21.夏芽の限界突破
1話に結構詰め込みました。
(一条院 宗雪視点)
「それじゃあ早速……【狐火乱舞】でありんす!」
ーボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!
「チッ、原作ゲームでも見た弾幕か……」
美乱御前は無数の火の玉を出し、それ等を自身の周りに設置した。
その数、軽く見積もっても100個以上はあるだろう。
「さて、避けれるものなら避けてみろでありんす!」
ーヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!
「クソがっ!」
ードドドドドドドドドドド!
美乱御前によって発射された100個以上の火の玉を、俺様は妖力弾で何とか迎え撃つ。
だが……
「ほれほ~れ、早く対処しないとお前が燃えるでありんすよ~?」
「そっちは余裕そうだな……」
明らかに、俺様が遊ばれてやがる……
「そりゃまあ、わっちはこれでも八妖将最強でありんすからね~。……強さが違うんでありんすよ!」
……そう、こいつは八妖将最強の実力者だ。
実際、原作ゲームじゃドシリアスな敵として登場し、大量のプレイヤーを苦しめたとか何とか……
間違っても、親バカなギャグ敵じゃねぇ。
「……だとしても、そっちが遊び半分でやってくれてんのは幸運としか言えねぇな!」
「むっ……どういう意味でありんすか?」
「そのまんまだよ!……俺様がお前を足止めしてる間に、夏芽が牛鬼を倒せば……」
「ふむふむ……ま、それならそれでお手並み拝見と行くでありんすか~」
美乱御前は余裕を崩さず、飄々と言い返した。
……俺様は、本当にこいつを足止め出来るのか?
そう悩みつつも、俺様はそのまま妖力弾を放ち続けたのだった……
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(九相院 桜視点)
「……声の主を足止めしろつっても、何処に居やがるんだよォ!」
「……桜お義姉様、冷静さを失ってしまわれてはいけません!」
「いやでも、僕も気持ちは分かりますよ……」
オレ、沙耶花、空助の3人は、相棒に言われた声の主を足止めしろという命令を遂行しようと、あちこちを探しまくっていた。
なお、万が一を考慮して空助には透明になって貰っている。
「……つ~か、あの放送って何なんだァ?……明らかに館内放送の類いじゃなかったし、あれがどういう放送かが分かれば解決の糸口に……」
「っ!?……この反応は美乱御前様ケラか!?」
「っ!?……おい今何処から声しやがったァ!?」
本当にすぐ近くから、放送と同じ声が聞こえて来やがった。
オレは、すぐに声のした方向を向く。
「……暑い……辛い……あ、見つかっちゃいましたツラ……」
「怪良、何やってるフラか!?」
「ごめんケラ!」
そこには、目当ての3人組が居た。
1人は黄緑色の肌、茶色の長髪、胸のさらしと膝下までの腰布のみという服装が特徴的な女。
1人は所々氷が付着した肌、顔が隠れる程の黒の長髪、死装束を思わせる白い服装が特徴的な女。
1人は頭から被った黄色い布、白色の長髪、千年前の日本における貴族女性を思わせる服装と傍らの文車が特徴的な女。
どいつも見た目は10代後半って感じだが、多分長く生きてる奴等だろうなァ。
「おい空助、取り敢えず奇襲を仕掛けろ!」
「分かりました」
オレは冷静に、透明状態の空助に奇襲を命じた。
そして、しばらくして奇襲がかかる頃……
「……私にお前が見えてないとでも思ったケラか?」
「っ!?」
ーガキィィィン!
突然、刃物と刃物がぶつかった様な音が響いた。
そして、その音の発信源は……
ーギギギ……
「な、何で僕が見えてるんですか?」
「私はしょうけらの怪良だケラ!……しょうけらの視力、舐めんじゃねぇケラ!」
黄緑色の肌をした女……怪良が、両手に持った短刀で空助の攻撃を防いでやがった。
「なら次、沙耶花ァ!」
「承知いたしました!」
ーダッ!
オレはすぐさま沙耶花に指示を出し、次の一手を仕掛けた。
しかし……
「暑い……【つらら雨】ですツラ~!」
ーヒュン!ヒュン!ヒュン!
