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第6話 あばよ!

「月影キック!」


あたし達は、新たな仲間を得て、見事!


魔神を倒すことができた。



だけど…。


「月は、いつからある!その答えを探せ!」


イハンダーの謎の言葉。



そして…。




「ルナティックキック!二式!」


ブラックの新技を喰らっても、びくともいない相手。


「オホホ!」


魔将軍ビューティー。


魔神さえも超える存在に気付き、あたし達は自分達の未熟さを知った。




あたし達は、まだまだだ…。





「し、しまった!」


あたしは、がばっとベッドから、飛び起きた。


時計を確認して、愕然とした。


遅刻確定である。


ベッドからなかなか出られないで、うだうだ考えていると…


時間は過ぎてしまった。


一瞬、枕元に置いてある目覚まし時計の針を遅らそうとしたけど、そんなことをしても無駄と気付き、肩を落とした。



「ど、どうしょう…」





朝礼が始まる前の一年の教室に、


突然九鬼が入ってきた。


「生徒会長!」


教室内に、緊張が走る。


「何かあったのか?」


ひそひそ話の中、生徒の目も気にせずに、


九鬼は蒔絵の席目指して、歩き出す。


「花町さん!」


クラス中の注目の中、九鬼は蒔絵の真横で立ち止まり、


「あなたに、確かめたいことがあるの」


九鬼が話しかけても、携帯をいじることをやめない蒔絵を見下ろし、


「昨日撮った写真を魅せて、欲しいの」


「は〜あ?」


蒔絵は、九鬼を見上げ、首を傾げた。


それだけの動作をした後、蒔絵はまた携帯に目を落とした。


少しいらっときたけど、生徒会長たるもの…それくらいで、キレてはいけない。


九鬼は冷静に、口調を荒げることもなく、言った。


「教室内での携帯の使用は、禁止されています」


九鬼は手を差し出し、


「携帯を没収します。放課後、生徒会室に取りに来てください」


口調は変えなかったけど、威圧的ではあった。



「はあ〜?」




無理矢理、蒔絵から没収した携帯を、悪いと思いながらも、九鬼は生徒会室に戻ると、昨日の撮影記録をチェックした。



「やっぱり…」


九鬼は画像を確かめると、携帯を閉じた。


破壊された窓の画像が残っていた。


しかし、登校時も確認しに行ったけど…破壊された形跡はない。


「復元したとかじゃないわ…そんな次元じゃない…」


敵は一瞬で、直せる能力を持っていると考えられた。


「恐らくは…魔将軍ビューティー…」


底知れぬ敵の能力に、九鬼は携帯を持つ手に、汗が滲んでくるのに気付いた。



「御姉様」


その時、後ろから声をかけられた。


不意をつかれて、九鬼は一瞬身構えながら、振り返ってしまった。


「如何なさいましたか?」


扉の前に、副会長である桂美和子が、立っていた。


訝しげに、首を傾げる美和子に、九鬼は緊張を解き、微笑んだ。


「何でもないわ」



九鬼は微笑みながら、携帯を没収箱である金庫に入れると、


美和子の横をすり抜け、生徒会室を出ていった。


そんな九鬼の後ろ姿を見送った後、美和子は蒔絵の携帯が入った金庫に視線を移した。





乙女戦隊 月影 第六話。


【あばよ】


スタート。




なんて、世の中ってやつは、不憫なんだああああああああああ!


いい大学にいたって、何になる!


結局!


俺みたいなネクラは、もてないし!


明るい未来なんて、ないんだあ!





だけど、そんな俺に神は、力をくれた。



今は、なんて…爽快な気分なんだろうか!


特に、下が!



たまらないぜ!


この開放感は!


ハハハハハハハハハハハハ!





