18.河濫沱と鵺
しばらく小説を読む方に専念したいけど、そうしたらそうしたでアイデアが降ってくる……
どうすりゃ良いんでしょう……
(河濫沱視点)
ーバリボリ……バリボリ……
「……やはり、キュウリは美味いでござんすな~」
オイラは今日も、河原で1人キュウリを貪っていたでござんす。
と、そこへ……
ーシャン……シャン……シャン……
「……招かれざる客のご来場でござんすか……」
錫杖の音を響かせながら、招かれざる客がやって来たでござんす。
「いやいや、"鵺"を招かれざる客扱いとは……本当に失礼な奴だっピ!」
招かれざる客……"鵺"さんは山伏の格好をした女性の姿をしていて、顔は鵺と書かれた布で隠れていたでござんす。
「そうは言うでござんすが、"鵺"さんは肉弾戦が苦手でござんすからな~。……どうせなら"虎"さんに来て欲しかったでござんすよ」
「生憎、今日は"鵺"だけだっピ!……それより河濫沱、二剛院家を襲撃したって聞いたっピ!」
「ええ、襲撃したでござんすよ?」
「マジかっピ……」
おやおや……
"鵺"さんは頭を抱えて悩み始めたでござんすが、そこまで駄目な事だったでござんしょうか?
「別に、そこまで気にする事ではないと思うでござんすが……」
「気にするっピ!……ただでさえ他の八妖将から動向を監視されてる中、二剛院家を襲撃して1人も殺さなかったとか……最悪、他の八妖将に排除されてもおかしくないっピよ!?」
「その時はその時でござんすよ。……そもそも、全く人を殺そうとしない点では"鵺"さん、"猿"さん、"虎"さん、"狸"さん、"蛇"さんも同じでござんすよね?」
「"鵺"達はまず行動しないから良いんだっピ!」
"鵺"さんはどう聞いても意味不明な論理を立てていたでござんすが……まあ、人を殺したくはないでござんすよな~。
「……で、それを言うために来たんでござんすか?」
「ま、まだ話は終わってないっピ!……河濫沱、本気でこの先どうするつもりだっピ?」
「どうすると言っても……強者と戦い続けるだけでござんすが?」
「……なら、他の八妖将に排除される日は案外近いっピ……」
「ほう……」
確かに、先程もそんな事を言っていたでござんすが……何を根拠にそんな事を……
「……数年前に大豪林主が封印されたって話は流石に聞いてるっピよな?」
「当然でござんすよ」
「その件で少し報告する事があるっピ。……実は、大豪林主の封印場所の近くから血染桜の妖力が検出されたんだっピ」
「つまり、大豪林主は血染桜の支援を受けておいて負けたって事でござんすか?」
そうなると、大豪林主も立場がないでござんすが……
「……いや、血染桜は退魔師側に寝返ってたっピ」
「なるほど……そう来たでござんすか……」
血染桜の寝返り……
恐らく残留妖力から察したんでござんしょうが……これは確かにオイラが排除されてもおかしくないでござんすな。
「他の八妖将は、"鵺"達や河濫沱も退魔師側に寝返るかもしれないと思ってるっピ。……だから、"鵺"は忠告をしにここへ……」
「退魔師側は、どこまでその件を把握しているんでござんすか?」
「……多分、殆んど知らないと思うっピ。……そもそも血染桜は現代の退魔師とは戦っていないっピから、退魔師側が残留妖力から把握するのは無理だっピ」
「ふむ……となると、血染桜が自主的に協力したんでござんすかね?」
退魔師側が知らないとなれば、血染桜が自主的に寝返った事になるでござんす。
……ただ、オイラとしては誰か関わっている気がしないでも……
「とにかく、河濫沱は当分大人しくするっピ!」
「それは難しい相談でござんすな~。……ようやく肉弾戦でオイラの本気を引き出せる相手を見つけたんでござんすから、あのお姉さんとの再戦をするまでは大人しくなんて……」
「再戦は……やっぱり相撲でっピか?」
「当然でござんす!……ああ、オイラは女性が土俵に上がる事は気にしないでござんすから、余計な心配はしなくて良いでござんすよ?」
確かに、本場の相撲は女性が土俵に上がる事を禁じているでござんすが……オイラは相撲が出来ればそれで良いでござんすからな。
