25.暗躍する者達
久しぶりの更新で、ちょっと文章がおかしいです。
(六刃院 杏美視点)
「「「ハァ……」」」
職員室に木霊する、3人分の溜め息。
……それは、拙者達の口から発せられたものでござった。
「いやはや、おじさん困っちゃうよ……」
そう呟いたのは、歴史担当教師の三愛院 蓮業殿。
三愛院家本家の現当主の弟に当たる、現在42歳のくたびれた中年でござる。
……と、蓮業殿とは反対側からも声がして……
「あの牛鬼騒動から1週間……まさか美乱御前まで介入して来るとは……ボクとしては、愚妹が勝手な行動をしない事を祈るだけさ」
そう語るのは、音楽担当教師の四美院 重音殿。
3年生の四美院 蘭子殿の腹違いの姉に当たる、タキシードを綺麗に着こなす男装美女でござる。
「愚妹って……そこまで言わなくても良いでござらんか?」
「愚妹は愚妹さ。……少なくとも、マトモならあんな行動は慎むと思わないかい?」
「……それはそうでござるが……」
「別に、ボクは愚妹が妾の子供だからって差別はしないさ。……例え、その妾が人間に化けた美乱御前だったと後から判明した厄ネタであっても……」
「いや、おじさんいつ聞いても思うんだけど、それかなりヤバいんじゃ……」
「父上が側室として迎え入れた人間が美乱御前だったなんて、恐怖以外の何物でもないさ。……幸い、愚妹は善人として育ってくれているけど……不安は残るんだよね……」
この退魔師界隈の一部だけが知っている厄ネタ。
四美院家本家の当主が側室として迎え入れた女性に、実は戸籍が存在していなかったという話。
何でも、当初は一夜だけの関係だった筈が、その1回でまさかの妊娠。
出産した相手が赤子を手に押し掛けて来たので、側室に迎え入れようとしたところ、何故か戸籍が存在しない事が判明。
問い詰めようとした時、相手が美乱御前という正体をバラして赤子を置いて何処かに逃走。
赤子は遺伝子検査の結果、ちゃんと四美院家本家当主の子供であると同時に妖狐の半妖でもあって……
……という、何処を聞いても洒落にならない話でござる。
「……君達、話が逸れてるよ。……ただ、おじさんとしてはチャンスな気もするんだ」
「……どういう事でござるか?」
「美乱御前がアップした動画見たよね?……あれ、多分本当だよ」
「つまり……本当に八妖将の瓦解が始まったと言いたいんでござるか!?」
「さあね。……おじさんも万能じゃないし、これ以上は何とも言えないかな」
……蓮業殿、それなら意味深な事を言わないで欲しかったでござる。
と、そこで重音殿の方を見ると……
「ハァ~……蓮業さん、いつ見ても渋くて格好良いじゃないか……」
「……重音殿の枯れ専趣味に関しては何も言わないでござるが、今はそういう話じゃないでござるよな?」
「うっ……す、すまないね……」
重音殿は見た目こそ格好良い男装女性でござるが、その恋愛対象はくたびれた中年という少し変わった枯れ専なのが……
「……重音殿、下手すると拙者みたいに行き遅れるでござるよ?」
「いやいや、まだ杏美先生はそんな年齢では……」
「そんな年齢でござるよ!」
ああもう、また話が逸れたでござる!
