変身せんたく機 「誰にでも使える『空中元素固定装置』を新発売」
第13話目とての投稿作品は、お題「変身洗濯機」に対して書いた『SFの作品』です。
テレビアニメを観て憧れて育った世代の科学者たちが、いつも夢に出て来るほどに考えていたのは、変身することが出来る装置、そう『空中元素固定装置』と『光学迷彩』だった。
ただ『光学迷彩』では、色彩をほぼ透明化したり変更することは出来るものの、現物としての姿形を変更することが出来ないので、これでは一般向けでは無いと判断されたために、科学者たちは『空中元素固定装置』を、重点的に開発することとなった。
変身するための衣装合成は、流石に月の魔法少女たちのような、魔法での変身は流石に不可能だから、科学の力で解決するしか無い。
最初に完成した『空中元素固定装置』は、変身するための衣装合成をするためのエネルギーが膨大だったため、プラントのような設備となってしまう大失敗作だった。
その後も長い歳月を掛けて研究開発は続き、改良を続けることで、動力に超大型の水素燃料電池を組み込むことで、小型トラックサイズにまでには何とか小さくなった。
でもこのサイズでは、服飾店舗向けや家庭向けに一般発売なんて、店舗や部屋の中に収まらないのだから、到底無理な話だった。
製造原価で考えても、まだ1億円を軽く超えてしまう状態だから、これでは誰も買わないだろう。
そんな折、特殊な波長を利用する光触媒の活用で、一度だけ物質固定と分解が出来るガス状新素材が開発された。
分解が終了すると、水素と炭素等に戻るから、リサイクルで回収さえすれば再び素材に戻る可能性があるのだから、エコで環境に優しくもある。
色素を加えて薄く加工すれば、色とりどりの布のような状態になるし、インクジェット方式で絵や写真のプリントも可能、少し厚く加工すればプロテクター的な状態にもなる、加工次第で保温や保湿、冷感や除湿にも対応が出来る、中々優秀で便利な素材だ。
イメージ的には、虫歯の治療で削った穴に充填した詰め物を固める方法に近かったので、エネルギー的にも200Vの工場用三相コンセントで対応できるレベルとなったのだから、まだまだ課題は多いものの、いよいよ市販に向けて開発が加速していった。
市販化に向けての最大の課題は、どうやって変身するための衣装を、素早く綺麗に身に着けさせるかだ。
身に着ける衣装デザインを選択画面でセットしたら、今身に着けている衣装を脱いで、洗濯機を大きくしたような装置の中に入り、衣装作成のために三次元スキャナーで身体情報を読み取ったら、衣装を自動作成して、身に着ける衣装を身体の周囲に特殊な光を照射して固定する。
衣装デザインは、アパレル業界やデザイナーたちとのタイアップ企画として、ほぼ無制限に選ぶことを可能と出来たのは幸いだった。
装置の中に入った人が多少動いても問題なく、この工程全てを数分で完了させることが可能となった時点で、いよいよ『空中元素固定装置』は、服飾店舗向けに新発売することとなった。
商品名は試作機が洗濯機の様なデザインだったので、科学者たちが通称として呼んでいた『変身せんたく機ハニーフラッシュ HF-01』、洗濯をせんたく(選択)に平仮名としただけで、そのまま決定してしまった。
販売価格は第一世代製品1台2,000万円、それなりの数が売れて、量産効果が出てくれば数年で利益が出るようになりそうだ。
これから開発する第二世代製品群は、機能を減らしたり衣装デザインを個人向けに販売する方法等が確立できれば、家庭向けにもう少し安価に販売も出来るだろう。
さてさて初号機の『変身せんたく機ハニーフラッシュ HF-01』は、服飾店舗向けに無事に売れるのだろうか・・・