69.氷姫攻略
前回の蘭子が全ステータストップクラスだとすると、麻里はスピード特化タイプです。
(九相院 桜視点)
ーガタガタガタガタ……ブルルッ……
「お、おおおお思ったより寒いっすね……」
「ハァ……この程度の寒さでダウンしてちゃ、相棒に合わせる顔がねぇぞォ?」
いつもの完全武装をしたオレは、真横で震える夏芽に対してこの程度でダウンするなと忠告した。
……オレ達が相対している八笑院 麻里は、相棒にこそ及ばねぇが相当な実力者だァ。
こうして周囲に極寒の冷気を撒き散らすぐれぇ、簡単な事なんだろうよォ。
「……宗っちが昼休みにした話は作戦の内……って訳じゃない感じ?」
「あァ~……相棒が何を話したかまでは知らねぇが、あの気まずそうな雰囲気からして作戦って訳じゃなさそうだなァ……」
「……だとしたら、マジウケ……ないかな……」
「相棒、何話したんだよォ……」
これは……ただでさえ厄介な麻里が、周囲を無差別攻撃する程にメンタルを崩してやがるって訳か。
ほんと、相棒は何を話したんだァ?
「ま、それはそうと……早く凍るっつ~の!」
ーピキピキピキピキ……
「チッ!」
「退避っす!」
ーシュタッ!
……これはヤバいなァ……
麻里の周囲の地面が氷に覆われている上に、氷を踏もうもんなら地面諸共氷漬けにされる事間違いなしだァ。
加えて、氷上は麻里の独壇場でもあるってのが厄介さに拍車をかけてやがるし……
「さて、どうしたもんかなァ……」
「……地面の氷をアタイが吹っ飛ばすとかどうっすか?」
「それをしたところで麻里本人が無事ならすぐに張り直されるだけだァ。……しかも、麻里は氷上を自由に素早く動けると来た……」
「……無理があるっすね……」
こうしている間にも、地面を覆う氷は範囲を広げている。
……麻里は術名を言ってねぇ筈なのに、気付けば麻里を中心とした半径5m圏内の地面が氷に覆われてやがった。
「……【氷滑靴】だっつ~の……」
ーピキピキピキピキ……
麻里の奴、遂に氷のスケート靴を履きやがった……
「これ、マズくないっすか?」
「マズいなァ……」
このままじゃ、オレ達が一方的に追い込まれちまう。
何せ、向こうはスピードが段違いだァ。
それにあの冷気が加わるとなると……
「……何とか、あの氷を溶かせたら良いんすけど……」
「オレも夏芽も、火系の妖術は使えねぇしなァ……」
いや、この言い方は正確じゃねぇ。
確かに夏芽の適正妖術は水系統だが、オレが使う"骨生成"の妖術に関しては少しだけ嘘がある。
……というのも、"骨生成"の妖術はオレの能力であって、桜の能力じゃねぇ。
つまり、狂骨であるオレ由来の"骨生成"の術とは全く別の、この肉体に刻まれた妖術ってのがある訳だ。
なら、何故これまで使わなかったかァ?
生憎、流産した肉体を無理矢理蘇生した影響で、そっちの妖術は上手く使えねぇんだよォ!
「……そっちが何もして来ないなら、こっちから行くっつ~の!」
ーザッ……ザッ……ザッ……ス~……
「き、来たっすよ!?」
「取り敢えず逃げるしかねぇだろォ!」
これでオレの【骨腕】や【骨尾】、【骨薙刀】の攻撃が通用すりゃ楽なんだが……多分、マトモに当たってはくれねぇだろうなァ……
麻里のスピード、見るからにオレが当てられるとは思えねぇ……
それこそ、地面の氷を溶かせれば何とか……
やっぱり吹き飛ばすべきかァ?
いや、それこそすぐに張り直されるなァ……
「む~!……さっさとあ~しに捕まって氷漬けになれっつ~の!」
ーザッ……ザッ……ザッ……ス~……
「ひぃぃぃぃ!?……もうすぐそこまで来てるっすよぉぉぉぉ~!?」
ータッタッタ!
「……これは……やっぱり、相棒に助けを求めるしかねぇのかァ?」
あの氷に触れたらオレでも終わりだァ。
なら、ここは相棒に助けを……
『……お前は、それで良いのかァ?』
っ!?
な、何だァ!?
