66.桜の父親
なろうにて、「ダンジョンがある現代風世界に転生した俺は、ダンジョン配信者でハーレムを築く! ~いや、俺はダンジョンなんて潜りたくないんだが!?~」という新作を公開しました。
割と駄目な1話の典型みたいな話ですが、どうか読んでいただけるとありがたいです。
(一条院 宗雪視点)
「……取り敢えず、全部説明しろっつ~の!」
「……いや、ここじゃマズい。……体育祭が終わってから、一条院家に来てくれ」
「……そこで全部話してくれる訳?」
「ああ、約束してやる」
流石にいきなり婚約を申込んだらそうなるよな……
だが、ここじゃ誰が聞いててもおかしくねぇし、やっぱり俺様の家に来て貰うのが1番ベストな筈だ。
「もし宗っちが私利私欲であ~しの事を騙してたりしたら、ほんとに承知しないっつ~の!」
「勿論、嘘なんてついてねぇよ」
「……ハァ……一旦信じてあげるから、宗っちはちゃんと後であ~しに説明しろっつ~の!」
「……分かってる……」
こりゃ、だいぶ麻里からの好感度が落ちた気がするな……
まあ、こんな胡散臭い話を持ちかけたらそりゃこうなるよな……
「……じゃ、午後からの種目もあ~し達は容赦しないよ!……ほんと、マジ燃える~!」
「……ああ、俺様も楽しみにしてるぞ」
そうして、俺様は2年の控えスペースを後にした。
……会話を終える直後、麻里が頬を紅潮させていた事を思い出しながら……
その数十秒後……
「……宗雪君、少し良いかい?」
「ん?……あんたは……」
1年の控えスペースに戻る途中だった俺様は、1人の男に呼び止められた。
そして、俺様はその男を知っていた。
「……私の名は九相院 常春。……知っているとは思うが、桜の父親だ」
「ああ。……こうして俺様と直接話すのは初めてだったよな?」
「……そうだね……」
目の前に居る40代の男こと九相院 常春は、桜の父親だ。
もっとも、これまで九相院家とやり取りをする際は電話越しか桜を通して伝えるかの2択だったので、こうして直接会うのは初めてだが。
「……で、そんなあんたが何の用だ?」
「うっ……婚約者の父親だってのに、敬う様子が微塵もないね……」
「そりゃ、そんなオドオドされてたらな。……少しは堂々としたらどうだ?」
「……出来たら良いんだけどね……」
何かこう、こいつが弱気なのはどうなってんだ?
俺様だって桜の父親って事で敬いてぇんだが……あまりにもオドオドし過ぎで、敬う気がすぐに失せちまうんだよな……
「……んな事より、さっさと用件をだな……」
「あ、そうそう。……宗雪君、桜を婚約者として大事にしてくれてありがとうね?……私と妻は、桜を可愛がってやれなかったからね……」
「……この話は、人の居ねぇ場所でするか……」
「うん、その方が良さそうだね……」
そこまで話した俺様達は、すぐに人の居ねぇ場所まで移動した。
そして……
「単刀直入に聞くが、あんたとあんたの奥さんが桜を愛せなかったのは……やっぱり桜の正体が原因か?」
「……うん、そうだね。……今の……いや、公的に私達の娘として扱われてきた桜は、私達の娘じゃない……その体を使っているだけの狂骨だったからね」
まあ、そりゃそうだろう。
しかも俺様と出会うまでの桜って、マジで武射麿呂を復活させようとしてやがった訳だし……
愛せねぇのも当然だな。
「だが、桜……いや、血染桜とそういう契約を結んだのはあんただろ?……なのに、愛さねぇのは……」
「娘として愛するってのは、血染桜との契約にはなかったからね。……そもそも、あの契約は九相院家内部における妻の立場を守るためにしたものだ。……娘の死体を代償にして、だけど……」
「……だとしたら、今の時間は何だ?……血染桜を娘と思ってねぇなら、何で俺様に感謝の言葉を……」
本当に話が見えて来ねぇ。
つまり、何が言いてぇんだ?
「ああ、うん……宗雪君、君には感謝してるんだ」
「さっきも聞いたが?」
「いや、桜を可愛がってる事じゃなくて……桜を、人間に引き戻してくれた事だよ」
「ん?」
また訳が分からねぇ事を……
もっと分かりやすく言ってくれ!