「ここで、臨時ニュースをお伝え致します。今朝未明…突如現れた下半身を露出した男は、××線の女性専用車両を占拠した後、都市部を疾走し、大衆浴場の女風呂を襲撃しましたが…営業前だった為…店主の佐助さん65才の男性に、下半身を見せつけたそうです」



テレビ画面に、トレーナーを上にまくり、袋のように頭の上で、結んだ男が映し出された。


都市部の中央通りを逆走している。



「特報です!只今、犯人の知り合いである悪の組織から、犯行声明が届きました。犯人は、怪人です!繰り返します!犯人は、怪人です!怪人名は、モロダシ・ダン!最近、身売りされた企業の有名ヒーローを思われる怪人名に!関係者から、苦情が寄せられております」



怪人モロダシ・ダンは、下半身から出るビームで、道路を寸断。



駆けつけた警察車両を破壊、後ろからは悪臭を放ち、道行く人々をパニックに落としいれていた。


「なお…犯行声明によりますと、怪人モロダシ・ダンは、今の日本を憂い。国会の早期解散を求めるとともに、俺のあそこは小さくない!世の中に認めさせてやると、社会に対する苛立ちを露にしております」



モロダシ・ダンは、お尻の割れ目に挟んでいるブーメランを尻筋だけで、飛ばした。


ブーメランは、上空を飛んでいる報道各局のヘリコプターを破壊した。


「え、映像が途切れました!只今、映像が途切れました!怪人モロダシ・ダンは、最後に、世界の素人女を憎むと叫んでいる模様!お店の女の人は、優しかったと…歓楽街は、避けているそうです!」



映像が途切れ為、一旦CMに入ったけど、そのタイミングが、少し遅れた。


その為、キャスターの本音が聞こえた。


「馬鹿らしい」




怪人モロダシ・ダンの大暴れを知るはずもないあたしは、いつもの如く、退屈な授業を受けていた。


今は、授業より、シャーペン回しに夢中だ。



前の夏希は、一生懸命の黒板の文字を写していた。


後ろの蒔絵は、命より大切な携帯を取り上げられた為、放心状態になっていた。


変わらない退屈な日常は、突然教室に響いた校内放送によって、打ち消された。



「臨時ニュースをお伝えします。警察から連絡が入りました!恐ろしい力を持った怪人が、女性専門のフィットネスクラブを襲撃した後、こちらに…当校に向かって来ている模様です!繰り返します。変態…もとい、怪人がこちらに向かって来ております。全校生徒は、直ちに避難して下さい!繰り返します!全校生徒は、直ちに避難して下さい!」



