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探偵でSPとか、聞いてない  作者: 岳川渓湖
2章 家出します……

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 桜川家の前。

監視カメラ6台。ドローン2機。

門には、なぜか指紋認証と顔認証。


 うーん。ちょっと待て? 家、間違えた?

誰の屋敷だよこれ。令嬢か政府高官か。


「……潜入するしか」


 腰を落とし、柵の影に身を沈める。

 音を消し、風と同化。脳内ではもうジャズのテナーサックスが流れ始めている。


 標的:行方不明の少女。

 任務:極秘調査。

 難易度:家族の監視突破。


 ——カズキ三世、潜入開始。


 壁をよじ登り、塀を跨ぎ、物陰に身を滑り込ませる。

 だが、次の瞬間。


「ピコン。侵入者を検知。侵入者を検知」


「……は?」


 地面のセンサーが赤く光り、庭のドローンが一斉に浮上。

 蜂の群れみたいな羽音とともに、サーチライトが俺を照らす。


「ちょ、待て! 撃つな! 俺だ俺ぇぇええ!!?」


 全力で逃げる俺の背中に、ドローンの警報音が追いすがる。スリル・サスペンス・命の危機。

玄関の扉がゆっくりと開く。パジャマ姿の詩織姉が、寝癖頭で現れた。


「……変態」

「ちがうだ! とっつぁん!」

「だれがとっつぁんよ。とうとう我慢できなくなったのね」

「メール見ただろ!? 依頼だよ、依頼!!」

「見たから警戒してるの。SP課なめんな」

「おかしいだろぉぉ!!」


 その瞬間、ドローンの一機が閃光を放つ。

俺は咄嗟に身をひねり、庭の端にダイブ。

——が、瓦に足を取られ、体勢を崩した。


「アアアァァァァ——っ!!」


 バリィィン!!

ガラスが砕け、俺の体は宙を舞った。

スローモーションの中、湯気が渦を巻く。

視界いっぱいに白と淡いピンクが広がり——


 そこに、彼女がいた。


 半ば湯に沈み、肩まで濡れた長い髪が肌に貼りついている。濡れた睫毛がきらめき、しずくが頬を伝い落ちる。湯気の中で肌はほのかに桜色に染まり、光が輪郭を柔らかく溶かしていた。それはまるで、ルーヴル美術館に展示された彫刻が、湯船に転生したかのよう。


「ひっ!」


——いや違う、目の前に涙目の家出少女。

そんな比喩をしてる場合じゃない。


「きゃああああああああああああ!!」

「ちょっ、ちょっと待て誤解誤解誤ご——!」


 瞬間、洗面器が飛んできて額にヒット。

続けざまにボディソープのボトル、シャンプー、スポンジ。俺の頭上で炸裂する洗浄の嵐。


「出てけぇぇええ!!」

「違! ごめんて、俺はただっ——」

「こっち見んな!!」


 バッシャーン!!

 湯を浴び、泡にまみれ、視界が真っ白になった。

家出少女の名前は、冴島南に決定しました。23ページも改稿してます。

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