「えっとね?……宗雪君と出会うまでの桜は、本当に八妖将の末席って感じの性格だったんだ」
「……あ~……悪辣だったって言いてぇんだろうが、その八妖将に居た美乱御前と天五獣君と河濫沱が割と人間に友好的な性格なんだよな……」
「……まあ、その八妖将に今も残ってる方に近い性格だったんだけど、それが宗雪君に出会ってから軟化して行ってね?……今や、桜は完全に人間側に付いてくれてる」
「……それを感謝してるって話か?」
だとしたら、えらい遠回りな言い方しやがったな……
いやまあ、諸々の負い目感じてるんだろうが……
「そうだよ。……そもそも、私達は桜を忌むべき存在としてしか見ていなかった。……もし、私達が最初から歩み寄っていれば、桜はもっと早く心を開いてくれたかもしれないのに……」
「……いやまあ、無理だったと思うぞ?……結局、最後の鍵は桜に生前の記憶を思い出させる事だった訳だから……」
「……だとしても、その前段階までは行けたと思わないかい?……今でこそ、私達もどうにか桜に歩み寄っているが……過去の負い目ってのはなかなか消えないものなんだよ」
「……ハァ……そう思うんだったら、今すぐ桜に話して来い」
そんなの、俺様に話すのが間違いだ。
「……やっぱり、迷惑だったかな?」
「……というか、これってあんたが楽になりてぇだけだろ?……桜に歩み寄らなかった、自分達の負い目を俺様に吐き出して……」
「そ、そんな事は……」
「だったら、俺様に話すのはお門違いだ。……感謝までは良いが、自分達が桜に歩み寄らなかった事まで言う必要はなかっただろ。……まあ、半分俺様が聞いたせいってのもあるが……」
そもそも、桜に歩み寄らなかった事を悔いる必要はねぇ。
本来、忌むべき存在として見て当然だった訳だしな。
「それで桜に嫌われたらどうすれば……」
「いや、桜は笑って許すだろ。……前提として、桜自身もあの頃の桜を嫌ってる節があるし……」
桜にとって、武射麿呂は自身を殺した相手だ。
そんな相手に忠誠を誓ってた頃の自分なんて、黒歴史でしかねぇからな。
「そ、そうかい……なら、今夜は3人で話し合ってみるよ」
「そうしろそうしろ。……後、本当にオドオドすんのは辞めろ」
「……気を付けるよ……じゃあね」
ースタスタスタ……
「ハァ……何かどっと疲れたな……」
俺様、何でこんな話してんだ?
そう思いつつ、今度こそ俺様は1年の控えスペースへと戻ったのだった……
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(俯瞰視点)
ーガチャ
「クソがぁ!……どいつもこいつも僕ちんを舐めやがって!」
その男は、高校の外に停まっていた黒塗りのリムジンに乗り込んだ途端にそう叫んだ。
「お、落ち着いてくださいませ!……坊っちゃま……」
「煩い煩~い!……麻里は何故か見つからないし、あの薄幸そうな女は美乱御前?とかいう奴の娘とかで手を出せないし……僕ちんの思い通りにならない事だらけだぁぁぁぁ~!」
運転手の制止を無視する、乗り込んで来た男こと宝造路 金太。
彼は自身の思い通りにならない事があると子供っぽく癇癪を起こす性格をしていたため、運転手もどうして良いか分からないで居た。
と、その時……
ープルルルル……プルルルル……
「ん?」
ーガチャ
『あ、やっと繋がったでヤンス~。……坊っちゃん、今何処に居るんでヤンスか~?』
「その声……楽邪か!」
『そうでヤンス。……坊っちゃんのお世話係、天秋 楽邪でヤンス~』
楽邪と呼ばれた電話先の相手は、飄々とした態度で金太に接していた。
そして……
「おい、今すぐ適当な美女を用意しとけ!……後で僕ちんが抱いてやる!」
『はいはい。……とはいえ、事件性のある事されると後始末が面倒になるでヤンスから、とりま金で買える女を用意しとくでヤンスね~』
「……それで良い。……後、もしそれでも僕ちんを訴えるとか言い出したら、その時は楽邪がちゃんと始末しとけよ?」
『分かってるでヤンスよ』
そんな会話がなされた後、リムジンは停車位置から移動し、そのまま去って行った。
だが、彼等が宗雪達と相対する事になるのは……そう遠くない未来だったりする。
ご読了ありがとうございます。
次回、午後の種目開始……
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