脳内で勝手に声が……
『チッ!……長い年月かけてようやく言語能力を獲得出来たってのに、肝心の主人格がこれかよォ……』
お、お前は誰だァ!?
何処からオレの脳内に……
『オレは……あれだ!……九相院 桜が本来有する筈だった妖術そのものだ!』
……ハァ?
何を言って……
『ここ最近になって、ようやくお前が肉体に刻まれてた妖術を使っても大丈夫な段階まで成長してなァ』
……なら、何でもっと早く接触して来なかったァ?
『そんなの、お前が妖術を必要としなかったからだが?……ただ、今回は妖術を必要とした。……それだけだァ』
な、何か納得が行かねぇなァ……
『まあ良い。……取り敢えず時間制限付きだが、やってみろ!……ちなみに、妖術が今出せる技は【焼相】だァ。……あ、これまでの"骨生成"の妖術は【骨相】とでも言って誤魔化しとけよォ?』
【焼相】に【骨相】……って、まさか九相院家の妖術ってのは……
『そ、九相図を再現する妖術だァ』
……それが本当なら、オレにはまだ可能性が残されてるって事かァ……
『ま、今回は【焼相】でどうにかなる筈だから、頑張って来いやァ!』
わ、分かってらァ!
……………………
……………
……
…
「……はっ!?」
「んっ!?……い、いきなりどうしたんすか!?」
あァ、脳内会話にすっかり夢中になっちまったなァ。
「いい加減、あ~しに捕まれっつ~の!」
「嫌だなァ!……おい夏芽!」
「は、はいっす!」
「今からちょいと氷溶かすから、後は頼んだぜ?」
「へ?」
ぶっちゃけ、あの自称妖術の言い分を信用するのは難しいんだよなァ……
とはいえ、やるしかねぇかァ。
「ふぅ……【焼相】、発動だァ!」
ーボッ!
オレが【焼相】を発動すると、オレが持っていた【骨薙刀】の先端に炎が灯った。
すると、次の瞬間……
ージュワッ……バシャッ!
「っ!?……あ~しの氷が……何で……」
先端に灯った炎は小さなものだったが、何故かそれで麻里の張った氷は全て溶けた。
とはいえ、良い事ばかりでもねぇみてぇで……
ーボッ!ボッ!ボッ!
「あっ……これオレにもダメージ入るタイプかァ……」
オレが纏う【骨鎧】のあちこちに、炎が灯り始めやがった。
と、そのタイミングで再び脳内に声が聞こえ始め……
『う~ん、まだ早かったかァ。……【焼相】でこのザマじゃ、【呪縛九相図】を使えるのはいつになるやら……』
いや、不吉そうな技だなァ……
『ま、今回はこれで充分だろォ?』
そ、そうだがァ……
って、そういや夏芽は上手くやってるかァ?
「な、何すかこれ!?……いや、困惑するのは後にするっす!……ちょっと本気を出して【激流張手】っす!」
ーブンッ!
夏芽はオレが出した炎及びその効果に困惑しつつも、咄嗟に妖力を解放させて【激流張手】を放った。
そして、その攻撃は……
「何であ~しの氷が溶け……あっ……」
ードバァァァァァァ!
自信が生成した氷が溶けた上、新たに氷を生成する事も出来なくなっていた麻里が夏芽の攻撃を防げる訳もなく……
麻里は何も出来ないまま、夏芽の攻撃に呑まれちまった。
そして……
ーパッ!
「……へ?……あ~し、負けた訳?」
直後に2年の控えスペースに麻里が転送され、オレ達の勝利は確定した。
もっとも、オレに関しては……
ーパチ……パチ……ボォォォ!
「あ~ァ……オレはこのまま脱落ってところかァ……」
「えっ!?……ど、どうしてっすか!?」
「……まだ実戦には使えないっていうかァ……自分諸共燃やす代わりにあの高温を維持してたらしい……が、もうオレのリストバンドはギリギリだァ……【骨鎧】越しに火だるまになっている現状からすると、長くは保たねぇなァ……」
まだ実戦には使えない。
これが分かっただけでも充分だなァ。
「……後でちゃんと説明して欲しいっす……」
「あァ、分かって……あ、もう駄目だなァ……」
ーパッ!
結局、オレはそうして1年の控えスペースに転送されちまった。
……にしても、あの脳内で話しかけて来た自称妖術は何だったんだァ?
ご読了ありがとうございます。
麻里は氷を溶かされると一気に劣勢になるので、火系の術者とは相性悪めです。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