「回避でございます!」
ースカッ……
「貴女の相手はこの私、津螺ですツラ~……」
沙耶花は氷の付いた黒髪の女……津螺のつららを降らす攻撃で足止めされちまった。
「……となると、オレの相手は……」
「私だフラ!……お前は、この訃羅が相手だフラ!」
オレの前に立ち塞がったのは、貴族みてぇな服装をしていた女……訃羅だった。
「……【骨鎧】、【骨腕】、【骨尾】、【骨薙刀】だァ!」
「完全武装だフラか……なら、【失恋文打】で崩すだけだフラ!」
ーシュルシュルル~!
「あァ!?」
訃螺が【失恋文打】と唱えた瞬間、文車の中の文がオレに向かって触手みてぇに襲いかかって来やがった。
「私の文車に詰まった文は失恋の怨嗟だフラ……そこから生まれた呪い、とくと味わうと良いフラ!」
……なるほどなァ……
特徴や台詞から考えるに、しょうけら、つらら女、文車妖妃かァ……
……どいつも単体じゃ大した力を持ち合わせてねぇ奴等の筈だが、そんなこいつ等をあの美乱御前の奴が溺愛してるとか……
とてもじゃねぇが信じられねぇなァ……
だが、相棒が言うって事はマジなんだろうなァ……
「ま、それはそれとして食らわねぇがなァ!」
ースパッ!スパッ!スパッ!
「……なかなかやるフラな……」
こいつ等を殺さねぇ様にってのは、まあ確かに縛りではあるなァ……
……夏芽、さっさと牛鬼倒してくれよォ……
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(二剛院 夏芽視点)
「【微水張手】っす!」
ーバチィィィィィン!
「ンモォォォ!」
あ~もう、なかなかダメージが入らないっすね……
そういや、向こうが騒がしい様な……
「……って、宗雪!?……何に襲われてるんすか!?」
「美乱御前だ!……こいつは俺様が何とか足止めするから、牛鬼を倒してくれ!」
ードドドドドド!
「そういう訳でありんすから、こっちは気にせず戦うと良いでありんす。……まあ、お前が負けたらこの男が死ぬだけでありんすけどね」
「なっ……」
宗雪が死ぬって、そんなの嘘っすよね?
せっかく、好きになったのに……
「ンモォォォ!」
ーブンッ!……スカッ……
「夏芽、いくら萌音の幻術で牛鬼から見えないからって、棒立ちになるのはどうかと思うのだ!」
「……つまり、アタイが牛鬼を倒せば良いんすね?」
「いや、そう簡単には行かないのだ!」
確かに、今のままじゃ倒すまでにだいぶ時間がかかっちゃうっす。
……でも、ここで愛の力を発揮しないで、いつ発揮するんすか!
絶対に、宗雪は殺らせないっすよ!
と、その時……
ーぶわっ!
「っ!?」
「ん~?……男、名は何というでありんすか?」
「宗雪だが……」
「宗雪、何かあの女の妖力が一気に跳ね上がってるんでありんすが……」
「ああ、上がってるな……」
何か美乱御前と宗雪が話してたっすけど、今のアタイはそれどころじゃなかったっす。
何せ……
「い、いきなり妖力が沢山溢れ出て来たっす!?」
突然、アタイの妖力がさっきまでの倍になったっす。
まるで、水道の蛇口が壊れたみたいに……
「ふむ……ああいうタイプは、感情と妖力弁がリンクしてるでありんすからね~。……愛する男を殺られるかもしれないって思って妖力弁がイカれたんでありんしょう」
「いや、何冷静に語ってんだよ……」
妖力弁がイカれたんすか……
でも、この感覚は覚えたっす。
後は……
「この牛鬼相手に練習してみるっすか!」
「ンモォォォ!」
あの河濫沱に押し負けない様な……いや、寧ろ押し出せる様な攻撃をイメージするっす!
今のアタイなら、それが出来る筈っす!
「ふぅ……妖力限界解放、【高圧激流張手】っす!」
ーブンッ!……ドゴォォォォォォォォォォォン!
「「「……え?」」」
……これが……アタイの……限界突破っす……
一族の皆は……家族でありつつも……好敵手としての面が強かったから……負けてる姿を見ても……限界を越えられなかったっすけど……純粋に愛だけを向けてる相手の……宗雪が……殺られるかもと……思ったら……限界を……越えられたっす……
「う、牛鬼に大穴を空けて倒したでありんすか!?」
「ま、マジかよ……」
「ゆ、夢じゃないのだ!?」
散々な言い様っすね……
とはいえ……これで……アタイの……勝ちっす……
ご読了ありがとうございます。
夏芽の新必殺技、【高圧激流張手】は、体への負担がえげつないので、1週間に1度出せる大技になります。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




