52.空助の婚約
空助は原作ゲームの主人公、つまり……
(一条院 宗雪視点)
「チッ!……いい加減くたばりやがれ!」
ードドドドドドドドドドドドドドド!
「宗雪はん、いくらやっても無理や!……本体が居らへんのやからな!」
……俺様達は数分程、夏死忌の動く髪の毛と戦闘を繰り広げていた。
そして、分かった事が1つ。
「……んな事は分かってんだよ!……だが、俺様達が死なねぇためにはこれしか……」
基本的に、現在俺様達が戦っている相手は夏死忌の髪の毛でしかねぇ。
本体は、黒い泥の奥……に広がる異空間を経由した何処かだ……
「……本体が何処に居るんか分からへんのに倒せっちゅうんは無茶ブリが過ぎるわ~」
「おい、全然髪の毛減らねぇぞォ!」
ースパッ!……スパッ!
「アタイも結構ギリギリっす!……って、また来たんすか!?……【微水張手】っす!」
ーブンッ!……バシィィィィィィィン!
ぶっちゃけ、髪の毛自体は夏芽の【微水張手】で倒せちまうレベルで弱ぇ。
だが、本体が無事な以上は無限に湧き続けちまう。
「……秋楽に続いて、俺様とは相性が悪ぃ相手とぶつかっちまうとは……」
夏死忌は四鬼で1番の新入りであり、同時に1番の狂人でもある。
……そんな奴が遠隔で攻撃して来るとか……本当に嫌な相手だな!
確か原作ゲームでも倒し方は割と難しかったし……というか、玖尼が居ねぇと倒せねぇ相手だった。
そして、今は玖尼がこの場に居ねぇ……
「……宗雪はん、考え込まんといてぇな!」
「ん?……あ、悪ぃ!」
……今回は本気でやべぇ!
俺様達全員がそう思った。
その時だった……
「ん~?……あの雑魚人形ちゃん達、負けちゃったの~?……しかも降参とか……本当に糞雑魚の雑魚雑魚ざぁ~こなんだから」
「……ハァ?……お前、何を言って……っ!」
まさか、夏死忌の目的は……
「ま、今回はお兄ちゃん達の勝ちにしといてあげるけど、次は絶対に絶望的な死をあげるんだから!」
ーゴポゴポゴポ……
結局、夏死忌は意味深な事を言いながら退却して行った。
……夏死忌の言葉を信じるなら大丈夫だと思いてぇんだが……心配だな……
「……結局、何やったんや……」
「取り敢えず、俺様達は沙耶花達と合流するぞ!」
「えっ!?……そ、そうだなァ……」
「そ、そうするっすか……」
こうして、俺様達は沙耶花達のもとへと向かった。
そして、そこで俺様達は衝撃的な場面を見る事になるのだった……
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(九十九 空助視点)
「なるほど、これが本体ですか……」
『『「「うん、そうなの……」」』』
「……本当に従順ですね……」
『『「「あたし達、死にたくないから……」」』』
……僕達はメレリーと松夜の本体である人形を回収していたのですが、本当に2人の従順っぷりが何とも言えない事になっていました……
「おい、本当にそいつ等を生かすのかァ?」
「……まあ、降参した相手を殺すのも気が引けるじゃないですか?……それに、怪良さんも似た様な立場ですからね?」
「……そうだったケラな……」
怪良さん、ナチュラルに自分が敵側だって忘れかけてるじゃないですか!
それで良いんですか、美乱雑技団……
と、そんな時……
「空助さん、少し宜しいでございますか?」
「ん?……どうしたんですか?」
「……何故、空助さんは私を助けてくださったのでございますか?」
「……いきなり何ですか?」
沙耶花様って、そんな事を言うタイプではない筈ですよね?
「いえ……1歩間違えば、空助さんが死んでいたかもしれないというのに……どうして助けてくださったのかと思いまして……」
「……勿論、仲間だから……というのもありますが、それ以前の問題ですね」
「……と、いいますと?」
……まあ、いつかは言わなければならない時が来たでしょうし、それが今日になるだけの話です。
「……僕は、初めて会った時から……沙耶花様の事が好きだったんです」
……ああ、言ってしまいました。
僕の秘めたる恋心、それをこのタイミングで僕の想い人である沙耶花様に明かす事になるとは……
「……ええ、知っておりましたが?」
「……へ?」
え、今何て言いました?
