31.監視者と対応
え~……三官女に続き、再び八妖将の直属部隊の名前が登場します。
(一条院 宗雪視点)
「……という訳で、俺様達は昨日初体験を済ませたって訳だ」
「いや、それを萌音に愚痴られても困るのだ!」
桜や夏芽との初体験の翌日の登校中、俺様は道中で出会った萌音に初体験の経緯を話していた。
しかし、萌音の失言に桜と夏芽が反応し……
「あァ?……愚痴って何だァ?」
「宗雪は嫌だったんすか?」
「いや、そうじゃなくてだな……初体験は、もっと良い雰囲気で挑みたかったというか……」
「……んな事は気にすんなァ……オレはあれで充分良かったからなァ」
「アタイも同感っす!」
いや、そっちは良かったかもしれねぇが……
……まあ、2人が良かったならそれで良いか……
「……ですが、これでお兄様は完全に退路を絶たれた訳でございますよ?」
「宗雪様も、遂に2人と添い遂げる覚悟を決めたんですね」
「沙耶花、空助……1つ勘違いしてる事があるな」
「「と言いますと?」」
おいおい、わざわざ言わなきゃならねぇか?
「俺様は、2人とそれぞれ婚約した時点で覚悟を決めていた。……ただ、初体験に怯えていただけで……」
「ヘタレでございますね……」
「ヘタレですね……」
「う、煩ぇ!」
どうせ昨日までの俺様はヘタレだったよ!
だが、今の俺様はそうも……
「あ、今日はヤらねぇからなァ?」
「アタイも今日は勉強に集中っす!」
「あ、ああ……」
「……お兄様、尻に敷かれておられますね……」
「宗雪様、完全に主導権握られてるじゃないですか」
「ぐぬぬ……」
結局、夜のアレコレは桜と夏芽に主導権を握られちまってるが……別に良いだろ!
「ま、これからも改めて宜しく頼むぜ……相棒?」
「アタイも頼むっす!」
「……当然だ。……2人とも、絶対に俺様が幸せにしてやるよ!」
そんな事を話しながら、俺様は高校への道を歩み続けた。
……それはそうと、俺様達を覗くとは良い度胸だな……
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(五知院 綾香視点)
『……当然だ。……2人とも、絶対に俺様が幸せにしてやるよ!』
「くぅ~!……よくそんな言葉をサラッと言いはれますな~!」
昨日、杏美はんから宗雪はんの監視を頼まれた時はどうなる事かと思たけど……案外何とかなっとるな~。
それにしても、宗雪はんすら監視出来るって……ウチ、結構凄いんとちゃうか?
……そう、思てたんやけど……
『おい、そこで俺様達を監視しているのは何処のどいつだ?』
「ひっ!?」
え、まさかバレた?
いや、そんな筈は……
『ほう、"目目連"を式神として操っているのか。……となれば、監視している相手は五知院 綾香か』
「あ、バレとるわ……」
ウチの十八番……"目目連"を【式神召喚】で呼び出してあちこちに配置した後、【感覚共有】で"目目連"の視覚と聴覚を共有して監視するっちゅう方法がバレるとか……
『"目目連"は障子に1対の目が大量に付いている絵が有名だが……その正体は縦横無尽に湧き出る1対の目といった妖だ。……それをまさかこんな形で運用するとはな』
「あかんあかんあかん!……ウチ、戦闘苦手なんやけど!?」
……ウチ等五知院家は情報収集能力こそ他の家を凌駕しとるけど、戦闘能力に関してはからっきしや!
せやから、もしウチが宗雪はんに襲われたりでもしたら確実に破滅してまう!
『……綾香、高校で会ったら話をしようか』
「お、終わったわ……」
ああ、ウチの人生って呆気なかったな~……
……こんな事なら宗雪はんの監視なんて引き受けんかったら良かったわ……
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(一条院 宗雪視点)
「……面倒な事になった……」
まさか、五知院 綾香が行動を起こすとは……
その理由は知らねぇが、俺様達を監視……というか覗き見した時点で、俺様は綾香と話をする必要が出来ちまった。
「ん?……相棒、どうかしたァ?」
「いや、何でもねぇ」
これは、俺様だけで片付ける必要がある。
綾香は戦闘力こそからっきしだが、その情報収集能力は他の家を遥かに凌駕しているのだから……
……下手に皆を巻き込むのは悪手だろう……
「……じゃあ、早く行くっすよ!」
「ああ、そうだな……」
綾香が何を企んでるかは知らねぇが……これ以上俺様のプライベートは覗かせねぇよ!
