46.美乱と華弧の復讐
こういう、かつて肩を並べてた少数精鋭が別々の勢力に散り散りになってるのって良くないですか?
……ただ、同時に仲違いはしてて欲しくないって思ってしまう。
(一条院 宗雪視点)
「は、早く聞かせるケラ!」
「ん……焦りは禁物……今から話すと……言ってる」
本当に怪良は……
話すって言ってんのに……
「あ、ごめんケラ……」
「……あれはそう……人間達の手で……欅姫が……殺されて……」
「いや何があったケラァァァァァ!?」
「あっ……すっ飛ばし……過ぎた……」
……これ、原作ゲームでもこんな感じなんだよな……
これで刀の付喪神なのがマジとか……本当に結界は大丈夫なんだよな?
「……なァ相棒、これ本題に辿り着くのいつになるんだろうなァ?」
「さあな。……さ、早く続き聞かせろ」
「ん……欅姫の本体の……神木は……時の帝に従わぬ者達に……崇められてた……」
「……そ、それでどうなったケラ?」
あ、思ったより短く済みそうだな。
「ん……時の帝は……その者達を……制圧して……虐殺するよう……部下に命じた……そして……その命令は……すぐに実行された……」
「……ん?……お前や美乱御前様は何をしてたケラ?」
「私達……介入する義理ない……時の帝に従わぬ者達……勝手に崇めてただけ……」
「あ~、何もしてないのに勝手に神格化された感じケラか……」
まあ、勝手に崇め奉ってくる奴等がどうなろうと知ったこっちゃないよな……
「でも……それで終わらなかった……ん……時の帝は……自身に従わぬ者達が……崇め奉っていた……神木も……焼き払うよう……部下に命じていた……」
「ケラ!?」
「木霊は……本体にあたる木が死ぬと……存在出来なくなる……だから……欅姫は……私達の目の前で……消滅した……」
「そ、そんなのってないケラ……」
欅姫の死……
ここまで聞けば、この先の展開も何となく分かるってもんだ。
「ん……欅姫は……最期まで……人間を恨まぬよう……私達に懇願しながら……消滅した……」
「ケラ……」
「……角賀と……土梅は……その後すぐ……京の都から遠く離れた地で……土地神になって……怒りを冷まし始めた……」
「……土地神になってまで、欅姫の遺言に従おうとしたんケラね……」
……かつての友を喪った悲しみや怒りを抱えながら、人間相手に中立な土地神を務める……
ある意味、茨の道を進んだ訳だ。
と、その直後……
ーピリピリ……
不意に、この場の空気が重くなった。
「でも……私と……美乱は……納得出来なかった……」
「ケラ!?……でも、お前は人間の味方をして……」
「美乱に……そう言われたから……もし美乱が失敗した時の……保険として……潜伏してって……」
「そ、壮絶ケラ……」
時の帝は、決して踏んではいけねぇ虎の尾を踏んじまったって訳だ。
いやまあ、知らなかったかもしれねぇが……
……なんて言い訳は、この帝に通用しねぇ。
「……怪しい……陰陽師と……手を組んだ……美乱は……何度も……帝の配下が……欅姫の本体の……神木を焼いた事に対する……恨み節を……吐いてた……でも……時の帝は……謝るどころか……逆ギレした……」
「ケラ!?……え、それは知らなかったのにこんな仕打ちを受ける事に対してケラよね?」
「いや……寧ろ……自身に従わぬ者に……崇め奉られていた……神木など……焼かれて……当然だと……何の躊躇もなく……吐き捨てた挙げ句……記録にすら……残さなかった……」
「……これ、本当の話ケラか?」
まあ、そう思うよな……
でも、本当なんだよな……
「……本当でござるよ。……少なくとも、その時に美乱御前の対応をしていたのは四美院家と六刃院家なんでござるが……両家が所蔵している先祖の日記に、しっかりと書かれていたでござるから……」
「ど、ドン引きだケラ……」
せめて無駄だとしても謝るとか、そういうのがあればまだ違ったかもしれねぇのに……
まさに火に油を注いだ訳だ。
「流石に四美院家と六刃院家もドン引きしたらしく、両家とも時の帝の警備を辞退したらしいでござる」
「まあ、当然だケラね……」
「ん……それで……しばらくして……怪しい……陰陽師は……数院九家に……殺されて……配下の……式神も……順次……封印されていった……」
「つまり、美乱御前様は復讐を成し遂げられなかったんケラね……」
怪良は、今の話から美乱御前が復讐を成し遂げられなかったと思ったらしい。
ただ、それを俺様が訂正するより早く……
「いや……美乱は……復讐を……完遂した……」
「ケラ!?……いや、でも……」
「ん……美乱は……強かった……それこそ……誰も封印する隙を……生み出せなかった程……」
「……さ、流石は美乱御前様だケラ……」
その敬愛する美乱御前が復讐を完遂出来なかったとか思い込んでたのは何処の誰だ?