放送が終わった瞬間、静かだった教室がざわめき、一斉に立ち上がる。


あたしと、蒔絵は座っている。


「みんな!慌てずに、ゆっくりと避難するんだ!」


熊五郎に引率されて、生徒達は教室を出ていく。




「里奈!」


夏希が、あたしに駆け寄ってきた。


あたしは、シャーペンを回しながら、


「怪人でしょ…どうせ、戦うんでしょ」


ため息をつき、


「怪人なんて、ただの変態だから…」


そう言った後、あたしははっとして、スカートをめくった。


「き、今日は、大丈夫」


下着もOKだ。


あたしは、拳を握りしめ、


「来るならこい!変態!じゃなくて、怪人!」



一応、ヒーローぽく言ってみた。


だけど、かなりやる気はない。






「はあ〜」


深いため息をついたのは、ワンカップ片手の半月ソルジャーだ。


「賢明なる読者は気付いていたと思うけど…前回、わたしは出ていない…」


ぐいっとワンカップを飲み干すと、空になったカップを投げ捨てた。


屋上の出入り口の上に座る半月ソルジャーの後ろに、無数のカップが転がっていた。


「わたしがいなくて!何が月影だ!お前も、そう思うだろ?」


もう泥酔寸前の半月ソルジャーの隣には、月影ロボが座っていた。


何も言わない月影を、しばらく見つめた後、半月ソルジャーはリモコンを向け、ボタンを押した。


月影ボイスだ。


月影ロボは、話した。


「この×××野郎が!てめえなんて××××だ!×××で×××だ!」




半月ソルジャーは、無言でボタンをもう一回押した。



月影ロボは電源が切られ、屋上に風の音だけが、響いていた。



半月ソルジャーは、新しいワンカップを開けると、また一気に飲み干すと、


「あいつのせいだ!あいつが出てから、わたしのポジションが奪われたのだ!」


半月ソルジャーは、ワンカップを握り潰そうとしたが、ガラスであることを思いだし、やめた。


行き場のない怒りを、拳を握り締めることで、我慢した。



「おのれ!乙女ブラック!九鬼真弓!」





「怪人…」


校内に、避難するのが遅れ、取り残された生徒がいないかを確認していた九鬼は、廊下の途中で立ち止まった。


そして、まだ太陽が眩しい外を見つめた。



「生徒会長!」


風紀委員である刈谷章子が、大声を上げながら、廊下の向こうから走ってきた。


「どうしたの?刈谷さん」


九鬼は窓から顔を、かけよってきた刈谷に向けた。


息を切らしながら、九鬼の前で止まった刈谷は、重大な事実を告げた。


「裏門!いえ、すべての脱出口が、黒タイツの男達に塞がれて…外に出れません!」


刈谷の報告に、九鬼は奥歯を噛み締めたが、表情には出さずに、


「状況はわかりました。皆さんを体育館に誘導して下さい」


冷静に、指示を出した。


「わ、わかりました!だ、だけど、黒タイツの男達は…」


「心配いりません」


九鬼は刈谷に微笑み、


「やつらの目的は、生徒達をここに足止めすることです。それに…」


九鬼は、刈谷に背を向けると、


「やつらが、危害をくわえるようなら…あたしが、許しません」


九鬼は、表情を引き締めた。


「会長!」


「生徒会は、皆さんの避難を最優先にして下さい。後のことは、すべてあたしに任せて!」



九鬼は、廊下を歩き出した。


正門の方に向かって。



ムーンエナジーの充電は、最近の頻繁に起きた襲撃により、されてなかった。


つまり、乙女ソルジャーにはなれない。


だからといって、ここから逃げる訳にはいかない。



九鬼は、制服のネクタイを緩め、戦闘モードへと切りかえ、廊下を走ろうとした。


その時、いきなり横の階段から、何かが転がり落ちてきた。


思わず、足を止めた九鬼の目の前に、肉団子と思わせる小太りのおっさんが、激しく廊下の壁にぶつかりながらも、むくっと立ち上がった。


「あなたは!?」


九鬼はとっさに、構えた体を崩した。


千鳥足のおっさんは、九鬼を指差し、


「お、お前とは、キャラがかぶっているんじゃ!」


駄目出しをした。



そのおっさんの名は、半月ソルジャー。


「途中から、参加して!リーダーずらしやがって!」


半月ソルジャーの言葉に、九鬼はフッと笑うと、廊下の窓を開けた。


「あたしは、リーダーではないわ!ただ…みんなを守りたいだけ」


そして、開けた窓から、外へと飛び降りた。


「逃げるか!卑怯者!」




九鬼は半月を無視すると、一気に正門へと走り出した。


校舎の左側を斜めに走ると、正門までは一直線だ。


九鬼は視界に、正門をとらえたところで、足を止めた。


一度、呼吸を整えた。



正門のさらに向こうで、巨大な砂埃と、時折光る…一筋の光。



