表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/95

94.水面下で蠢く不穏

これにて麻里(マリー)編、終わりです。


この話の更新後、しばらくは作者の別作品である貞操逆転ハーレム異能作品のストック執筆に入ります。

(俯瞰(ふかん)視点)


とある暗闇の中にて……


「ケケケ……まさカ、"表"の悪ガ、私達に依頼ヲ、出して来るとはナ……」


「お主等は"裏"でも有数の猛者と聞いている。……だからこそ、拙僧はお主等に依頼を……」


そこには、空旋坊と不気味な女がある依頼に関する交渉を行っていた。


「分かっタ。……でモ、本気ハ、出さなイ……」


「む?……拙僧が提示した標的(ターゲット)は、本気を出さずに勝てる相手では……」


「……私達ハ、不死身(・・・)ダ……死んでモ(・・・・)生き返ル(・・・・)……」


「……何だと?」


不気味な女が語った信じられない言葉……


それを聞いた空旋坊は、案の定理解出来ないという視線を女に向けた。


「まア、挑戦はすル。……ただシ、標的1人につキ、1度だけダ……」


「なっ……それは失敗したら手を引くという事ではないか!」


「そうダ。……そもそモ、私達ガ、"表"の依頼ヲ、受ける義理なド、ないからナ……」


「ぐぬっ……言わせておけば、拙僧を舐めているのではないだろうな!」


標的(ターゲット)1人につき、挑戦は1度だけ……


その言葉を聞いた瞬間、空旋坊は激昂した。


しかし……


ーチャキ


「……私としてハ、ここデ、お前ヲ、斬ってモ、良いんだゾ?」


ーぞわっ……


「くっ……これが"裏"の猛者の殺気か……拙僧が勝てるとは、到底思えぬ……」


女が腰に携えた刀に触れながら出した殺気を前に、空旋坊は落ち着きを取り戻す。


「とにかク、お前の依頼ハ、受けてやル。……案ずるナ、報酬ハ、後払いデ、良イ……」


「……それはお主等が失敗した場合、拙僧は報酬を払わなくても良い……そういう事だな?」


「そうダ。……私達"葬殺九妖衆(・・・・・)"ガ、お前の依頼ヲ、受けてやル……」


「ふん!……流石は"葬殺九妖衆"の"マザー(・・・)"……噂通り侮れぬ相手だ……」


不気味な女を"マザー"と呼んだ空旋坊は、そのまま足早にその場を後にした。


そうして、その場に残された"マザー"は……


「ケケケ……名高キ、五武妖(・・・)ト、()()()()()()ガ、標的かイ……ケケケ!」


……そう呟きながら、暗闇の中へと静かに消えて行くのだった……



同時刻、とある山中にて……


「あぁ?……秋楽の奴が消息不明だと~!?」


……突如として、死獄童子の大声が場に響き渡った。


「ひぃっ!?……わ、私も秋楽お兄ちゃんの消息が全く掴めなくなったって事しか分からなくて……でも多分、死んでないとは思うかな……」


「何でそう言える!?」


「何となく……時折消えるから掴みづらいけど、まだ秋楽お兄ちゃんの妖気が感じ取れるから……」


死獄童子に報告を行っていた夏死忌は、嬉々として秋楽の生存を報告した。


のだが……


「ハァ……我は、勝手な事をするなと言ったよな?」


「ギクッ!」


「しかも、冬夜の奴ならまだしも秋楽が戻って来ねぇとなると……確実に我とは縁を切る気だ」


「えぇ!?」


事実、死獄童子の予想は当たっていた。


秋楽は既に死獄童子に見切りを付けており、より扱いやすい金太に仕える事を選んでいた。


「しかも、お前の話じゃ復活した春銭の奴まで裏切ったらしいし……もうお前は当分動くな!」


「は、はい……」


「ったく、どうしたもんか……」


死獄童子にここまで言われては、流石の夏死忌も大人しくせざるを得ない。


誰よりも"暴"に振り切れていた八妖将の鬼は、今や誰よりも窮屈な身の上となっていた……



更に同時刻、"裏"の某所にて……


「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」


「ぐはっ!」


「やべでぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


「じにだくねぇぇぇぇぇぇ!」


無数に重なる痛々しい悲鳴……


だが、悲鳴を上げる者達を助ける勇敢な者は居なかった。


YO(ヨ~)YO(ヨ~)!……その程度の実力で"裏"に逃げ込んで来ようなんて、片腹痛いんだYO(ヨ~)!」


「キシャァァァァァァ!」


「ゴボォォォォォォォ!」


そんな蹂躙劇を起こしていたのは、巨大な大蟹と野槌(のづち)を従え、手にメガホン型拡声器を持った女の()()()()()だった。


「だずげで……何でぼ……ずるがら……」


「いいや、要らないYO(ヨ~)!……この"()()()()"()"()()()()"、崔芥蠡(チェケラ)様が欲するのはお前等みてぇな雑魚じゃねぇんだYO(ヨ~)!」