「ですから、知っておりましたと……」
「知ってたんですか!?」
「いや、お兄様と初めて会った時にそれらしい反応をしておられたではございませんか」
「そ、そういえば……」
あの頃は、感情を隠すのが下手でしたからね……
まさか、沙耶花様がそれを覚えているとは……
「……正直に言いますと、私はずっと待っていたのでございますよ?」
「な、何をですか?……って、この文脈だと1つしかないですよね……」
「流石の空助さんでも分かられましたか……では、正解をどうぞ」
「……告白、ですよね?」
これ、最初の質問からこの答えを出させるつもりだったんでしょうね……
……というか、やっぱりメンタル強いですね……
「ええ。……お兄様もずっと、空助さんと私をくっ付けようとしておられましたし……私達の関係を阻む者は最初から居ない筈でございますが?」
「ほ、本当にすみません……」
「謝る必要などございません。……ただ一言、私に言ってくだされば宜しいのでございますから」
「はい。……沙耶花様、好きです!……将来結婚する事を前提に、僕とお付き合いしてください!」
ああ、結局僕はおんぶに抱っこですか……
最初から最後まで、僕は沙耶花様にリードされっぱなしですね……
「ふふっ……宜しいでございますよ」
「あ、ありがとうございます!」
「ですが……ここまで待たされたのですから、もっと面白い状況にしても罰は当たりませんよね?」
「……え?」
な、何だか嫌な予感がするんですが……
「怪良さん、少々宜しいでございますか?」
「ん?……痴話喧嘩は終わったケラか?」
……僕達の会話、痴話喧嘩扱いされてました……
って、沙耶花様は何を言うつもりで……
「いえ、まだなのでございますが……怪良さん、空助さんに戦闘や頭脳以外で勝てる勝負があるかもしれないと聞いたらどうされますか?」
「そ、そんなの実行するに決まってるケラが……え、何ケラか?」
……もう、この先沙耶花様が何を言うのか分からないんですけど……
「……夜の情事でございます」
「「ブフォ!」」
沙耶花様の言葉に、僕と怪良さんは思わず吹き出してしまいました。
「無防備な空助さんを押し倒し、好き勝手に弄るのもまた……」
「いや、何を言ってるケラ!?」
「そうですよ!……そもそも、怪良さんがそんな誘いに乗る訳……」
「……か、勘違いするなケラ!……わ、私だって興味はあるケラ!」
「あるんですか……」
沙耶花様の妄想も気になりますが、怪良さんが満更でもなさそうなのがまた……
「おや?……これは脈アリでございますか?」
「……無防備な空助にアレコレ出来るってならやってやるケラ!」
「将来的には空助さんの子供を孕む事になるかもしれませんよ?」
「別に……もし子供を産むとして、空助は強い・優しい・将来安泰っていう理想的な相手ケラから……こちらこそ願ったり叶ったりだケラ!」
あっ……
これ、完全に駄目な流れですね……
「では怪良さん、空助さんと婚約してくださりますでしょうか?」
「……わ、分かったケラ!……その代わり、その……ちゃんと愛してくれるケラか?」
「ふふっ……空助さんなら大丈夫でございますよ。……ただ、退魔師の婚約は殆んどが愛のないものでございますし、早々に愛してくれそうな人と婚約するのは1つの処世術でございますよ?」
「そ、そうケラな!」
……もう良いですよ。
怪良さんの事も好ましいとは思ってましたし……
好意かどうかは別として!
ただまあ、こんな場面は宗雪様に見せられな……
「あ~……空助、めでたいな」
「空助、ちゃんと2人とも幸せにしろよォ?」
「まあ、ドンマイっす!」
「おめでとさん」
……滅茶苦茶見られてました!
これ、完全に後戻り出来ない感じじゃないですか……
……とまあ、こうして僕と2人の婚約は決定的になってしまったのでした……
ご読了ありがとうございます。
空助、何気に美乱御前への挨拶が確定しました。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




