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20.牛鬼と三官女と九尾

河濫沱との戦いが、どんどん先延ばしになっています……

(俯瞰(ふかん)視点)


とある廃寺、その本堂にて……


「蛸鯰!……何であの娘等を勝手に出撃させたでありんすか!?」


「あの娘等……ああ、お主の世話係共の事かのう?」


「そうでありんす!……わっちの大事な世話係を、どうして勝手に……」


「勿論、使い勝手が良いからじゃが?……まあ、死獄童子を通じて牛鬼も貸し与えた訳じゃし、そう簡単には死なんじゃろ」


蛸鯰と呼ばれた蛸と鯰と人間が合わさった様な老人に対し、9本の尾が特徴的な和服姿の黄髪狐耳美女が詰め寄っていた。


その内容は、狐耳美女の世話係を勝手に手駒として出撃させた理由を問うものであったが、それに答えた老人の世話係の命を軽視している様な発言を聞いた狐耳美女は……


「っ……蛸鯰、お前はあの娘等を使い勝手の良い駒としか思ってない様でありんすが、わっちにとってあの娘等は目に入れても痛くない程可愛い愛娘同然の存在なんでありんすよ!?」


「ふん……美乱も腑抜けたのう……昔のお主なら、こんな事は言わんかった筈じゃろうに……」


その直後、場に重苦しい緊張感が張り詰めた。


片や、腑抜けた同僚を見る失望の眼差し。


片や、目に入れても痛くない愛娘同然の存在を死地に送られた怒りの眼差し。


両者共に、お互いの命を狩る準備は出来ていた。


しかし……


「……止めでありんす。……取り敢えず、3人とも無事に帰って来たら許してやるでありんす」


「では、戻って来んかったらどうするのじゃ?」


「勿論……お前を殺すだけでありんす」


「おお、怖いのう」


美乱と呼ばれた狐耳美女は、3人の世話係が無事に帰って来たら蛸鯰を許すが、帰って来なかったら殺すと言った。


それに対し蛸鯰は不気味な笑みを浮かべ、口先だけの恐怖を語るのだった……



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(一条院 宗雪視点)


「ンモォォォォォ!」


「「「うわぁぁぁぁぁ!?」」」


「「「きゃぁぁぁぁぁ!?」」」


「チッ……取り敢えず、まずは民間人の避難を優先するぞ!」


マズいマズいマズいマズいマズい!


牛鬼もそうだが、それよりも三官女の方がマズいと言わざるを得ねぇ!


「桜!沙耶花!空助!」


「何だァ!?」


「何なりとお申し付けください!」


「どうしますか!?」


おいおい、名前呼んだだけでこの対応とか……信頼度カンストしてねぇよな?


「取り敢えず、3人は声の主共を足止め(・・・)しろ!」


「……相棒(ダーリン)、足止めだけで良いのかァ?」


確かに、足止めだけってのは不自然だろうよ。


でも、倒しちゃ……いや、殺しちゃ駄目なんだよ!


「あいつ等……三官女は、八妖将の一角たる美乱御前の世話係だ。……ただ、封印から解放された後に美乱御前に拾われた奴等な上に表には出て来なかったから、これまでは退魔師側に知られてなかったがな」


「そういう事かァ……道理でオレも知らねぇ訳だ」


「……なら、何故お兄様が知っておられるのでございますか?」


「確かに、僕も疑問には思いましたが……それは一旦後にしましょう!」


……俺様が知ってる理由は、また予知夢で押し通すしかねぇか……


ただ、今はそれどころじゃねぇが。


「……しかも、三官女は美乱御前のお気に入りで、まるで実の娘の如く溺愛されてやがる。……つまり、ここで三官女を倒しちまったら怒り心頭の美乱御前と戦う羽目になるって訳だ」


「ハァ!?……あいつ、そんなタマかァ?」


「……桜お義姉様は美乱御前の何を知っているのでございますか?」


「桜様も大概おかしいですよね……」


沙耶花と空助はともかく、桜はマジで倒しちまいかねないからな……


念入りに注意しとかねぇと……


「取り敢えず、俺様と夏芽と萌音で牛鬼はどうにかする……って、そういや夏芽と萌音は何処だ?」


「あァ?……確かに居ねぇなァ?」


「夏芽様は、お兄様の話を聞く前に牛鬼に向かって行かれました。……萌音様は、そんな夏芽様に引き摺られて……」


「わ、分かった……」


沙耶花の言う通り、夏芽は牛鬼の近くに居た。


それで何をしていたかというと……


「【微水張手(びすいはりて)】っす!」


ーバチィィィィィン!


