第7話_剣術
しばらくの間、多くの魔法を教えた
火の他にも水や風、土魔法基本的な魔法については
だいたい教え終わったところだろうか
もともと、日常的に魔法を使用していたせいか、
覚えるのにそれほど時間は掛からなかった
とは言っても自分の魔力を変換して違う物質を作り
出すのは中々難しい
簡単な手法としては実際に存在している物を流用する
ことだが、仮に無かった場合は自分で作り出さなくて
はならない
それが魔力物質変換である
火魔法であれば体内の魔力を火を構成する物質に変換
することで発動することができる
大抵の人間はどういうふうに火が発生するかを理解
していないため、覚えるのが困難なのである
また、それだけ難しい操作をしなけらばならないため、
威力もそこまで大きくはならない
しかし、ステラに限っては魔力と気力の両方を扱う
ことができるのと、持っている力の総量が常人とは
比べ物にならないため、魔力物質変換で作り出した
物の方が高密度で威力が高いものとなっていた
魔法の理解についてもマクスウェルの英才教育の
おかげでほとんどのことは体に覚えさせられている
「後は基本的な魔法を使って応用することができる
ようになれば、完璧じゃな」
教えればなんでも吸収するし、自分の知らない
オリジナルの魔法を作って見せてくれる
ステラにはいつも楽しまされるが魔法は奥が深い
ステラはまだまだ発展途上のため今後が凄く楽しみだ
それに加え魔法ばかりだけではなく、剣術も教える
ことにした
おそらくステラには剣術とか武術とかの才能もある
だろう
もはや日常的に魔気力を使い、意識せずに身体強化を
しながら生活していたり、
物体強化をさも当然と言わんばかりに使っていたりと
下準備はすでに済んでいる
マクスウェルは気力の操作があまり得意でなかった
ため、剣術については素人だが、今までの人生のなか
で多くの人と出会い、剣術を目の当たりにしてきた彼
はそれなりに教えることが可能だ
庭で魔法の修行をしていたステラに声をかける
「ステラよ、今日からはこれを使ってわしと
遊ぶのじゃ」
ステラの身長と同じくらいの長さはあるだろう木刀
を渡した
マクスウェル特性の木刀だ
木から削りだし、それを圧縮させたり強度を上げたり
様々な工程をへて
作り出された木刀はキラキラと光っていた
「わぁ、きれい!おししょうさまあそんでくれるの?」
いつもは傍らで眺めているだけだったが、一緒に
遊んでくれるという彼にステラは凄く嬉しそうに
している
「わしもたまには体を動かさないとなまってしまう
からの
その木刀を使ってわしに打ち込んでくるのじゃ」
少し距離をとり、木刀を左手にステラと体面に構える
だが、そういってしまった自分を後に恨むこととなる
少しでも強化魔法を使っておけばよかったことと
ステラの実力を測りかねていたのが問題だった
ステラは木刀を何回かぶんぶんと振った
何かを確かめるように
「うん、わかった、いっくよー!」
と、グッと体に力を込めるのが遠巻きにでもわかる
そして、目の前からフッと少女は消えた
次の瞬間
少女はもう彼の目の前で木刀を横に一閃している
そこからは走馬灯を見ているかのように時が
スローモーションとなった
彼は身動きの一つもとれない
そして、ついに木刀と木刀がぶつかりあった
バキィィィィン!
