42.春銭太夫戦の余韻
これにて、綾香攻略編は終わります。
(一条院 宗雪視点)
「「「「「この度は、この街を助けていただき誠にありがとうございました!」」」」」
「お、おう……」
俺様は今、この街の人間達から盛大な感謝を送られていた。
理由は簡単。
春銭太夫によって支配されていたこの街を、春銭太夫の討伐という形で解放したからだ。
「あ、私共の宿で泊まっていただいても宜しいですよ?……勿論、お代は無料で」
ーガシッ!
「おい相棒、ここは素直に泊まるぞ!」
「アタイもそれが良いと思うっす!」
「萌音もなのだ!」
……俺様としても願ったり叶ったりだが……さっき綾香と婚約してすぐにこの状況なのは困惑モノだな。
「では、部屋割りはどういたしましょう」
「じゃあ……」
「宗雪はんと桜はんと夏芽はんとウチで1部屋、沙耶花はんと萌音はんと空助はんで1部屋でどうや?」
おい、完全に俺様を囲う気満々じゃねぇか!
「え、僕が女性と一緒なのは……」
あ、空助まで巻き添え食らってやがる。
「旅館でよくある謎スペースで寝よし」
「うぅ……分かりましたよ……あ、沙耶花様と萌音様は大丈夫ですか?」
「私は大丈夫でございます」
「萌音もなのだ!」
こうして、俺様達の部屋割りは決まった。
……あ、それはそれとして……
「なぁ綾香、今回の件は流石に杏美先生に報告しといた方が良いんじゃ……」
「……やっぱせやな……」
……という訳で、俺様達は杏美先生に天道戦から今までの事をスマホ越しに伝えた。
ちなみに、電話は綾香のスマホからかけている。
「……という訳でだな」
『えっと……要は富士山の麓で一目連の天道を式神にして、その日の夜に四鬼の1人である百々目鬼の春銭太夫を倒して、その影響で綾香殿が百々目鬼になってしまった……でござるか?』
「そういう事だな」
「そういう訳やな」
『……ちょっと胃薬飲んでも良いでござるか?』
……俺様達の報告は、杏美先生の胃に負担をかけるのには充分過ぎたらしい。
だが、綾香は更に言葉を続け……
「それとウチ、宗雪はんと婚約もしたで?」
『ぐはっ!……み、ミイラ取りがミイラになったでござるか?』
あ、完全に許容範囲をオーバーしちまったらしい。
……杏美先生の胃は大丈夫だろうか?
「ま、そういう訳やから」
『わ、分かったでござる。……取り敢えず、宗雪殿が婚約者になるなら、上層部も下手な事はしないと思うでござるから、まあ安心するでござる』
「ほな、詳細はまた学校で……」
『分かったでござる!』
ーブチッ!……ツ~ツ~ツ~……
「あっ……切られたな……」
ま、まあ完全に杏美先生の手に余る事態だよな……
杏美先生の胃に合掌。
「じゃ、じゃあ部屋に行くか……」
「せ、せやな……」
こうして俺様達は、各々の部屋に向かったのだった。
そして数分後……
「はぁ~……やっぱ風呂は気持ち良いな~」
俺様は、部屋に備え付けられている浴室に入っていた。
ちなみに、今は体を洗っている最中である。
と、その時……
ーガチャッ……
「背中、流そか?」
「っ!?……あ、綾香か?」
突然、浴室に綾香が入って来た。
「せやよ。……宗雪はんの婚約者、五知院 綾香やで~」
「……ハァ……で、本当に背中流すだけか?」
「勿論!……って、そんな訳あらへんやろ!」
「だよなぁ……」
完全に、初体験狙いだよな……
……女退魔師には肉食系が多いからな……
「……いや、本気でウチは宗雪はんにゾッコンなんやで?……何せ、ウチが百々目鬼になっても婚約してくれるくらいやし……」
「まあ綾香は綺麗だしな」
「……これでもか?」
ーパチリ……ギョロギョロギョロ……
「勿論だろ?」
例え全身に目玉があろうと、綾香が可愛い事に変わりはないしな。
「……ウチ、1周回って宗雪はんが怖くなって来たわ……」
「いや、何でだよ!?」
ーガチャッ!
「いやいや相棒、流石に今のは狂気的としか言えねぇよ」
「そうっすよ!」
「……って、増えやがった!」
何でか桜と夏芽まで入って来やがった!