「ンモォ!?」


「もういっちょ【微水張手(びすいはりて)】っす!」


ーバチィィィィィン!


「ンモォォ!」


牛鬼に対し、ひたすら【微水張手(びすいはりて)】を繰り出し続けていた。


「……ただ、牛鬼って原作じゃ結構強めの中ボスだったからな……そもそも、ここで戦うのは早いってレベルで強いし……」


「ん?……何か言ったかァ?」


「いや、何でもねぇよ」


牛鬼との戦闘は、確かに原作ゲームでもあった。


しかし、本来なら三官女と同じくもっと先の場面で登場する筈なのだが……


とにかく、そんな訳で相手は八妖将レベルじゃねぇが結構強いんだよな……


「【微水張手(びすいはりて)】で勝つには何発打ち込めば良いか……」


「そんなにかァ?」


「牛鬼って思ってるよりも結構(つえ)ぇからな……」


夏芽が戦っている牛鬼は、一般的に知られている牛の顔と蜘蛛の様な体が特徴的な個体だった。


だが、その特異性は見た目だけではなく……


「ンモォォォォォ!」


ーフシュゥゥゥゥゥ~!


「っ!?……多分、これ当たったらマズいっす!」


牛鬼が夏芽に向かって鼻息を放つと、夏芽は直感的に鼻息を避けた。


「ああ、それで良い。……とはいえ、俺様はさっさとあの鼻息を解毒しねぇと……」


「ハァ!?……ど、毒って言ったかァ!?」


「牛鬼の息は毒。……常識だろ?」


「そ、そういやそうだっけかァ……」


って、それよりも早く解毒……解毒って俺様でも出来るよな?


「とにかく、お前等3人は三官女を足止めしとけ!」


「任せとけ!」


「お任せください!」


「僕も頑張りますよ!」


ータッタッタッ……


俺様の指示により、桜達3人は三官女の足止めへと向かった。


なら、俺様がやる事は……


「……【解毒】!」


ーキラキラキラ~ン……


「お、宗雪ありがとうっす!」


「ありがとうなのだ!」


「良いって事だ!……それじゃあ、俺様は民間人の避難を優先するぞ?」


「分かったっす!」


俺様は辺り一帯に漂う毒息を解毒し、そのまま民間人の避難を優先した。


「後、萌音は何してんだ?」


「萌音は今、牛鬼に幻術かけてるのだ!」


「……なるほど、道理で牛鬼の攻撃が夏芽に当たってねぇ訳だ」


先程から牛鬼も反撃として、足の先にある鋭い爪で夏芽を串刺しにしようとしているのだが、それが中々当たらずにいた。


しかし、それは萌音の幻術によるものであり、牛鬼はずっと夏芽の幻術を見ているって訳か……


「【微水張手(びすいはりて)】っす!」


ーバチィィィィィン!


「……あの調子じゃ、いつ倒せるかなんて分かりゃしねぇが……まあ、気長に待つか……」


勿論、出来る事なら今すぐ加勢に行きてぇが、俺様は民間人の避難を優先しねぇと行けねぇ。


いや、それだけじゃねぇな。


俺様の予想では、敵はまだ増える。


そう、考えた時だった。


「ふむ……ここに居る退魔師で1番強いのはお前でありんすね?」


「やっぱり来たか……」


俺様が知る限り、原作ゲームにおいて三官女の居る場所に美乱御前が来なかった事はなかった。


原作ゲーム中盤から登場する三官女だが、最終的には美乱御前までその場にやって来て主人公側が逃げるというのがお約束になっていたレベルで美乱御前が乱入していた。


だからこそ、この場に美乱御前が現れても俺様の想定内って訳だ。


「……わっちとしては、今すぐあの娘等を回収したいでありんすが……まあ、あの娘等が死ぬ心配はなさそうでありんすし、少し遊んでみるでありんす」


「おいおい……いくら俺様と言えど、想定内だからって勝てる訳じゃねぇぜ?」


「何を言っているんでありんすか?」


「こっちの話だ」


こうして、俺様達は牛鬼、三官女だけでなく美乱御前とも戦うことになってしまった。


そして、この後俺様は美乱御前の実力を嫌と言う程思い知る事となるのだった……

ご読了ありがとうございます。


美乱御前、乱入!


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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