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桜川探偵事務所SP課! ~妹推しの俺、五人の義姉に迫られています~  作者:
1章 妹は、幽霊でもかまいませんよ?
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 夜風で髪がなびく。

 パンプスのヒールがアスファルトを叩く。

カツ、カツ、カツ。

夜の街に響くその音が、やけに耳につく。

裾は泥にまみれ、走るたびに足に絡みついてくる。

その人は、息を荒げながら、路地を駆け抜けていた。

どうしてこんなことに——と。


「おやおや、お転婆なお姫様だねぇ」


 背後から聞こえる声は、妙に楽しげだった。


「鬼ごっこはおしまいだよー」


 だがその笑い声は、次の瞬間、甲高く、狂気じみた音へと変貌する。


「ひっ……!」


 耳を塞ぎたくなるようなその声に、和希の心臓は跳ね上がった。肩をがしりと掴まれ、無理やり振り向かされる。


目の前にいたのは──同じく、男だった。

驚愕に目を見開いたのは、相手のほう。


「お前……男か……?」


 はい。男です。無言で見つめ合う二人。

 一瞬、空気が止まる。だがそれも束の間、男の表情が崩れた。驚きから、混乱へ──そして、怒りへと。


「クソッ、ふざけやがって……っ! 話と違うじゃねぇか!」


 意味がわからない。だが、直感が告げている。


この男はただの変質者じゃない。もっと、深い闇がある。和希は右足を引く──その反動を利用し、膝蹴りを叩き込んだ。


 油断していた男がのけぞる。その隙を逃さず、和希はスカートの裾を引きちぎった。

露わになった太ももから、伸縮式の警備用警棒を引き抜く。


「このクソ野郎ォ!」


 警棒が、風を切る音とともに振るわれる。

男の腕をかすめ、袖が裂ける。


「なめてんじゃねぇぞ! クゾガキャ!」


 男も体勢を立て直し、懐からナイフを抜く。

細身の刃が月光を反射し、白く光る。


 ものほんじゃねぇか!? バイトでやることじゃねぇよ!


作戦通りここまで連れてきたのにあいつらなにやってんだよ!


「オラッァ」

「っぶねなー!」


 深く踏み込み、低い姿勢から下段払い。

男が跳ぶ。すかさず反転して背後を取る──だが、そこで。


「──っ!」


 足元を滑らせ、体が傾ぐ。

雨水で濡れたマンホール。その存在を、完全に見落としていた。視界がぐらつき、身体が地面に倒れ込もうとする——。


(……やべっ!?)


 ナイフをそのまま突きだし、走ってくる男。

だが、次の瞬間。


「カズくん!」


 ペイントボールが男の顔面に直撃する。


「なにしやがる!?」


「……ったく。予定の場所と間反対に行くなんて、つくつぐバカだな」


 聞きなれた罵声。


そして、闇を裂くように、五つの影が路地へと飛び込んできた。


「うちの弟に手ぇ出すんじゃないわよ、変態」

「変態が二人いる」

「てか和希、女装意外と似合ってるね」

「いやいや、センスないでしょ?」

「変態まとめて逮捕ね」


 俺は、苦笑しながら声を腹の底から出す。


「アンタらがやれっていったんだろうが!!」

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