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桜川探偵事務所SP課! ~妹推しの俺、五人の義姉に迫られています~  作者:
1章 妹は、幽霊でもかまいませんよ?
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「……なんで来たんだよ」


「え? 男二人で心霊スポットなんて、どう考えても怪しいでしょ?」


 鼻息の荒いドライバーが目の前にいるね。うん、やばいね。


「それは……否定できねぇけど」


「だから、監視。幼なじみの義務ってやつ?」


 未来は、ふざけた口調とは裏腹に、じっと俺の目を見ていた。

その視線の奥には、冗談だけじゃない何かがある。


「……勝手にしろよ」


 俺はそっぽを向いたが、心のどこかで、少しだけ安心していたのも事実だった。


 拓人が運転する車が、キャンプ場方面へと走っていた。

車内には微妙な沈黙が流れている。

だけど、不思議と気まずくはなかった。


未来は後部座席から、ふいに言った。


「ねぇ、和希」


「ん?」


「女装、似合ってたよ」


 スゥゥゥゥ! 深呼吸だぁ。ふぅぅ。平静を装い振り返ると、未来はニヤリと笑っていた。


「Zで見た。例のメイド喫茶のやつ」


「ハハハ」


「『#男の娘』『#中身男子説』ってタグついてて、めっちゃバズってた。5万リツイートくらい?」


「ふざけ……ってか、保存してないよな?」


「してないよー?」


 彼女のスマホをスッと奪い確認すると、しおりマークにリツイートにいいねの三拍子。


「してるじゃねぇ!!」


 拓人が吹き出す。


「あれ見た人の9割が、『男だと思わなかった』って言ってたね? 逆にすごいですよ」


「やかましい!」


 俺は思わず顔を手で覆った。

未来が少しだけ、声のトーンを落とす。


「でもさ……あれ、仕事だったんでしょ? 誰かを守るためにやったんでしょ?」


「……まあな」


「そっか。……そういうの、あんたらしいよ」


 俺は何も返せなかった。スミマセン、消去法です。

ただ、窓に映った自分の顔が少し赤くなっているのが見えて、慌てて目をそらす。


「じゃ、行こうか。かーずくん♡」


 キャンプ場の裏手。

木々の間を縫うように進むと、ぽつんと現れた廃屋。

屋根は崩れかけ、窓は割れて、建物全体が森の中に沈んでいるようだった。


「……うわ、マジで出そうだな」


 拓人が懐中電灯を照らしながら言う。


「出るよ。俺のテンションが」


「黙れ、拓人」


 未来が俺のすぐ後ろを歩いている。

その距離が、さっきよりもさらに近い。


「ねぇ、和希……怖い?」


「別に」


「じゃあ、手……つないでいい?」


「は?」


「冗談。でも、ちょっとだけ、本当に怖いかも」


 その言葉に、思わず手を伸ばしかけた——

その瞬間、廃屋の奥から「ゴンッ」と何かが転がるような音が響いた。俺たちは一斉に身をこわばらせる。


「……来たか」


 腰の通信機に手を伸ばす。


『美羽義姉、反応あり。人影確認。これより潜入を開始する』


 未来が、かすかに震えた声でつぶやく。


「ねぇ、……これって、本当に……?」


 俺は、彼女の手をそっと握った。

その手は少し冷たく、わずかに震えていた。

けれど、ちゃんと——握り返してきた。


「大丈夫。……俺から離れるなよ」


「……うん」


 未来が小さく頷く。

夜の静けさの中、俺たちはゆっくりと、廃屋の中へと足を踏み入れた。

その時、ふいに後ろから気配を感じた。


「お兄ちゃん、何してるの?」


 唐突に現れた彼女が悲鳴をあげそうになる中、俺は震えた。そして、雄叫びが遮った。


「――オ……」

「お?」


 首をかしげる少女。


「オオオ、お兄ちゃんキタァァァ!」


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