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明晰夢を見る方法

作者: 索☆創

冬の童話祭り2024参加作品。

(子供さんレベルのうんち、おしっこが苦手な方はご注意ください)

「めいせきむ?」

 クラスメイトの輪の中に入ったタスクくんは、聞こえてきた言葉にクエスチョンマークを付けました。


「なんだ、タスク。知らないのかよ。明晰夢(めいせきむ)っていうのはなぁ」

 ここぞ、とばかり。

 はりきってマウントをとる=自分が上だとわからせようとするクロツグくんが、得意気(とくいげ)=知っていることを自慢するように話し、始めます。


 近くの委員長とツキコさんが顔をしかめているのに気づかずに。

 あからさま=相手の気持ちを考えずに自分のしたいようにマウントをとるのは、嫌われる原因になるので気をつけましょう。


 さて、話は戻りまして明晰夢です。


 クロツグが長々の長と説明してくれた内容をまとめると、どうやら夢の中で、これは夢だとわかっちゃうのをそう呼ぶそうです。


 そんな事をしてどうするの? と思ったあなた。

 想像してみて下さい。

 夢の中なのです。


 欲しかったおもちゃも出し放題。

 美味しいお菓子も食べ放題。

 もしかしたら、空だって飛べちゃうかもしれません。


「よし!」

 いいことを聞いた。

 フンス! と鼻息荒いタスクくんは、夢に入る気満々です。


 。o ○


「お兄ちゃん、何してるの~」

 学校から帰ってきたとたん、結跏趺坐(けっかふざ)=足の裏を上にするあぐらをかいて、両膝の上で、OKのハンドサインをして目をつむったタスクくんに妹のユウカちゃんが、興味津々です。


 ちなみにお母さんは「また変なこと始めて」と呆れ顔です。

 今夜の夜中に起こる悲劇を知るよしもありません。予知能力者ではないので。


「なになになになに、なにしてるの~」

 ペタペタ、ベタベタ、ぺちぺち、べちべち。

 タスクくんが動かないのをいいことに、ユウカちゃんはやりたい放題です。


 ここは無視より、相手をするか。


 ぱちりと目を開けるタスクくん。


 危ないところでした。


 ユウカちゃんの手にはデラックス(日曜朝の)王者カリバーン(変身アイテム)が握られていたのでした。


 。o ○


「めいせきむ~?」

 さすがは兄妹です。

 タスクくんと同じようなセリフでユウカちゃんが首をかしげます。

 斯々然々(かくかくしかじか)はとても便利な言葉です。

 “このように”をこれでもかっ! と強調したこの言葉を書くだけで、これまでの出来事を説明した事になるので。


「はー。食べ放題」

 ジュルりと。ユウカちゃんの舌が(くちびる)をペロリと一周しました。

 どうやら好きな人とのデートや、憧れのアイドルに会うのには興味が無い御様子です。


「・・・」

 ちょっと。ちょっとだけ妹の将来が心配なタスクくんでした。


 。o ○


「ユウカ、同じ夢を見る方法知ってるよ!」

 えっへん! と妹が兄の前で胸をはりました。


 明晰夢を見るのには、瞑想(めいそう)=学校から帰ってきたタスクくんが見よう見まねでやったやつをしたり、早めに起きてうすーく意識を保ったり、寝に寝に寝まくって脳みそがもう寝られないよーとなるまで寝るなど、たくさんの手段がありますがその中の一つに “同じ夢を見る” 方法があります。

 たとえば手のひらを見る夢が必ず見られるようになれば、寝る前になんか書いて、それが無いと「これは夢だ」と気づけるようになったり、同じ場所に行く夢を見られるようにすれば、そこに何か置いて、それが無いことでやはり夢だとわかるのです。


「え? ホントに~」

「ホントだもん!」

 斯々然々。・・・本当に便利な言葉です。


 。o ○


「ン。あれ? あれあれ? あれ~?」

 タスクくんは気づきました。

 寝る前に、とあるところに置いた羊のぬいぐるみがないことに。


「つまり、これは夢!」

 そう思った瞬間、世界が切り替わります。


 タスクくんをせまく閉じ込めていた壁は無くなり、家族旅行で一回だけ行った高級ホテルのロビーにくるりと切り替わりました。


「うわー、ふっかふか」

 思わず足元の絨毯(じゅうたん)を手でなぞります。

 ・・・行った時には人目を気にしてできなかったので。


「よっ! ほっ! は!」

 ロビーのソファーで跳び箱なんか、もってのほかです。


 。o ○


「かーめーはー・・・」


 タスクくんが腰だめにした両手をつき出すと、ごんぶとの光線が発射されました。


「うーん。コレジャナイ」

 夢の必殺技が撃てたのに彼の顔はくもったまま。

 なくしたおもちゃを出したり、もう売ってないお菓子を食べたり、空を飛んだりしても、何か忘れている感じが消えません。


「なんだろう? とっても重要なことだったような?」

 そんなタスクくんのほっぺたにポツリと。

 小さなしずくが落ちました。


「?」

 夢の中の空は快晴です。

 雲一つありません。

 たとえ、どんより雲が近づいても。


「かーめーはー・・・」

 消し飛ばしてしまえばいいのです。


 ポツリ、ポツリ、ポツポツ、ポポポポポ。


 それなのにほっぺたに当たる感触は消えません。


 そして─── 


「あれ? ユウカ?」


 地平線の彼方からぐんぐんとせまる少女が一人。


 あっという間にそばにきた妹の第一声は───


「お兄ちゃん! おしっこ!」


───だったりしたのでした。


 。o ○


 はっ!?


 ガバッ! とタスクくんが上半身を起こしたのは二段ベッドの下側です。


 ぽたぽた。


 夢からさめても聞こえてくる、いや枕元に落ちてくる、しずくはもしや・・・。


 !


 それどころではありません!


 タスクくんが駆け込んだトイレの中。


 正面に座っていたのは、タキシードをきた羊の執事のぬいぐるみ。


 明晰夢を見る方法。


 同じような夢を必ず見る方法。


 それは・・・。

作中ぼかした方法をズバリ書いちゃうと、自分が体験した明晰夢を見る方法は「寝る前に水分を取りまくってトイレに目印を置く」です。

トイレで「これは夢じゃないか?」と思う習慣をつけると成功率が上がるかもしれません。

同時に尿意も思い出しちゃうと夢の中にいられる時間は短いですが・・・。


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― 新着の感想 ―
[一言] 楽しく読ませていただきました! 夢か現実かわからない感じもいいかなぁなんて思ったりもします。
2024/01/16 12:25 退会済み
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