8.萌音の実力
新キャラ登場です!
(一条院 宗雪視点)
桜とのキスから1週間後……
「よ、ようこそいらっしゃいました!……それにしても、何故我々の様な三愛院家の分家に来られたのでしょうか?」
「ふん、俺様の考えに何か文句でも?」
「い、いえ!滅相もございません!」
俺様は今、三愛院家の分家にやって来ていた。
勿論、目的は土蜘蛛 大豪林主による蹂躙を防ぐためだ。
「お兄様、流石にその態度はどうかと……」
「宗雪様が申し訳ございません」
「相棒は本当に口下手だなァ……」
「お前等、平気で俺様にそんな事を言える様になったのか……」
俺様の同行者は3人。
沙耶花、空助、桜だ。
勿論、沙耶花と空助には本当の目的は伝えてねぇ。
「……それで、我々の家に来た目的は……」
「む?……そうだな。……萌音は居るか?」
「っ!?……ど、どうして萌音を?……確かに見合いを申し込んでおきながら、断ったのは我々ですが……」
「いや、そこは気にしてねぇよ。……その時の俺様は、本当に愚かだったからな……」
俺様はかつて、この家からも見合いの打診をされた事がある。
もっとも、三愛院家の分家側は俺様の噂が本当だと知った瞬間に見合いを断って来たが……
だが、それは俺様が愚かだっただけの事だ。
「で、では何故……」
「萌音は才能があると聞いたからな。……三愛院家の分家で腐らせるぐれぇなら、俺様が三愛院家本家に推薦してやろうと思っただけだ」
「そ、それは……」
「勿論、本人が嫌がるなら無理強いはしねぇつもりだ。……だからまあ、1度会わせて貰うぞ?」
「は、はいぃぃぃぃぃ~!」
ここまで平伏するとか……この家は相当立場がねぇんだな……
とか何とか思ってると……
「お、君達が例のお客様なのだ?」
ータッタッタ……
「萌音、一条院家の次期ご当主様に何て言い方をしているんだ!?」
「いや、別に気にはしねぇよ。……にしても、やっぱり可愛いな……」
家屋の中から走って来た相手は、ここを訪れる建前の1つにした三愛院 萌音だった。
彼女はおかっぱにしたピンク髪が特徴的であり、何処か愛らしさを感じさせる見た目をしていた。
「萌音は三愛院 萌音っていうのだ!」
「俺様は一条院 宗雪だ」
「オレは九相院 桜ってんだァ」
「私は一条院 沙耶花といいます」
「僕は 九十九 空助です」
俺様達は一通り自己紹介を終えた。
そらにしても、三愛院 萌音……彼女はこの頃から、こんな性格だったのか……
ここで1つ、原作ゲームにおける彼女を振り返ろう。
原作ゲームにおける彼女は、大まかな性格は同じではあるが、何処か闇を感じさせる描写もあった。
これは、かつて生家を土蜘蛛 大豪林主に蹂躙された過去と、その後に三愛院家本家に引き取られて馴染めなかった過去から来ていた。
その闇も人気の1つではあったが……俺様は、そんな悲劇は起こさせないつもりだ。
「ん~?……宗雪、黙り込んでどうかしたのだ?」
「いや、何でもねぇよ」
「なら良いのだ!」
お世辞にも頭は良い方とは言えねぇが、それでも萌音の潜在能力は本物だ。
やはり、早々に話は済ませよう。
「なあ萌音、俺様が三愛院家本家に推薦してやるって言ったらどうする?」
「ん?……推薦って何なのだ?」
「え?……あ~……要は、萌音だけこの家を離れて三愛院家本家で住むかどうか……」
「……嫌なのだ!」
「うん、俺様もそう言うと思っていた」
この流れは予想していた通りだ。
原作ゲームにおいても、彼女は三愛院家の分家のみを家族として指していた。
「ん?そうなのだ?」
「ああ。……ただまあ、せめて俺様がお前の後ろ盾になるくれぇならどうだ?」
「後ろ盾……それなら、萌音はこの家を離れずに済むのだ?」
「勿論だ。……寧ろ、三愛院家本家が無理矢理手元に置こうとしても介入してやろう!」
「……それなら、後ろ盾になって貰うのだ!」
そもそも、土蜘蛛 大豪林主は足止めが限界な以上、この屋敷は崩壊するのが確定だ。
そしてその後の事を考えると、下手に三愛院家本家に介入されるよりは俺様が介入出来る余地を残しておいた方がよっぽどマシだ。
