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16.夏芽の因縁

新ヒロイン攻略編です。

(一条院 宗雪視点)


入学式の日の放課後……


「さて、それで特訓してぇ理由ってのは何だ?」


俺様は、夏芽の特訓を引き受けるために夏芽と合流していた。


「お、本当にやってくれるんすか!?……いや~、いくら噂と違うとはいえ宗雪が手伝ってくれるとか雨でも降りそうっすね~!」


「……今からでも帰って良いんだぞ?」


「いや、冗談っすよ!……不快だと思ったんなら謝るっすけど……」


「……ふん、俺様も冗談だ」


何というか、何故か手伝ってあげたくなる魅力が夏芽にはあるんだよな……


何でだ?


「お~い、オレ達も居るの分かってんだろォ?」


「夏芽様に負けた身としては、どうしてそれ以上の力を求めるのか理解出来ないのでございますが……」


「僕も同感です。……沙耶花もかなり強い筈なのに、あんな一方的に……」


「いやでも宗雪の言葉を信じるなら、最初の攻撃を避けてれば勝ってた筈なのだ!」


俺様に続くように桜、沙耶花、空助、萌音もやって来た。


……とはいえ、誰かが喋る度に話がどんどん脱線してやがったが……


「話を戻すぞ。……何で、今更特訓しようと思ったんだ?」


「……えっと、ちょっと長い話になるんすけど……」


そうして、夏芽は特訓を求める理由を語り出した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(二剛院 夏芽視点)


「どっこらしょ~っす!」


ードシィィィィィィン!


あれは入学式の6日前、アタイが日課の千本張手(はりて)をしていた時だったっす。


「「「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」


「……この悲鳴、この屋敷の敷地内っすか!?」


突然、屋敷の敷地内から男数人の悲鳴が聞こえて来たっす。


そして、アタイが悲鳴の場所に駆けつけると……


「ふぅ……ん?……女でござんすか……」


「……君は誰っすか?……何で、この家の強者達が軒並み倒れてるんすか?」


アタイの家は、二剛院家の本家で実力者揃いっす。


なのに、そんな一族の強者が殆んどその場に倒れていたっす。


「くっ……」


「私はまだ負けて……」


「俺だって……」


幸いにも、全員目立った怪我は無かったっすけど、結局負けてる事に変わりはなかったっす。


「……君、妖っすか?」


「確かに、オイラは妖でござんすが……まだ、この屋敷でオイラの名を明かす程の実力者には会えていないでござんすな」


倒れてる皆の中心に居たのは、全身は緑色で鱗が生え、指の間には水掻きが、頭には河童の様な皿があり、上半身は裸、下半身は腰簑を着用した……小学校低学年くらいの少年(・・)だったっす。


「……河童系の妖っすかね……人を殺してないなら見逃すっすから、大人しく川で生活を……」


「嫌でござんす」


「いや、そうは言っても……」


「それより、お姉さんは強そうでござんすね~」


「……何が目的っすか?」


その瞬間、目の前に居る河童みたいな少年妖から、何とも言えない雰囲気を感じたっす。


……で、そこから数秒経った頃……


「油断大敵でござんすよ!」


ータッ!


「っ!?」


突然、少年妖がアタイに向かって突撃して来たっす。


「【微水張手(びすいはりて)】でござんす!」


ーブンッ!


「【微水張手(びすいはりて)】っす!」


ーブンッ!


何故か相手も【微水張手(びすいはりて)】を放って来たっすけど、アタイも負けじと【微水張手(びすいはりて)】を放ったっす。


……で、結果は……


ーバシィィィィィィィン!


お互いの掌(てのひら)がぶつかり、轟音が鳴り響いたっす。


でも……


「続けて【微水張手(びすいはりて)】でござんす!」


ーブンッ!


「えっ!?」


「遅いでござんす!」


ードンッ!


「ぐはっ!?」


本来、【微水張手(びすいはりて)】は2発目を放つのにそこそこ時間がかかる筈っす。


なのに、目の前の少年妖は瞬時に2発目を放って来たっす。


「ふぅ……やっぱり、耐えたでござんすか……」


「ハァ……ハァ……咄嗟に全身の筋肉を固めたっす!」


マズかったっす……


目の前の少年妖は、多分かなり強かったっす。


実際、アタイですら筋肉を固めるのが遅かったら負けてたくらいには……


「さあ、行くでござんすよ!……【微水張手(びすいはりて)】でござんす!」


ーブンッ!


「【微水張手(びすいはりて)】っす!」


ーブンッ!……バシィィィィィィィン!


