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4.危険なお見合い

九相院 桜こと、狂骨 血染桜の登場です!

(??視点)


オレの名は血染桜。


零魔院 武射麿呂様に仕える、八妖将の一角。


「……ったく、一条院家のお坊っちゃんは噂じゃ操りやすそうな奴だったが……これが吉と出るか、それとも凶と出るか……」


今、オレは退魔師の名家である一条院家に向かっていた。


理由は単純。


一条院家の次期当主と言われてやがる一条院 宗雪の婚約者となり、宗雪をオレの傀儡とするためだ。


「……思えば、ここまで長かったなァ……」


千年前、碌に活躍も出来ないまま封印され、活動を封じられちまった。


その封印も100年前に解けたが、その後は何故か人間を殺す気にはなれなかった。


いや、思えば千年前から人間を殺す気は起きなかったなァ。


ともかく、そうして封印が解けてから90年後、ふととある病院付近をブラブラしてると……


『……駄目です。……流産ですね……』


『馬鹿な!……そんな……』


……そんな声が聞こえてきた。


どうも、赤子が流産したらしかったが、オレは別に興味が湧かなかった。


だが……


『私達は九相院家の人間だぞ!……1度でも流産したとなれば、妻の体に不備があると疑われてしまう……』


名家であるが故に、流産は醜聞に直結する……


そういう考えが、九相院家には蔓延っていたらしい。


そして、オレはそれを利用する事にした。


『なあなあ、だったらこのオレが死んだ赤子に入ってやろうかァ?』


『ハァ?……お前、何だ?……ゆ、幽霊か!?』


九相院家の人間がこの程度で驚くなと思ったが、交渉は思いの外スムーズに進んだ。


『オレが赤子に入って、体を動かしてやる。……肉体はちゃんと成長させるし、正体が"死人憑き"だなんて誰にもバレねぇよ』


オレの固有能力は、肉体を強制的に乗っ取るというものだ。


そして、それは死体にも適用され、肉体の蘇生だって可能だった。


『ほ、本当だな!?』


『あァ、契約してやるよ』


オレは退魔家の名家に潜入したかった。


赤子の父親は赤子の死を隠蔽したかった。


両者の利害一致によりオレ達の契約は成立し、オレは九相院 桜となった。


そして、今は九相院 桜としてこの場に立っている。


「さて……さっさと済ませるかァ!」


そうして、オレは一条院家の門をくぐった。


全ては、零魔院 武射麿呂様を復活させるため……



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(一条院 宗雪視点)