「さて……それじゃあ1度、俺様に実力を見せて貰っても良いか?」
「萌音は大丈夫なのだ!」
「なら、相手はオレがしてやるよ。……この屋敷に、戦える場所ってあるかァ?」
「それなら中庭にあるのだ!」
「OK、それで良いかァ」
そうして手合わせを萌音に承諾させたところで、俺様達は屋敷の中庭へと向かって行ったのだった。
そして数分後……
「それじゃあ、先に攻撃を当てる事が出来た方を勝者にするからな?」
「分かったのだ!」
「あいよォ!」
中庭にて、萌音と桜が向かい合う。
「それじゃあ行くのだ!」
「おう、来いやァ!」
こうして、萌音と桜の手合わせが始まった。
「【マジカルイリュージョン】なのだ!」
「【骨籠手】、【骨薙刀】だァ!」
萌音が繰り出した【マジカルイリュージョン】は、一見すると何かが起こった様には見えなかった。
対する桜は、骨の籠手と骨の薙刀を生成し、自身に装備した。
「……やはり、いつ見ても桜お義姉様の妖術は独特でございますね……」
「わざわざ骨を使うのも……僕では考えつきませんしね……」
沙耶花と空助の言う通り、普通なら骨を籠手や武器を作る等考えもしねぇだろう。
「それじゃあ行くのだ!……【マジカルサンダー】なのだ!」
ードンガラガッシャァァァァァ~ン!
「チッ!」
ータッ……バチィィィ~ン!
「うおぉ……やっぱり萌音の能力はえげつねぇな……」
萌音は大きな雷を出し、桜に向けて放った。
桜は難なく避けたが、当たった地面は黒こげになっていた。
……が、ここで桜の表情が固まり……
「おいおい……こりゃァどういう事だァ?」
「何が不思議なのだ?」
「……どうして、オレの近くに雷が落ちたのに感電してねぇんだァ?」
「「あっ……」」
沙耶花と空助も揃って声を上げた。
……そう、これが萌音の妖術の弱点だ。
「そ、それは……も、萌音の妖術はそういうものじゃないからなのだ!」
「意味が分かんねぇよ!……後、オレが何も知らねぇとでも思ったかァ?」
「え?」
「三愛院家は幻術を使う一族だ。……つまり、さっきオレに放った雷も幻術って訳だ」
萌音の能力は幻術を操るものだ。
つまり、さっきの雷も本当に放った訳ではなくただの幻術でしかなかった訳だ。
「……じゃあ、何で避けたのだ?」
「そりゃ、隔世遺伝で一族とは違う妖術が発現する事は珍しくねぇから警戒しただけだ。……もっとも、杞憂に終わったがなァ」
「うぐっ……【マジカルファイヤー】なのだ!」
ーボォォォォォォォ~!
「ハァ……やっぱり、当たっても熱くねぇなァ……」
「マジカルブリザードなのだ!」
ーヒュゥゥゥゥゥゥゥ~!
「これも寒くねぇなァ……おい相棒、本当にこんなのが……いや、油断すんのは良くねぇかァ……」
萌音が業火や吹雪を出そうと、幻術だと気にせず進む桜。
「や、止めて欲しいのだ……」
「安心しろ。……軽く小突くだけで終わらせてやるからよォ……」
そうして萌音の目前まで桜が迫り、骨薙刀を振り上げた……その時だった。
「隙ありなのだ!」
ーぺちん!
「……なっ!?」
何と、桜が自身の背後に現れた萌音に軽く叩かれたのだ。
「勝負あり!……この勝負、萌音の勝ちだな」
「わ~い、やったのだ~!」
「……まさか、オレの目の前に居る萌音も……」
「勿論、幻なのだ!」
「マジかよォ……」
桜は攻撃の幻術は見抜きながらも、それを放つ萌音は本物だと無意識に思い込んでいた訳だ。
実際は、最初の【マジカルイリュージョン】で幻と入れ替わっていたのに……
「さて……これで本物の萌音に戦闘能力があれば、俺様としても文句無しなんだがな……」
「あァクソがァ!……まさかこんな初歩的なミスに引っかかるとかァ……」
「これで萌音の凄さが分かったのだ?」
……戦力としては不安が残るが、こいつもいずれ味方に引き込んでおくのが良いかもな……
そんな事を考えながら、俺様は今夜の土蜘蛛 大豪林主の襲撃に対する策を考えるのだった……
ご読了ありがとうございます。
次回、土蜘蛛 大豪林主との戦闘です!
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。