光線を発する怪人。


「魔神に近いか…」


生身の体で、それを喰らえば…アウトだ。


「だけど…あたしは、生徒会長」


九鬼は、覚悟を決めた。



ゆっくりと歩き出す九鬼の後ろから、声がした。


「九鬼!」


「生徒会長!」


校舎から飛び出して来たのは、里奈と夏希だった。


そして、里奈に引きずられて、放心状態の蒔絵もいた。


「み、みんな!」


九鬼の嬉しそうな顔に、あたしは微笑んだ。


「1人で、格好つけないでよ!」


「あたし達もいますから!」


いつのまにか、戦う覚悟を決めた夏希は、ガッツポーズをつくった。


「ありがとう」


感動からか…少し泣きそうになる九鬼に、あたしはえらそうに何度も頷いた。



九鬼はすぐに、少し滲んだ涙を拭うと、前を睨んだ。


「怪人が来るわ!だけど、そいつは、今までの怪人と違う!だけど、今…あたしは、変身できない!」


苦々しそうに、猛スピードで近づいて来る砂埃を口惜しそうに、睨む九鬼の肩を、あたしが叩いた。


「みんなのムーンエナジーを集めれば…大丈夫よ」


あたしは自分の眼鏡ケースを、九鬼に差し出した。


夏希もそれに従う。



「あなた方は…」


感動する九鬼の様子に、あたしはじ〜んと来るものがあったけど、内心はにやっと笑っていた。


(あんまり…戦いたくないのよね。あたし…いつも、パンツを世間に晒しているし)


今日は、見せパンをはいているとはいえ、


あたしは乙女だ。


何度も見せる気はない。


「みんなのムーンエナジー…使わせて貰うわ」


基本的に、人を疑うことのしない九鬼は、素直にあたし達の好意を受け取った。


そして、あたし達の眼鏡から、ムーンエナジーをチャージしょうとしたが、



「…」


チャージできなかった。


固まる九鬼。


それを見て、気まずくなったあたしは、夏希に逆ギレした。


「あんた!ちゃんと、夜中!月が見えるところに、眼鏡ケースを置いておいたの!」


自分のことを棚にあげて、怒るあたしに、夏希もキレた。


「あたし!そんな設定知らないし!」


そりゃあ〜そうだ。教えてない。


少し怯んでしまったあたしに、夏希は言った。


「あんただって、充電してないじゃん!あたしと違って、知ってたのに!」


それを言われると、あたしは一瞬、呼吸が止まった。


(そりゃあ〜そうだ)


あたしは、心の中では納得した。



言い争いをしているあたしと、夏希の間を一瞬、光が走った。


「え!?」


気づいた時には、南館の横にある創立者の胸像が爆発した。



「ビーム兵器か!」


一歩も動けなかった九鬼のこめかみに冷や汗が、流れた。


いつのまにか、正門の前に、下半身を剥き出しにしたモロダシ・ダンが立っていた。



そして、そそりたつ×××をあたし達に向けていた。


「モザイクなしかい!」


あたしは、冷静な突っ込みに関係なく、×××の照準を、こちらに向けた。



「クッ!」


九鬼は唇を噛み締め、モロダシ・ダンとの距離を計り、絶望していた。


向こうの攻撃距離と、あたし達の攻撃距離が違い過ぎる。


「何とか!ビームを避けて、接近戦に持ち込んでみるわ」


覚悟を決めた九鬼が走ろうとした時、後ろから声がした。


「真弓!携帯、持ってきたわよ!」


蒔絵の携帯を、九鬼に頼まれて生徒会まで取りに行っていた加奈子が、走り寄ってきた。


突然の怪人の来襲に、蒔絵に返す暇がなかったのだ。


「それを、花町さんに!」


「誰?」


一瞬、加奈子は蒔絵がわからなかった。脱け殻になっている蒔絵に気付き、初対面だが…この子だろうと、携帯を渡そうとした。



「加奈子!」


助走に入った九鬼の真横を、光が走った。慌てて、振り返った九鬼の目に、加奈子の手から、煙が立ち上っているのが映った。


「熱い!」


加奈子は思わず、携帯を離した。


半分になった携帯が、アスファルトの上に転がった。


それが、放心状態の蒔絵の目にも映った。




その刹那、


がばっと立ち上がった蒔絵の顔に、眼鏡がかかり、


乙女グリーンへと変身させた。


それと同時に、グリーンの眼鏡からビームが放たれ、


発射したばかりのモロダシ・ダンの股間に当たった。


「うぎやあ!」


苦悶の表情を浮かべ、膝を落としたモロダシ・ダンに向かって、九鬼はダッシュした。


「もらった!」


生身の体をカバーする為に、加速をつけた九鬼は、ジャンプして、膝をモロダシ・ダンのトレーナーで隠されている顔面に叩き込もうとした。


しかし、なんとすぐに立ち直ったモロダシ・ダンは、九鬼の膝をかわすと、そのまま…信じられない速さで動くと、唖然としているあたし達の横をすり抜け、校舎の中へと逃げ込んだ。