「く、九相院 桜はもう来てるのか!?」


「そ、それは分かりかねます……あくまでも私は、予定時間がもう少しだと……」


「ああそうだろうな!……ここはどうするかだ……」


九相院 桜、その正体は狂骨 血染桜という八妖将の一角だ。


ちなみに、原作ゲームのユーザーから付けられたあだ名は"クソ骨"だった。


「お、お兄様?」


「……いや、今の状態ならワンチャン勝てるか?……でもなぁ……」


原作ゲームにおける狂骨 血染桜は、正直に言ってクソボスだった。


まず、妖に成り果てた原作ゲームの俺様で適度に消耗させ、その俺様が主人公陣営によって倒されたところで出現。


原作ゲームの俺様を乗っ取ってその精神を殺すと、その肉体を甲冑の様にした硬い骨で覆った。


その時点で防御力が上がったが、その上で腰から生やした長い尾骨や手に装備した鋭く尖った骨、更には肩から生やした巨大な骨の両腕なんかで攻撃して来やがった。


「宗雪様、どうされたんですか?」


「しかも、中ボスクラスの妖を召喚して来るかもしれねぇしな……」


そう。


狂骨 血染桜の驚異は防御力とそれなりに強力な攻撃だけじゃねぇ。


あいつは、勝負開始時と自身の体力が半分まで減らされた時の計2回、"がしゃどくろ"を召喚して来やがる。


"がしゃどくろ"は中ボスクラスの妖であり、大ボスである血染桜との戦闘中に来られるとひたすら邪魔でしかなかった。


他にも色々言われてるが、こいつが"クソ骨"と呼ばれる理由はこんなところだ。


高い防御力、それなりに強力な攻撃、そして戦闘中に召喚される"がしゃどくろ"……


最後の要素が無けりゃ普通のボスだったろうに、そこそこ強い中ボスを召喚するなんてクソとしか言えねぇだろう。


「……普通、配下を召喚する妖なら本体はもっと弱めに設定するべきだろ。……何だよ、本体がクソ硬い上に攻撃もそれなりに強いとか……」


あんなのは、クソボスと言われても仕方がねぇ……が、真のクソゲーと呼ばれるゲームに比べたらまだ攻略させる気があるのがまたタチ(わり)ぃ。


あれは間違いなく、ギリギリ攻略出来る難易度に抑えられていた。


「お兄様!」


「宗雪様!」


「はっ!……(わり)(わり)ぃ……」


また考え込んでしまった。


ただ、よく考えたら原作ゲームの血染桜は俺様の肉体を乗っ取ってやがった。


あの強さも、それ由来だと考えるべきだろう。


それなら……行けるかもしれねぇな。


「お兄様、そろそろ……」


「ああ、今行く……」


そうして俺は、九相院 桜こと狂骨 血染桜のもとへと向かった。



そして数分後……


「俺様は一条院 宗雪……って、言わなくても分かるよな?」


「ああ。……なら、オレも言わなくても分かるだろ?」


「九相院 桜、だな……」


お世辞にも見合いの場とは思えねぇ会話だが、別に他の奴は部屋に入れてねぇから大丈夫だ。


「それより、やけにオレに敵意を向けて来るなァ?」


「……生憎、俺様と結婚して甘い汁を啜ろうっていう女が多くてな。…自然と敵意を剥き出しにするようになっちまったんだよ」


「ぎゃはははは!……それは御愁傷様だなァ!」


本当に性格が悪い。


原作ゲームの俺様は、よくもまあこんな女を側に置いたな……


「……おい、そんな態度で俺様の婚約者になれるとでも思って……」


「まあ落ち着けよ。……オレは、お前の行動を全部肯定してやろう。……だから、何でもオレに任せてくれると良いぜ?」


「ほう……全てを肯定だと?」


「そうそう。……お前が気に入らない奴は代わりに片付けてやるし、お前がやりたい事は何だって手伝ってやる。……10歳児にはまだ早いかもしんねぇが、性的なアレコレだって……」


……こいつ、自分が完全服従する事を誓って取り入ったのか……


思い返せば原作ゲームのこいつ、ほぼ婚約者より太鼓持ちの腰巾着としての面が強かったな……


とはいえ、今の俺様は原作ゲームの俺様とは違う。


「ありがたい提案だが、断らせて貰う」


「……ハァ!?」


原作ゲームの俺様になら効果絶大だっただろうが、今の俺様からすれば悪手でしかねぇ。


俺様は、周囲をイエスマンだけで固めた人間の末路を知っている。


「……とはいえ、お前がそこまでして俺様の婚約者になって甘い汁を啜りたいってのは分かった」


「くっ……噂通りの奴なら、これですんなり行けるかと思ったんだがなァ……甘かったぜ……」


こいつ、案外脇が甘いな……


「まあ良い……そういや、お前はもし目の前に出来損ないの退魔師が居たらどうする?」


「あァ?……そんなの……どうにかして(・・・・・・)()()()()()しかねぇだろ?」


「……え?」


……予想外の答えだった。


少なくとも、本来の血染桜はまだ話の分かる奴だったっぽいぞ。


……要は、原作ゲームの俺様に絶対服従している内に性格も歪んだってところか?


「あァ?……聞いといてその反応は何だ?」


「いや……」


そういや、原作ゲームではちょろっとこいつの過去が明らかになってたっけ……


えっと、あれは確か……


「だから、聞いてんのかァ!?」


「うおっ!?」


あ、今ので思い出した!


ただまあ、狂骨 血染桜の過去は血染桜の最期にうっすらと回想されるのと、ラスボス戦で零魔院 武射麿呂が少し語るだけだったから忘れちまっててもおかしくはねぇ……


「……お前、噂じゃ特に考えずに動いてるって聞いてたんだがなァ……」


「噂は噂だ。……というか、本気で俺様の婚約者になるつもりあんのか?」


「あるぜ?……まあ、お前と話してる内に辞めようかとも思ってるが……」


傀儡に出来ない可能性が出て来たから、婚約者にならないつもりか……


だが、それなら俺様だって考えがある。


「それは、俺様を傀儡に出来ないからか?……八妖将の一角、狂骨の血染桜よ」


ーピクッ


「……ハァ?」


俺様は勝負に出る。


……破滅のもとを、早めに対処するために……

ご読了ありがとうございます。


宗雪、少しでも勝ち目があると踏んだら挑んで行くのは以前と変わっていません。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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