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探偵でSPとか、聞いてない 【第一稿版】  作者:
【お知らせ】ここからのエピソードを改稿中
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 テーブルの上では、南のタオルから滴った水がぽたり、ぽたりと音を立てている。声をかけるタイミングを探していた。怒りが収まったわけじゃない。けれど沈黙の温度が、どこか寂しい。


「あのさ」


 ようやく出た声は、予想以上に情けない。

南が、濡れた髪を指でいじりながら顔を上げた。


「なに」

「いや、風邪ひくぞ」

「ふん」


 それだけ言って、また黙る。

ああもう。こういうとき、どんな顔すればいいんだよ。謝っても怒られるし、黙ってても気まずいし。

俺の脳内ではすでに謝罪文テンプレートが十通分ループしていた。


「南ちゃん、話聞いてもいい?」


 亜紀の優しさに閉ざしていた唇をかすかに震わせながら、彼女は暗く呟く。


「お母さんが再婚したの」


 目を合わせないまま、絞り出すように言う。

まるで、湯気の向こうの誰かに話しているみたいだった。


「お父さんとは去年離婚してね。私、どっちの家にも居場所がないの。あの人、新しい家庭を完璧に作りたいみたいで、私がいるとバランス崩れるんだって」


 淡々とした口調なのに、声の奥が震えていた。

俺は、胸の奥がずきんと痛んだ。


「……それで、家出?」

「まあ、そんな感じ。逃げたら怒られるのわかってたけど、もういい子やめたくて」


 南は自嘲気味に笑った。

 けど、その笑いは泣くより苦しかった。


「……そっか」

 

 俺は、湯気の向こうの彼女に言った。


「前のお父さんには会いに行こうとしなかったの?」


 詩織は言葉を選ばず、正論を問うと、南は首を横に降ってうつむく。


「住所も連絡先も知らない。失踪したんだ」


 蒸発ってやつか。


「明日、警察にいくことになってる。」

「やだ」

「……バカじゃないの」


 真琴が冷たい言葉を投げる。


「まぁまぁ、俺も一緒にいって、仲立ちするから」

「……自首」


 少し黙ろうか美羽ねぇ。

その隣の南は、ぷいっとそらされる。

でもその横顔が、少しだけやわらかく見えた。


「わかるわけない」


 その夜、湯気が消えても、ぽつりとつぶやいた彼女の言葉だけが胸に残った。

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