28
翌朝。
朝食のトーストを半分齧ったまま、南はぼんやりテレビを見ていた。俺はというと、昨夜からずっと考えていた——
どうすれば、あいつをちゃんと家に帰せるのか。
「なぁ、今日さ。俺も警察行くじゃん」
「……わかってるよ」
そう言いながらも、南の視線は窓の外へ。
あの目は、本気で嫌がってるわけじゃない。
迷ってるだけだ。
「こうしよう。俺が一緒に謝る。『彼氏です、すみませんでした』って」
「やめて!? 変な誤解うむやつ!!」
先程までのしおらしさがなく、めっちゃ焦ってるよ。
「じゃ、『兄です』しか……」
なんだよ。最高かよ。
「もっとややこしいわ!」
やり取りの最中、部屋の奥から足音。千佳姉がコーヒーを片手に現れた。
「ふふ。面白いわね、あんたたち」
「千佳ねぇ、笑ってないでなんか丸く解決する方法はないのか?」
「助けてあげるけど……条件つき」
「条件?」
千佳はにやりと笑い、南をじろっと見た。
「――和希、あんた、南ちゃんに変装してみない?」
……数分後。
鏡の前に立つ俺は、もはや誰だかわからなかった。
千佳のメイク技術が本気を出した結果、
そこに映っていたのは、限りなく南に近い俺。
「うわ……これ、本人じゃね?」
「やば、双子?」
「……身長が30センチ違うけどね」
千佳がニヤッと指摘。
そう、致命的にバレる。
これじゃあ南役どころか、進撃の南だ。
「……やめよっか」
「やめて」
残念そうな千佳と真顔の南。えぇ? ポージング気に入らなかった? ホームレス中学生の表紙のやつだけど。もっと、布教せねば。
「そんじゃ、千佳ねぇ。条件聞いたんだし、アイディアくれよ」
「ないわ。正面からぶつかりなさい」
即終了。また女装損かよ。俺もノリノリだったけどさ。このくだらない作戦で、少しだけ南は笑っていた。
「仲直りなんて必要ないよ」
「はぁ!?」
「答えは自分で考えなさい」
「ちょ、どこいくんだよ! 家族みんなで行くんじゃ」
「誰もそんなこと言ってないし。アンタのその先入観? いい加減直しなさい。じゃ、わたしはバイトだから。頑張ってね~」
軽快な足取りで玄関へ走っていく千佳姉に、なんとなく背中を押された気がした。