「ぞ、ぞんな……」


自身を"荒魂一座"の"総合監督"、崔芥蠡(チェケラ)と名乗った女のしょうけらは、弱者の嘆きを聞いた後に後ろを振り返り、大蟹と野槌に指示を出した。


「こいつ等はもう皆殺しで良いYO(ヨ~)!」


「キシャァァァァァァ!」


「ゴボォォォォォォォ!」


「あ……ああ……ああああああああああああ!」


その場に再び悲鳴が響き渡り、しばらくして静寂が場を支配した。


……場には死体すら残らず、ただ血の海だけが広がっていた……



更に更に同時刻、その付近にて……


「あれま……折角良いカモに出来そうだったと言うのに……私達"楽争商会(・・・・)"の顧客は、ああいう金だけは持った馬鹿ですからね……」


"楽争商会"を名乗り燕尾服を着用している男が、"荒魂一座"による蹂躙に苦言を呈していた。


「……まあ、どちらにせよ長生きは出来なかったとはいえ……どうせ死ぬなら、私達に金を落として欲しかったですねぇ……」


男は、先程皆殺しにされた者達の金を手に入れられなかった事を残念に思っていたが、それも長くは続かなかった。


というのも……


「「「「「「田を返せぇぇぇぇぇ~!」」」」」」


「おや、"汚泥會(・・・)"の泥田坊達がもう来てしまいましたか……"荒魂一座"が想定以上に大暴れした結果でしょうね……」


"汚泥會"の泥田坊……そう燕尾服の男が言い表した泥の塊が、物凄い速度で先程蹂躙が起きた場所へと向かっていたのだ。


「「「「「「田を返せぇぇぇぇぇ~!」」」」」」


「ふぅ……ここも巻き込まれるでしょうし、そろそろ撤収としましょうか……さて、また良いカモが来ないでしょうかねぇ~♪」


そう呟いた燕尾服の男は、瞬時にその場から立ち去った。


……これが"裏"の日常。


"死"と"金"と"泥"が全てを動かす、無法の地……


悪人でさえ半端な実力ではすぐに死ぬ、まさに蟲毒の様な場所が、"裏"と呼ばれる場所の実態であった……



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(??視点)


『……姫……次は……で……が……なんで……んす!』


ん~?


また、この夢だべ?


数年前から、オラはこんな夢ばっかり見てる気がするべ……


『ん……び…ん……無茶……言わ……』


『あ!……わた……も……一緒に……るアル!』


『ハァ……どい……いつも……加減に……けぇ!』


……オラの夢にいつも出て来る、謎の4人(・・)……


4人とも、オラを何とか姫(・・・・・・・)って(・・)呼ぶ(・・)んだべ。


ただ、今回呼んだのは1人だけだったべが。


……もっとも、4人とも姿がぼやけてるから何も分からないんだべが。


でも、何だか懐かしい(・・・・)様な……


と、そんな時だったべ。


『……い!……起き……"野草(・・)"、起きろ!』


「ひぇあっ!?」


ーびくん!


……"隊長"に叩き起こされて、オラは目覚めたんだべ。


「ハァ……"野草"、訓練の最中に居眠りとは良い度胸だな~?」


「あっ……ははは……」


あ~……そういやオラ、今訓練中だったべ……


「"野草"、俺達は誇りなんてない下級部隊だが、こんな所で眠ってたら本番で無駄死にするだけだ!」


「そ、そうだべ……」


「だったらどうする?」


「ま、真面目に訓練しますだ……」


「そうだ!……分かったら、トラック1周だ!」


「い、イエッサ~!」


オラは罰のトラック1周をしながら、ふと考えたべ。


あの夢は何なのか、夢の中の人達は誰なのか……


オラは何も分からないべが、何かある筈だとは思ってるんだべよな~。


……オラはそんな感じに答えの出ない悩みをぐるぐる考えながら、トラックをひたすら走り続けたんだったべ……

ご読了ありがとうございます。


蠢く"裏"と空旋坊の企み、"野草"の夢、狙われた五武妖と七賢院家の娘……次はこれ等が絡み合う話を書く予定ですが、当分先になりそうです。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
Xで愚痴をみて試しに読んでみたけど、面白かったです。 いつか続きが読めるのを楽しみにしながら他の作品も読んでみますね。 あと、野草が例の姫だったのは予想外でした。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