対応たまらないねぇ」

「アンタも条例違反で警察につき出すわ」

「お互い様じゃない?」

「こりゃ、一本とられた」


 「アハハハ」と、高笑いをする男どもにため息を漏らす南。フロントミラーごしに拓人は、あっけらかんと語りかける。


「母親って、思ってるより強いもんですよ」

「強すぎるの。だから、私いらないの」


 その言葉が、車内に薄く残った。


 ——いらないなんて、誰が決めたんだよ。


何も言えないまま、警察署に到着。

拓人がドアを開けてくれる。

俺と南は並んで中へ。

建物の中はひんやりして、書類の匂いとコーヒーの香りが混ざっていた。


「受付してくるね。二人はここで待っててください」

「お願しやっす」


 ほんの数分。

 受付を済ませて振り返ると、南がそわそわしていた。


「どうした?」

「……トイレ行ってくる」

「場所わかる?」

「うん。大丈夫」

「俺も」

「ついてこないで」


 ですよねー。

彼女は廊下の奥へと消えた。

俺はソファに腰を下ろし、腕時計をちらり。


 ——三分、五分、七分。


 時間の流れが妙に長く感じる。

人の出入りは多い。制服姿の警官、記者、住民。

でも、その中に南はいない。


「……遅いな」


 立ち上がって、廊下を覗く。

女子トイレの前まで行っても、出てくる気配がない。

背後から、斎藤がやってきた。


「南ちゃん、どうしたんです?」

「トイレって言って、戻ってこない」

「ふむ……」


 拓人は腕時計をちらっと見て、ため息をついた。


「和希君。外も見ときましょうよ。こういう場所、裏口が多いんで」


 嫌な予感が、喉の奥を掴む。

二人で廊下を抜け、署の裏口へ。

職員用の通路、段ボールが積まれた搬入口。

その隅にぽつんと、南の鞄が落ちていた。空気が、一瞬止まる。


「マジかよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