「チッ!」


舌打ちした九鬼は、着地すると、体を反転させ、校舎へと走り出す。



ビームを発射したグリーンは、それでムーンエナジーを使いきったようで、変身が解け、蒔絵に戻る。そして、破壊された携帯を手に取って、肩を落とした。



「結城さん!五月雨さん!やつの兵器は破壊したわ!今のやつは、ただの怪人!変身しなくても、戦えるはずよ!」


九鬼の言葉に、あたしと夏希が頷いた。





「あっ!ご、ごめんなさい…」


責任を感じ、携帯の前であたふたしていた加奈子は、遠ざかっていくあたし達の背中を見て、


「ごめんなさい!」


自分も、後を追うことを決めた。


手には、乙女ケースを持って。





「…」


破壊された携帯を握りしめた蒔絵の心に、怒りの嵐が吹き荒れた。


「ぶっ殺す!」


何に対してもやるきのない蒔絵が、初めて正義の為に(?)戦うことを決意した瞬間だった。





【CM】


ついに出た!


乙女ソルジャーのすべてを、あなたに…。



乙女ケース!



飛び出す眼鏡!


「装着!」


変身!乙女ブラック!



「月影キック!」



あなたも今日から、乙女ソルジャー。



眼鏡を取ると、筆記用具も入る。


お弁当にも。



乙女ケースシリーズぞくぞくと登場!



(注:眼鏡に度は入っていません)