「……まあ、ボクとしても雑談はこれくらいにしておくよ。……それでこれは教師としての仕事かい?それとも八咫烏としての仕事かな?」
「……そんなの、八咫烏に決まっているでござる……」
国家直属退魔師部隊、八咫烏……
拙者、蓮業殿、重音殿の3人で構成された特殊部隊で、重要な任務が割り振られる事が多い部隊でござった。
「……おじさんが言うのもアレだけど、この件で1番気にするべきは宗雪君だよ?……そもそも、いくら遊び半分だったからって美乱御前相手に足止めが出来る子なんて何人居るかって話だしね?」
「……ボクも同感かな。……ただ、正確には宗雪君の一派全員が桁外れなんだけどね……」
「宗雪……いや、宗雪殿の一派全員でござるか……」
確かに2人の言葉も一理あるでござるが……彼等に関しては未知な部分が多いんでござるよな……
「……ま、分からない事を考えても答えは出ないし、ちょっとおじさんが調べとくよ」
「ならボクも……」
「重音君は目立つから駄目だよ。……今回はおじさんの邪魔にしかならない」
「ガ~ン……わ、分かったよ……」
「……口でガ~ンって言う人初めて見たでござる……」
蓮業殿にはいつもお世話になりっぱなしでござるが、対する重音殿が蓮業殿LOVEで突っ走り気味なのはどうかと思うでござる……
「……で、2人はこれでトラブルが終わると思う?……ちなみにおじさんは思わないけど……」
「ボクも蓮業さんに同意かな……」
「拙者もでござる……」
「「「……ハァ……」」」
3人揃って再び吐く溜め息。
それはこの先も確実にトラブルが起こる事を予想してのものでござった……
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(俯瞰視点)
とある安アパートの1部屋にて……
「よし、案外良い画が録れたでありんす!」
「でも、今日始めたばかりだからとはいえ再生数が伸び悩んでいるケラ……」
「しかも、今日始めたばかりですからまだ収益化も通ってないですツラ……」
「つまり、今日もまた晩飯はもやしだフラ……」
「「「「……ハァ……」」」」
良い画が録れたと喜びつつも、肝心の動画が伸び悩んでいて晩飯がもやし状態なのを嘆く美乱雑技団の面々が居た。
「……もう、この際過激な方向に行くのもありじゃないケラか?」
「でも、それをしたらただでさえ通っていない収益化がより困難になりますツラ……」
「あ~、一時期流行った迷惑系ってこういう精神状態から生まれたんフラか……」
「……って、わっち等は迷惑系にはならないでありんすからね!?」
……元々悪の組織側に居たとは思えない言葉を放つ美乱御前。
この面々が当分、もやし生活をおくる事が決定した瞬間であった……
場所は変わり、とある廃寺の本堂……
「う~む……まさか美乱が離反するとは……」
「……拙僧の目を以てしても、この展開は……」
「つうか、我の牛鬼をあんな雑魚共に託したのはどうなんだ?……お陰で手駒を1つ失っちまったじゃねぇかよ!」
美乱が離反した事を想定外の事態として考えている様な反応をする蛸鯰、空旋坊、死獄童子の3人。
彼等にとって配下は手駒でしかなく、失った所で戦力に出来る駒が減った程度にしか考えない。
そんな彼等だからこそ美乱は見限ったというのに、その事実にすら気付けない。
「じゃが、所詮はその程度の駒じゃったというだけの話じゃ。……それよりも、問題は美乱をどうするかじゃが……」
「拙僧では無理だな。……確実に負ける」
「我でもちょいキツいな~」
「……美乱が八妖将最強じゃったのが仇になるとはのう……当分、粛清は先送りじゃな……」
かつては8人居た八妖将も、大豪林主封印と数々の離反を経て3人しか集まらなくなっていた。
河濫沱と天五獣君はまだ離反こそしていないものの、ほぼ離反は確実。
血染桜と美乱御前は明確に離反。
この状況を前にしても、残る3体の八妖将は余裕を崩さなかった。
しかし、それは根拠なき自信から来るものでしかなかった……
再度場所は変わり、吾苦盧橋付近の河原……
「"鵺"さん、流れて来た噂によれば美乱が八妖将を離反したとか……いやはや、意外でござんすな~」
「まあ、三官女を死地に送られたらそうもなるっピ」
「ほう……いよいよ蛸鯰の性格が仇になったでござんすか~」
美乱の離反を噂で耳にした河濫沱はその事実に驚きつつも、"鵺"から理由を聞いて納得していた。
「ま、"鵺"達にはあまり関係のある話ではないっピ」
「ふむ、そうでござんすな~……オイラもそこまで興味はないでござんすし……」
河濫沱と天五獣君の"鵺"は、美乱の離反にそこまで興味を持たなかった。
こうして内部分裂を起こした八妖将は、各々がそれぞれの方向に歩みを進めたのだった……
ご読了ありがとうございます。
そろそろ河濫沱とのアレコレ片付けて恋愛中心に書きたい……
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