「本当にこの相撲馬鹿は……もうちょっと自分の立場を気にした方が良いっピ!」
「……心配してくれるのはありがたいでござんすが、オイラは八妖将の座なんてどうでも良いでござんすからね……」
「うっ……確かに河濫沱と"鵺"達は無理矢理調伏されて使役されてたっピから、武射麿呂には恨みしかないっピが……」
オイラと天五獣君は、他の八妖将と違い無理矢理調伏された過去を持っているでござんす。
だからこそ、武射麿呂に恨みはあれど忠誠心なんぞ持ち合わせていなかったでござんす。
「そういう訳で、オイラはお姉さんを待つでござんすよ。……例え、それがオイラの最期を飾るものになるとしても……」
「そうっピか……」
"鵺"さんもオイラの説得は諦めたらしく、渋々了承してくれたでござんす。
ただ、オイラとしても不安は残ったでござんす。
あのお姉さんが、ちゃんと前よりも成長してくれるかという不安が……
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(一条院 宗雪視点)
「頼むっすよ~!」
「いや……俺様としては、そんな簡単に決めようとするなとしか言えねぇんだが……」
「でも、この中でアタイが付き合いたいと思えるのは宗雪だけなんすよ~!」
「何でそうなる!?」
どうして夏芽が俺様を好きになったのか皆目見当もつかねぇが、俺様は原作ゲームでは悪役でしかねぇ。
例え破滅フラグの大元だった桜を味方に引き込み、沙耶花と空助との仲も良好とはいえ、夏芽に惚れられるのは意味が分からねぇぞ!?
「……やっぱり、宗雪もアタイと付き合うのは嫌っすか?……アタイみたいなゴリラ女は嫌っすか?」
「ゴリラは流石に言い過ぎだろ?……確かに筋力はえげつないが、見た目はかなりの美少女だし……」
「なら、何が不満なんすか?……もしかして、宗雪は一夫一妻主義者だったんすか?……だとしたら申し訳なかったっす……」
「そ、それは……」
この世界では、実力者であれば妻を沢山娶る事が出来るという一夫多妻制度が採用されている。
その中にもたった1人だけを愛する一夫一妻主義者と呼ばれる者も確かに居るには居るが……
……俺様としては、夏芽と付き合うのも悪い気はしねぇんだよな……
「おい、相棒!……オレがせっかく焚き付けてやったんだから、男を見せろよォ?」
「桜……本当にこれで夏芽が強くなれるとでも言うつもりか?」
「ま、何事もやってみねぇとなァ……」
桜、マジで何してくれたんだよ……
まあ、あれが噂に聞く正妻としての余裕ってやつなんだろうが……恋愛フラグがなかった所に無理矢理フラグを立てる奴が居るか!?
普通、ハーレムなんて女性側が損するだけだろ?
……って、前世の世界とは文化が違うんだったな……
「……べ、別に俺様は一夫一妻主義者じゃねぇが……本当に、どうしてこんな俺様を好きに……」
「直感っす!……それに、アタイと付き合う事になるかもしれない状況で、困惑はしても嫌な顔1つしないのが決定打になったっす!」
「夏芽……」
「アタイを恋愛対象として見てくれる時点で、アタイは宗雪を選ぶっす!……というか、そうでもしないとマジで行き遅れるか、無理矢理好きでもない人と結婚させられるかの2択しかないっす……」
夏芽の言葉には、大きな実感が込められていた。
確かに、あの馬鹿力じゃ政略結婚以外で縁談なんて来ねぇだろうし、恋愛対象として見てくれる人と巡り合える確率も低い。
「……ただ、俺様もそんな簡単には……」
「なら、やっぱりデートするっす!」
「ハァ!?」
「それで相性を試して、アタイと付き合うかどうか決めて欲しいっす!」
「夏芽……」
何か知らねぇが、俺様は夏芽とデートする事になっちまった。
と同時に俺様は、夏芽の行動力の高さに感心してしまっていたのだった……
ご読了ありがとうございます。
次回、夏芽とのデートと新たな敵!
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