そして、乙女戦隊パジャマシリーズも発売中。






校舎内を、お尻を振りながら、疾走するモロダシ・ダン。


だけど、誰も追ってこないことに気付き、足を止め、後ろを振り返った。


「そっちには、誰もいないわよ」


突然前から声をかけられて、はっとしたモロダシ・ダンは振り返った。


腕を組んだ九鬼が、廊下を塞いでいた。


「あなたの武器は、封じたわ。もう何もできないはず」


モロダシ・ダンは慌てて、来た道を戻ろうとしたが、


今度はあたしと夏希、加奈子が退路を塞いだ。


「袋のネズミね」


ゆっくりと構えながら、近づく九鬼は、蹴りを放つタイミングを計っていた。


焦るモロダシ・ダンのあそこが、怯えた猫の耳のようになる。


「おとなしく…」


九鬼が回し蹴りを放とうとした時、


あたしと夏希の間を押し退けれて、蒔絵が登場した。


「ぶっ殺すぞ!てめえ!」


目が血走った蒔絵は、怒りから人相も変わっていた。


突進してくる蒔絵のプレッシャーに、モロダシ・ダンはさらに怯え出し、逃げようとするけど、前に九鬼がいる為、その場で地団駄を踏んだ。


「死ねや!」


蒔絵の蹴りが、モロダシ・ダンの後ろから股間を蹴り上げた。


「い、痛そう〜」


御愁傷様ですと、心の中で合掌したあたしは、突然うっとなった。


廊下に、充満するガス。


どうやら、蒔絵の蹴りによって、モロダシ・ダンはおならをしたらしいかった。



「くさ!」


あたしと蒔絵は、鼻を摘まんだ。


なぜか平気な加奈子は、慌てて廊下の窓を開けた。



「蒔絵!九鬼!?」


おならの風力を得て、スタートダッシュしたモロダシ・ダンは廊下から消えていた。


至近距離から、もろに直撃を受けた蒔絵は、気を失って、うつ伏せに倒れていた。



「む、無念…」


無敵の生徒会長も、窓ガラスにもたれながら、崩れ落ちた。


「恐るべし…」


あたしは、鼻を摘まみながら、廊下中の窓を開けた。



「只今!臨時ニュースが、入りました!」


テレビのアナウンサーが、渡された原稿用紙を読み上げた。


「市内を暴れ回っておりました怪人モロダシ・ダンは、有名女子高を占拠致しました。怪人モロダシ・ダンが、女子高を占拠致しました」


そのニュースは、日本中を駆け巡った。


「尚…怪人モロダシ・ダンは、その学園の生徒5人を人質にして、立て籠っております!」


テレビ画面に、大月学園が映り、


警察の車両が校門から入っていく様子が、映されていた。


「人質にされている女子高生の安否は、不明ですが…目撃者の証言によりますと…倒れている者もいるようです」



カメラが切り替わり、現場からの中継になる。


マイクを持った女が慌てながら、様子を伝える。



「こちらは現場です。犯人が立て籠っている校舎の窓から、謎の黄色いガスのようなものが、流れている為…我々報道陣も、校舎に近づくことはできません」



「それは、毒ガスですか?」


スタジオからの質問に、


「まだ…わかりません」


少しためて答えるレポーター。


「大丈夫なんですか!」


「一応、周囲の住民の方には、注意を促しております!まだ警察からの発表は、ありませんが…辺りには、物凄い悪臭が漂っております」


それが…ただの屁であると、分析されるのは、少し時間がかかることになる。



そして、あたし達が…世間では、人質扱いされているとは、夢にも思わなかった。



「くそお〜」


何とか臭いがおさまった廊下では、直撃を受けた蒔絵は戦線を離脱…


そばにいた九鬼もまた、大きなダメージを受けていた。


残るのは、変身できないあたしと夏希…そして、加奈子だけだ。



「ははは!」


いきなり笑いだしたモロダシ・ダンは、倒れている蒔絵を踏み越えると、あたし達の前に立ち、


「貴様達が、乙女戦隊月影だな?我が神がおっしゃったように、月がなければ、変身できないようだな!」


「くっ!」


妙に下半身を突きだして、えらそうに言うモロダシ・ダンに、あたしはなんかムカついた。


「神とは、誰のことだ?」


あたしの後ろにいた加奈子が、前に出て、


モロダシ・ダンの下半身を睨んだ。


「神は、神!生きることに悩んでいたわたしに、すべてを晒し!がんじがらめにされていた日常から、解き放ってくれた!絶対的なの存在だ!」


モロダシ・ダンは、激しく腰を振った。


その卑猥な動きに、一応…あたしと夏希は顔を逸らしたが、


加奈子はガン見する。


そして、口元に笑みを浮かべ、嘲るように言った。


「生えてもいないものを自慢気に!経験者のあたしに、偉そうに言うな!」


ヒーロー番組とは思えない台詞を吐いた加奈子に、モロダシ・ダンは少したじろぎ、


「き、貴様!大人の階段を上ったのか!」


「フッ」


加奈子は勝ち誇ったように、腕を組んだ。


「ち、畜生!」


モロダシ・ダンは悔しいさのあまり、片膝を落としかけたが、


何とか踏みとどまり、


「そ、そうだとしても!生えてないは、認めん!」


あれを突き上げると、


「わたしは、神の力によって、生まれ変わったのだ!よく見てみろ!」


「何?」


顔を近づける加奈子に、正直…あたし達は引いた。



「た、確かに!」


そこには、産毛が!


驚愕した加奈子の一瞬の隙を、モロダシ・ダンは見逃さなかった。


「エレファントアタック!」


あれが、顔を近づけていた加奈子の頬を強打した。



「きゃあ!」


吹っ飛んだ加奈子に、モロダシ・ダンの笑い声がこだまする。


「甘いわ!無用心すぎるぞ!」





「ああ…」


あたしは、そのやり取りを見ながら、


「よいこは読まないわ」


と、この小説の行く末に不安を覚えた。





「犯人に告げる!大人しく、人質を解放して、出てきなさい!」


お決まりの台詞をはく警察官が、拡声器を向けていた。


あたしは窓から、外を見ると、校舎の前には数台のパトカーと装甲車が止まっていた。


あたしが顔を出すと、


レポーターが叫んだ。


「人質は、無事のようです!」



「人質?」


あたしは、眉を寄せた。


「国家の犬どもが!」


窓から、下半身を突きだしたモロダシ・ダンに、こちらにカメラを向けていたマスコミが、騒然となる。


その模様は、お茶の間にダイレクトに映った。


赤ん坊のようなあれは、しばらくして…ネットで論議を醸し出す。


あれは、剃っていたのかと。


「は、犯人は、下半身を露出しながら、女子高生のそばにいます!」


後に、これも論争になる。


下半身丸出しの男がいるのに、平気な顔をしていたあたしは、どうなんだと!