またもや轟音が鳴り響いたっす。


でも、その直後……


「続けて【微水張手(びすいはりて)】でござんす!」


ーブンッ!


「ここは……避けるっす!」


ースカッ……


「んなっ!?」


【微水張手(びすいはりて)】は威力こそ高いっすけど、その分動きが大振りになるっす。


そして何度か相手の動きを観察したアタイは、敵の攻撃タイミングを完璧に理解したっす。


「さて……隙だらけっすよ!」


「むう!?」


【微水張手(びすいはりて)】はまだギリギリ放てないっすけど、この状況なら……


「蹴りで充分っす!」


ーブンッ!……ドゴッ!


「うがっ!?」


アタイの回し蹴りが、少年妖の後頭部にクリーンヒットしたっす。


そうして、完全に体勢を崩した少年妖に対してアタイは……


「【微水張手(びすいはりて)】っす!」


ーブンッ!……ドシンッ!


「ぐがっ!?」


ーザザザッ……


【微水張手(びすいはりて)】が完全に相手の芯を捉え、クリーンヒットした感触が伝わったっす。


でも……


「ふっ……ふふ……ぶわっはっはぁぁぁぁぁぁ!」


「っ!?……な、何で笑ってるんすか!?」


アタイの【微水張手(びすいはりて)】を食らった筈の少年妖は、まるで平気かの様に高笑いを始めたっす。

 

「これでござんす!……これなら、オイラの本気を受け止めてくれるかもしれないでござんす!」


「な、何を言ってるっすか!?」


不気味に笑う少年妖を相手に、アタイが警戒していると……


「……オイラの本気、見せるでござんす!」


ーぴちゃぴちゃぴちゃ……


「ん?……水っすか!?」


突然、少年妖の周囲に水が現れ始めたっす。


ーぴちゃぴちゃ……ざぶざぶざぶ……


「水ある所に命あり……命ある所に営みあり……勝利納める大一番……そんなオイラは水虎(・・) 河濫沱(・・・)!」


「……えぇ!?」


その少年妖は、水虎 河濫沱と名乗ったっす。


その名は、間違いなく八妖将の一角だった筈っす。


「オイラの本気、受け止めるでござんす!」


ードバァァァァァァ!


「ま、マジっすか……」


大量の水を纏った河濫沱は、その体を河童と熊を掛け合わせた様な肉体に虎の模様が刻まれた姿になり、腰簑も横綱が着ける"まわし"になってたっす。


「ふぅぅぅぅ~……【激流張手(げきりゅうはりて)】でござんす!」


ーブンッ……ドバァァァァァァ!


「び、【微水張手(びすいはりて)】っす!」


ーブンッ!


そうして河濫沱の放った【激流張手(げきりゅうはりて)】と、アタイの放った【微水張手(びすいはりて)】がぶつかったっす。


その結果は……


「弱いでござんす!」


ードシィィィィン!


「ごはっ!?」


ードンッ!……ザザザッ……


……アタイは、為す術なく吹き飛ばされたっす。


「……結局、お姉さんでも駄目だったでござんすか」


「ま、待つっす……まだ……アタイは……」


「見れば分かるでござんす。……お姉さんはもう、戦えないでござんす」


悔しかったっすけど、河濫沱の言葉はもっともだったっす。


「……でも……ここの皆は殺させないっす……」


「そこは心配しなくても良いでござんす。……こう見えてオイラ、人を殺すつもりはないでござんす故」


「え?」


「じゃ、戦いたくなったら吾苦盧(あくろ)橋の近くまで来て欲しいでござんす」


その言葉を最後に、河濫沱は二剛院家を立ち去ったっす。


そして残ったのは、アタイを含め地に伏した二剛院家の強者達だけだったっす……



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(一条院 宗雪視点)


「……ってな事があったんすけど……」


「そうか」


「河濫沱……変わらねぇなァ……」


「「「…………」」」


夏芽の回想を聞き終え、俺様は静かに頷き、桜はボソッと懐かしむかの様な言葉を喋り、沙耶花と空助と萌音は絶句していた。


「……よし、それじゃあ河濫沱に勝てる様に特訓するか……」


「オレも疲れねぇ程度に付き合うぜ?」


「……お待ちください、どうして平静を保たれて……」


「僕も同感です!」


「萌音もなのだ!」


沙耶花と空助と萌音は置いてけぼりだったが、俺様と桜は夏芽の特訓に乗り気だった。


だが、この特訓が想定外の方向に行くとは……この時の俺様は知る由もなかったのだった……

ご読了ありがとうございます。


新たな八妖将、水虎の河濫沱は殺しを良しとしないタイプです。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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