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「……で、どうするの?」
声に振り向くと、真琴姉がドアのところに立っていた。コーヒーカップを二つ持ち、片方を俺に差し出す。
「何が?」
「とぼけても無駄。あんた、顔に放っておけないって書いてある」
苦笑しようとして、できなかった。
姉は俺の隣に腰を下ろし、窓の外を見た。
「人を助けたいって気持ちは、悪いことじゃないよ」
「でも……勝手に動いたら、また迷惑かけるだけだ」
「迷惑くらい、かけなさいよ」
姉の声は、やさしいけどどこか遠くを見ていた。
「正しいことより、目の前の誰かを選ぶ人になりなさい」
その言葉が、胸に沈んだ。
「なれるもんかね」
「知らない。けど、今みたいに迷ってるなら、たぶんもうそうだよ」
真琴姉が立ち上がり、部屋を出ていく。
ドアの向こうに消えるまでの足音が、妙に長く感じた。
しばらくの沈黙。やがて、机の上の端末が光る。
SP課の通信ログ。そこに、新しい依頼入力の画面を開く。
> 【新規案件】
依頼名:家出少女の調査
依頼者:桜川和希(臨時協力員)
Enterを押す瞬間、胸の中で何かが弾けた。
冷めたコーヒーを飲み干す。窓の外、雨上がりの光が差し込んでいた。