「馬鹿な…やつらだ」


モロダシ・ダンは、窓から離れると、あたしと夏希の方を向いて、


「お前達を倒した後、わたしはズボンをはいて、裏口から脱走する」


モロダシ・ダンの尻から、何かの容器が飛び出してきた。


「そうすれば、誰かわかるまいて!そして、神の薬を使えば、ふさふさに!もう絶対にわかるまいて!」


楽しそうに、高笑いをするモロダシ・ダン。


しかし、次の瞬間、彼は凍りついた。


「忠司!お願い!もうやめて!」


拡声器から、聞こえてきたのは、女の声だった。


「なっ!」


絶句したモロダシ・ダンが、窓から下を覗くと、


拡声器を握り、涙を流す女性がいた。


「か、母さん…」


「忠司!早く自首して頂戴!」


母親の悲痛な叫びに、絶句したモロダシ・ダンこと忠司のあれが、項垂れた。


「ど、どうして…俺が、もと忠司だと…」


正体が露出したことが、信じられない忠司に向かって、母親は拡声器を警官に持って貰うと、あるものを広げ、上に掲げた。


「そ、それは!?」


忠司は驚いた。


シミのついた…それは、まさしく!


「俺のパンツ!」


「そうよ!あなたが、脱ぎ捨てたパンツよ!」


母親が掲げるパンツには、名前がマジックで書いてあったのだ。


「あ、ああ…あれは!俺の自由を奪っていた拘束具!俺の傷!」


「あなたのよ!忠司い!」


2人のやり取りを端から見ていたあたしと夏希は、ここにいることが恥ずかしくなってきた。


「帰る?」


夏希の言葉に、


「そうね」


あたしは、頷いた。


2人で回れ右をして、帰ろうとすると、


「逃がすか!」


忠司が、こちらに下半身を向けた。なぜか、元気だ。


「もう正体が、ばれた俺は、普通の世界には戻れない!せめて…最後は怪人として、貴様を倒す!」


元気なあれを、あたし達に向けて、


「モロダシ!アタック!」


突進しょうとした。



「ぎゃあ!」


あたし達は、逃げようとしたが、


なぜか、忠司は助走の格好で、固まっていた。


「逃がすか…」


いつのまにか変身していた乙女どどめ色の持つ包丁が、後ろから忠司のお尻の割れ目に突き刺さっていたのだ。


乙女どどめ色は、包丁を突き刺さすとすぐに変身が解け、加奈子に戻り…気を失った。


「ううう…」


悶えだす忠司は、絶叫した。


「ケツが、本当に割れたああああ!」




その忠司の叫びは、外の警察にも聞こえた。


何かあったと異変を察知すると、


「突入!」


警察は一斉に、校舎に飛び込んだ。



「…」


あれの元気もなくなり…お尻を突きだした形で、悶える忠司。


「…」


なんか…あたし達も逃げるタイミングを失い、ただ突き刺さってる包丁を見つめた。


「あれは…痛いわね」


あたしが顔をしかめると、


「そ、そうだね…」


夏希も顔をしかめた。


その時、廊下の向こうから、誰かが飛び出してきた。


ピチピチのタイツぽい戦闘服を着た…半月ソルジャーだ。



「月のイケメン!乙女戦隊の兄貴!半月ソルジャー参上!大丈夫かあ!諸君!」


半月ソルジャーはどうやら、様子を見ていたようで、偉そうに胸を張りながら、こちらに近づいてくる。


「わたしが来たからは、もう安心だ!ハハハ!」


半月ソルジャーは高笑いをすると、目だけで忠司の状況を探り、


「怪人め!我が攻撃を受けろ!」


突き刺さっている包丁を掴むと、押し込んだ。


「ひど!」


あたしは、半月ソルジャーを睨んだ。


「わたしの勝利だ!」


さらに包丁を押し込もうと、半月ソルジャーが笑った時、

