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探偵でSPとか、聞いてない  作者: 岳川渓湖
2章 家出します……

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 桜川探偵事務所──通称「SP課」のソファーで、俺は寝転がって天井を見上げていた。

スタント、潜入、尾行。依頼内容は大体そんなところだ。

危険なバイトのくせに、給料は雀の涙。

けれど、今日のことは、いつもの任務とは違っていた。


 冴島先輩が、どうして俺に相談したのか。

たかが学校で顔を合わせる程度の関係なのに。

「親にも、警察にも頼れない」と彼女は言った。


 その言葉が、頭から離れなかった。

俺は基本、人の事情に首を突っ込むタイプじゃない。

ただのアルバイト。命令されれば走り、撃たれそうになれば逃げる。

けど、今回は──そう簡単に割り切れそうになかった。


「……やるしかねぇよな」


 夜の事務所は静まり返っていた。

壁際の蛍光灯がジジ、と音を立て、光がわずかに揺れる。

古びたソファーの沈み込みに体を預け、目を閉じる。


「親って……なんなんだろうな」


 思い浮かぶのは、遺影の中の二人の笑顔だけ。

もう声も知らない、遠い過去の家族。

その面影が、冴島先輩の表情と重なって見えた。


 俺は小さく息を吐く。

決意というより、諦めに近い溜息だった。


 ──明日、彼女にもう一度会おう。

たぶん、そこから何かが始まる。

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