そして高校に到着した直後……
「そ、そそそそそそそそそ宗雪はん!」
「……壊れた機械音声みてぇになってるぞ……」
明らかに動揺しまくって挙動不審な綾香が、俺様達の前に現れた。
「ちょ、ちょちょちょっと話があるんやけど一緒に来て貰えんかな?」
「……別に良いが」
「ほな、早く来てもろて」
「……という訳で、少し話してくる」
てっきり覚悟完了してるかと思ったが……綾香のメンタルは予想よりも脆かったらしい。
それはそうと、俺様の言葉を聞いた桜達は……
「ふ~ん……また増えんのかァ?」
「アタイは別に良いっすよ!」
「……お兄様、節操という言葉を……」
「宗雪様、流石にこれは……」
「宗雪、萌音も流石に引いてるのだ……」
「いや、違うからな!?」
綾香を俺様の婚約者候補と誤解されても困るんで、すぐに誤解は解いた。
「……なんかごめんやで?」
「別に良いから、さっさと話を終えるぞ!」
そうして俺様は綾香に連れられ、何処かへと向かうのであった……
そして数分後、体育館裏の物陰にて……
「本っ………当に申し訳あらへんかった!」
ーザザ~!
「えぇ……」
俺様は何故か、綾香による綺麗なスライディング土下座を見せられていた。
「ウチはただ、杏美はんから宗雪はんの監視を言い渡されただけなんや!……せやから……」
「杏美先生が?……いやまあ、監視される心当たりは多いんだが……」
大豪林主を封印へと追い込み、美乱御前相手に足止めを行い、挙げ句の果てには河濫沱を夏芽の式神にするとか……監視されても仕方ねぇよな……
……だからって、これ以上プライベートを覗き見させるつもりはねぇが。
「……さ、流石に許してはくれへんよな……」
「当たり前だろ。」
俺様の本心としては、今後しないと誓えば許してやるんだが……綾香より優位に立てている今を利用しねぇ手はねぇだろ。
「な、何したらウチを許してくれるはるん?」
「そうだな……今後、俺様が求める情報を無償で提供し続けろ」
「え、それは……」
「出来ねぇのか?」
ーギロッ……
「っ!……や、やったるわ!」
よし、何とか協力を約束させたぞ。
……とはいえ、あんまり一方的な要求を突き付け続けるのは流石に気が引けて来るな……
ふむ、俺様からも利益を提示してやるか。
「ただまあ、あんまり一方的なのも気が引けるんでな。……こちらからも利益を提示してやろう」
「……へぇ~、何くれるん?」
「それは綾香、お前次第だ。……お前の要求で、可能なものがあれば惜しみなく……」
「……ほな、ちょっと協力して欲しい事があるんよ」
……やはり食い付いて来たか。
ここで改めて原作ゲームの五知院 綾香を振り返ると、基本的に彼女は情報収集が得意だが戦闘はからっきしという何とも言えねぇキャラクターだ。
実際、綾香は原作ゲーム中盤で仲間に出来るものの、基本的に探索か敵の弱点を探る目的でしか使えねぇという扱いづらいキャラクターであった。
そんな綾香も攻略ヒロインの例に漏れず、八妖将との因縁がある。
ただし、本当に因縁があるのは八妖将直属の配下ではあるが……
……っと、考え過ぎたな。
「さて、待たせたな。……で、お前は俺様に何を求めるつもりだ?」
「……ちょいと難しいんやけど……八妖将の一角を担っとる死獄童子って居るやろ?……その配下の集団、"四鬼"の1人……百々目鬼の春銭太夫の討伐を手伝って欲しいんや!」
綾香から要求された望みは、八妖将の一角たる死獄童子の配下、"四鬼"の1人である百々目鬼の春銭太夫討伐を手伝うというものだった。
これは俺様としては想定内の答えではあったが……この要求が後々俺様達を窮地に陥らせるとは、この時の俺様は予想だにしていなかった……
ご読了ありがとうございます。
四鬼のメンバーは、次回紹介します。
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