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手探りながら、視界を掻き分ける。
ドアはドアは、どこだ!
むにゅッ。
「……」
むにゅ。むにゅ?
なにこれ。柔らかい。これは、あれだ。スポンジだよ。うん。そう、思い込む。
「どこ触ってっ!」
「ちがっ、偶然っ、いや運命で!」
ドンっと鈍い音が響き渡る。
びしょ濡れのまま、ドローンのサーチライトが俺を照らしていた。
そして今。
足が痺れている。
もう何時間、正座させられてるんだろう。デジャブかな。
「いやぁー! あの裏金のデータがリフォームに役立つとはねぇー」
「まさかスパイ工作の資金源だったなんて、驚きだよ」
「スポンサーからの謝礼金にはびっくりした。書斎部屋も欲しかったなぁ」
「贅沢言わないの」
テンション上げ上げの亜紀、千佳、詩織。探偵なんて名ばかりで、スキャンダルを売りさばく週刊誌の連中だ。しかも色々と新事実が発覚してるけど、それ、俺の頑張り一ミリも還元されてませんよね?
そして、向かいの席——湯上がりの南が、腕を組んでこちらを睨んでいる。タオルドライした髪から水滴が落ち、床を濡らしている。
……さっきのことを思い出すだけで、心臓が死ぬ。
「のぞき、ゴミカス……」
「和希。迷惑かけてもいいって言ったけどさぁ」
「ヘイビクシー、どうすれば弟の戸籍消せる?」
南の殺意、真琴の同情、美羽の検索。
三者三様の感情ありがとう。
いつも厳しい真琴姉さんの優しさに涙が出てくるよ。
「話し合いましょう?」
「○ね!」
やーっべ。まだ怒ってらっしゃる。
人生のセーブポイントがないとわかっているけれど。
あればと思った、この日を忘れることはないだろう。