廊下に地響きが起こり…大勢の警官が、前から後ろから現れた。



「え?」


驚いてる半月ソルジャーに、警官が飛びかかると、一瞬で廊下の床に倒すと、腕を決め、取り押さえた。


「確保!」




あたしと夏希を保護するように、警官が前に立ち、


「大丈夫か!」


と聞いてきた。


気を失っている九鬼や、蒔絵、加奈子も保護された。


警官の1人が無線に叫んだ。


「被害者は無事です。気を失っている者もいますが…外傷はありません」



「待て!何をする!わたしは、正義の味方だぞ!」


半月ソルジャーがもがき、正義を主張しても、お尻に突き刺さった包丁を握り締めたおっさんの言うことをきくはずがない。


「犯人に、包丁を臀部に突き刺さっていた不審者も、現行犯逮捕致しました」


警官は報告を終えると、無線を切った。


「わ、わたしは、月の使者だ!」


無情にも…半月ソルジャーの腕に、手錠がかけられた。



「まあ…仕方ないか」


あたしは納得した。




担架に乗せられて、運ばれる蒔絵と加奈子。


九鬼は何とか立ち上がり、頭を押さえていた。



「わたしは、月の戦士だ!正義の味方だ!」


半月ソルジャーの主張も、警官には通用しない。


2人の警官に両脇を決められて、連行されていく半月ソルジャーが、あたしと夏希の前を通る。


「お、お前達!わたしの無実を証明してくれ!」


半月ソルジャーの心からの叫びに、あたしと夏希は軽く目を逸らした。


「レッド!ブルー!」


半月ソルジャーは、あたし達の前で激しく抵抗する。


その様子に気付き、警官の1人がきいてきた。


「失礼ですが…お知り合いですか?」


その言葉に、思い切り嫌な顔をしたあたしを見て、警官は被っていた帽子を脱いだ。


「あたし達は、知りません」


あたしは気分を害したように、警官を軽く睨んだ。


絶対、世間的に知り合いだとは、思われたくない…その思いが、あたしの形相を恐ろしいものに変えていた。


警官は頭を下げ、あたしから離れた。


「レッド!」


半月ソルジャーの叫びに、あたしはまったく反応をしないようにした。


レッドって何だろう?知りません!あいつ、気持ち悪い。


首を傾げ、顔をしかめて…そんな感じを演じて見せた。


「レッド!」


空しい叫びが、廊下にこだました。


そして、あたしの前を、包丁が刺さったままの忠司が、お尻を突きだしたままの形で、担架で運ばれていった。



「怪人と変人を逮捕致しました!変人は、最近…この学園にでるという変質者だと思われます!」


警官が、無線で報告していた。



「レッド…」


階段を降りる為、廊下を曲がる瞬間、半月ソルジャーは悲痛な顔を、あたしに向けた。


だけど、あたしは半月ソルジャーの方を見ない。


階段を降り、姿が見えなくなると、あたしはやっと顔を向けた。


そして、一言…。




「あばよ!」



乙女戦隊 月影


第6話 あばよ


完。



屋上では、月影ロボが一台…沈みかけた太陽に照らされていた。




《月影通信》


はあ〜い!



蘭花です。


よい子の皆さん…


今回は下ネタばかりで、ごめんなさい!



蘭花も大嫌いだよ!プンプン




さて、


ついに、乙女戦隊 月影


劇場版は公開されます!


よろしくお願いします!


最近、蘭花の変な噂があるけど、うそだからね!


次回も、みんなに会いたあい!


蘭花でした (^з^)-☆


.....あるのかな....。



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