空気が振動し、甲高い音が辺り一体に広がる
彼が持っていた木刀はすさまじい衝撃とともに真ん中
から折られ、指の強度が耐えきれず手から柄の部分も
離れていった
彼は木刀のみならず、掴んでいた指さえもバキバキに
折られたのだった
マクスウェルは地面に膝をつき、ビリビリとしびれが
残る左手を見ながら
「手が、手がぁあ!」
と悶絶した
指は全てあらぬ方向へと向いていた
うぐぐぐ
体を振るわせながら急いで回復魔法をかける
指は次第にもとに戻り始めるが、衝撃のしびれがある
せいかなかなか戻しきれなかった
そんな目の前でうずくまる老人を、ステラはきょとん
とした顔で見ていた
・・・・・・・・
「おししょうさま?だいじょうぶ?」
なんでも知ってるし、凄く強いと思っている
おししょうさまがなんでうずくまっているのか
理解できない
「おおう、ステラよ、大丈夫じゃ、
しばらく待っておれ
悪いが少し一人で遊んでて良いぞ」
そういって一人で遊ぶように促した
ステラは木刀をぶんぶん振り回しながら駆けていった
(うぐぐぐ、ここまで成長しているとはの
身体能力に差がありすぎるわい)
ステラは遠くで木刀をぶんぶんと振り回しているが、
マクスウェルからは少女が振る剣先が全く見えない
それどころか振るびに空気が切られ、少しだが
ウィンドカッターが発動しているように見える
「殺傷能力抜群だの・・・・」
指は元通りに戻ったが、今のままでは到底ステラの
相手をすることはできなさそうであった
立ち上がり少女に近づいて行く
そして
「ステラよ、今日は素振りの練習からしようかの」
彼はまず素振りをさせ、それを間近で見ることで目
を木刀の振るスピードに慣れさせようと考えた
「きょうはもうあそんでくれないの?」
少し寂しそうな顔で眉根を寄せて聞いてくる
「木刀も折れてしまったし、だいぶ体がなまって
しまっているようだからの少し慣らしてからに
してもよいかの」
「うーん、こんどはちゃんとあそんでね」
まだ少し納得はしていないステラ、よほど一緒に遊び
たかったらしい
流石にここしばらく運動も何もしていなかったため、
体がなまっていたのは嘘ではない
彼は素振りのやり方を手ほどきしてから、その隣で
新な木刀作成を始める
次に作る木刀はさらに強化して折られないようにする
ことと、隣で素振りをするステラのスピードになれる
ことを念頭においた
それから数日は少女ともに素振りをし、体をほぐす
ことにも務めた
一緒に魔法を練習し、剣術を練習し、汗を流したら
風呂に入り、ご飯を食べる
ここ最近ではやることが増えてきたのでかなり充実
した毎日となっていた
そして彼のステラ対策は全て完了した
今では目が慣れ、振られた木刀がきちんと見えている
(これなら・・・・いける)
「よし!、そろそろ、一番最初にやったようにわしに
打ち込んでくるのじゃ」
隣で木刀を振っていたステラはこちらを見て嬉しそう
にしていた
今度は前と違って距離を少し短めにした
踏み込んで加速させないようにするための対策だ
少女と体面に木刀を構える
身体と木刀を可能な限り魔法で強化し、準備は万端だ
「それじゃあ、いっくよー!」
そういうと、ステラは勢い良く木刀を振り下してくる
木刀は音もなく彼に近づいてくる
(見える!、見えるぞ!、今回は返せる)
その振り下された木刀に彼は横からはじくように自分
の木刀を一閃する
バキィィィィン!
二人の木刀はぶつかり合い、甲高い音が周囲に広がり、
びりびりと大気が振動する
そして、今度は彼の木刀も指も折られてはいなかった
あまりの衝撃に手が少し痺れてはいるものの対応でき
ないわけではない
続けざまに少女は何度も木刀を振った
高速で振られてくる斬撃の全てを彼はなんとかうち
払う
バキンッ、バキンッ!
と何度も何度も激しい打ち合いが繰り広げられた
が
5分程度が経過したところで、彼は根を上げた
手が痺れて感覚が無くなったことと、魔力が尽き果て
ようとしていたからだ
わずか5分でマクスウェルの膨大な魔力は無くなろう
としていた
そのくらいの強化魔法でようやくステラと互角の勝負
ができる
「ステラ!待つのじゃ!」
少女に待ったを駆ける
振り下した木刀は彼にぶつかる直前で何とか静止
された
「今日はこのぐらいにするのじゃ、わしの体がもたん」
「えー、まだはじまってすこししかたってないよー」
プクーッと頬を膨らませて文句をいう
こういう顔をするのはめったにない
それほどこの5分間が楽しすぎたのだ
「流石にこの年だと辛いのじゃ、毎日今くらいの
打ち合いにしよう」
ステラもまだまだ遊びたい年頃、わがままだって
いっぱい言っていい年頃だろう
だからこそであろう、少しぐずってしまう
目からはもっと遊んで欲しいと涙がでてしまう
そんなステラを苦笑いしながら、頭を撫で
「すまんのぉ」
と宥めるしかないのであった
しかし、必ず毎日打ち合い稽古を約束することで
なんとか宥めることには成功した
ステラはもっともっと強くなるだろう
しばらくしたら自分なんて相手にもならなくなる
だろうし今はまだ木刀を使っての打ち合いだ
ここに元々得意な魔法も織り込ませていったら手も
付けられなくなるだろう
そんなことを思いつつ、今後どうしていくかを
マクスウェルは考えていた
それからもステラの修行(遊び)は毎日続いた
木刀の扱いにもかなり慣れてきて、型もしっかりと
してきた
(そろそろ頃合いかのぉ)
彼は次のステップとして考えていたことを実行に移す
『実戦』だ