「そして……強い護衛も……時の帝を……見限って……護衛が……手薄になった日を狙って……美乱は……時の帝を襲撃した……」
「え、まさか……」
「ん……時の帝は……最期まで……醜い言い訳を……吐き捨ててた……でも……最期は……美乱の……刀による唐竹割りで……真っ二つになって……死んだ……」
「……え、えぐいケラ……」
時の帝……せめて高潔な信念を持っていたり、政のためなら手を汚すタイプなら何とかなったろうに……最期まで自分勝手な理論を展開すりゃ、死ぬに決まってるよな……
「ん……その後に……帝の部屋に……四美院家と……六刃院家の……人間が……入って来て……美乱は……抵抗せずに……封印された……」
「復讐を完遂したから、もう抵抗する気も失せたんケラな……」
「……帝の死は……公には……病死って事に……なった……そうしないと……負けだから……」
「……まあ、そうケラよな……」
美乱御前による復讐は、そうして幕を閉じたって訳だ。
まあ、だからこそ簡単に八妖将を離反したし、今もお遊び的な組織を立ち上げてるんだろう。
……ちなみに、この話は原作ゲームだとサブクエストクリアで聞けるものだった。
いや、思いっ切り本筋じゃねぇかと思ったもんだ……
……と、その時……
「……ん?……ちょっと良いでござるか?」
「ん……何?」
「華弧殿の話に出て来た、時の帝の最期でござるが……何で知ってるんでござるか?」
「た、確かに……」
思い返せば、華弧さんが知れる機会ってねぇ気がするんだが……
「まず、時の帝の死は美乱御前しか見ていない筈でござる。……そして美乱御前はすぐに封印されて、封印が解けた後に華弧殿と美乱御前が接触した記録はないでござる……」
「……両家が……聞いたとかは?」
「ないでござるよ。……そもそも日記にもすぐに封印したと書かれていたでござるし……」
「ん……まあ……良いか……」
これ、完全に美乱御前の帝暗殺に関わってるよな?
「え、何ケラか!?」
「ん……私は……美乱を……遠隔で見ていた……"金"の属性を司る私は……私が力を込めた金具と……意識を共有出来る……」
「……じゃあ、最後まで美乱御前とは……」
「協力関係……築いてた……でも……今は人間の味方……これは……信じて欲しい……」
うわっ……
一気に信用出来なくなったぞ……
「……今更そこは疑わないでござる。……でも、裏切ったらすぐに斬り捨てるでござる」
「ん……好きに……して……」
え、そんな軽く流すのか?
いやまあ、今更替えが効かねぇってのはあるんだろうが……
「えっと、過去の話はこれでおしまいだケラか?」
「ん……だから……美乱と……親交のあった……私が怪良の……面倒を見るって……話……」
「……わ、分かったケラ……」
「ん……仲良く……しよ?」
華弧さんは美乱御前と親交があったからという理由で怪良を監視する様だが……寧ろ、信用出来ねぇのは俺様だけか?
そう思い、横を見ると……
「……信じられねぇなァ……」
「……信じられないっす……」
「……信じられへんわ……」
「……信じられないのだ……」
「……信じられないでございます……」
「……信じられないですね……」
「……信じられないでござる……」
……全員一致で信用皆無だった。
「……とか何とか言って、いきなり人間裏切ったりしないケラか?」
「ん……しない……」
「怪良からも信用されてねぇ……って、そろそろ教室に向かわねぇとな……」
「なら、もう行って良いでござるよ?……その代わり、怪良は放課後までこっちで引き取るでござる」
「おう、そうしてくれ」
そうして誰からも信用されなくなっちまった華弧さんを見ながら、俺様達は生徒指導室を後にするのだった……
ご読了ありがとうございます。
角賀と土梅も、いずれ登場させたいです。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