と、ここで……
「……ちょいとムードぶち壊しになってしもたけど、ウチの初体験頼んでもええか?」
「え、ここでか!?」
「なら、オレ達も一緒に……」
「しちゃおうっす!」
「いやいやいや待て待て待てぇぇぇぇぇ!」
……そんな俺様の制止も虚しく、この後俺様は3人と諸々ヤる事となったのだった……
ただまあ、それでも俺様は3人を愛しているがな!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(俯瞰視点)
宗雪達の隣部屋にて……
「今頃、隣は酒池肉林状態でしょうね。……ズズズ」
「そうでございますね。……ズズズ」
「うぅ~……羨ましいのだ!……ズズズ」
空助、沙耶花、萌音の3人は、サービスとして出された抹茶を飲みながら話していた。
「羨ましいって……それなら告白すれば良いだけの話じゃないですか?」
「いや……萌音は大豪林主をどうにかするまでは宗雪に告白しないって決めてるのだ!……じゃないと、胸を張って宗雪の隣に居れないのだ……」
「「萌音様……」」
萌音は決心していた。
近い内に封印が解けるであろう大豪林主……
その対処が完全に終わるまでは、宗雪には告白しないと……
「……では、当分は萌音様はお兄様に告白なされないのでございますね?」
「当然なのだ!」
「そうでございますか……果たして、その頃には婚約者が何人に膨れ上がっている事やら……」
「沙耶花様、少しあり得そうな事を言わないでください」
沙耶花も空助も、宗雪に婚約者が増える事を疑っていなかった。
そして、3人の雑談は特に大きな話題もなく淡々と行われていくのだった……
同時刻、とある安アパートの1部屋にて……
『……現在入って来たニュースです。……本日の20時頃、箱根の繁華街を秘密裏に支配していた妖が討伐されました。……この妖は八妖将の一角たる死獄童子の配下にあたる四鬼の1人、百々目鬼の春銭太夫というS級相当の妖でして……』
「ふ~ん、春銭太夫が倒されたでありんすか~」
美乱はスマホでニュースを見ながらそう呟いた。
「え、また宗雪とかいう奴がやったケラか!?」
「公開はされてないでありんすが……先日の事を思えば可能性は高いでありんすね」
その時、美乱の脳裏に浮かんだのはスーパーマーケット前で話しかけて来た宗雪の姿。
だが、美乱は怪しい笑みを浮かべ……
「……どうしましたツラ?」
「いや……宗雪達、確実に死獄童子に恨まれると思っただけでありんすよ。……いくらあいつが部下を駒としか見てなくても……強い駒を取られたら流石に怒るでありんすからね~」
美乱はそう呟くと、再びニュースに向かって熱中したのだった……
更に同時刻、とある山奥にて……
「兄者、某から少々ご報告がありま候」
「……冬夜か……何だ?」
白の長髪を後頭部で纏めた和装姿で1本角の青鬼こと冬夜童子が、死獄童子に対して報告を行っていた。
「……春銭太夫が……討たれましたに候」
ーピクッ……
「……本気で言ってんのか?」
冬夜童子から春銭太夫が死んだと聞かされた死獄童子は、当初その話を信じようとしなかった。
「ええ。……秋楽が言うには大半の戦力を雑兵と自身で足止めしたものの、通した非戦闘員らしき女性退魔師が一目連を式神として操っていたとの事で候」
「一目連……そりゃ、春銭太夫に勝ち目はないか」
「秋楽への処分はどうしま候?」
「別に良い。……ここであいつを喪う方が大きな損失だからな」
死獄童子は春銭太夫の死に納得しつつも、秋楽へは罰を与えない方向にした。
「……兄者、怒っていま候?」
「ああ。……部下は駒だが、このタイミングで強い駒を喪ったのは流石に苛つくなぁ」
「……では、復讐をしま候?」
「……いや、下手に動くと蛸鯰の野郎が騒がしいから当分はナシだ!」
「はっ!」
こうして死獄童子は苛つきを感じつつも、その怒りを胸に仕舞い込んだのだった……
だが、それは後に最悪な形で爆発する事となる……
ご読了ありがとうございます。
ここから当分は、「妹の勇者召喚に巻き込まれたら、まさかの獲得スキルが【補助全般】だった……いやこれ、他者を強くすれば無問題じゃね?……な異世界冒険録」の更新に専念します。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




