第6話_魔法
ステラはすくすくと成長していた
身長もだいぶ伸びてきており、赤い目もきりっと凛
としてきた
背は100cmは超えただろうか
今日は久々の散髪、流石に前髪がうっとうしそう
だったので朝から髪の毛を切っている
髪はたまに切り揃えてやっているが、腰ぐらいまでは
伸びている
それはマクスウェルは短髪よりも長髪の方が好み
だったからだ
ただただ好き嫌いの話である
しかし、その髪の毛を切ることがとても大変だった
魔力と気力どちらも内包できるようになってしまった
その体から生えた髪の毛は毛先が淡い赤色に変色して
いる
どういう原理かはわからないが、毛先は少し熱量を
帯びているように感じていた
そのせいで、色が少し違うのかもしれない
そして刃を通そうとしても、刃の方が刃零れして
しまい簡単には切らせてくれない
しかし、触ってみると硬い分けではなくさらさらと
やわらかい毛をしている
だが切ることは容易ではない
刃に魔法をかけ強化することでなんとか切れる状態だ
マクスウェルはそんな毛に興味をもったのか、次第
に髪の毛を切るたびに毛を集めた
「よし、これで良いのじゃ」
ステラは椅子から飛び降りて
「おししょうさま、ありがとう!」
とお礼をいい、外に駆け出していく
マクスウェルは床に散らばった毛を集め、袋の中に
集めた
ステラはというと、外で頭をぶんぶんと振り回し、
切られて残った毛の残骸を振り落としていた
(まるで犬じゃな)
そんな光景を笑いながら見つめる
ステラも時に5歳となった
修行を続けて早3年、驚かされたり、死にかけたり、
いろんな出来事があった
今では、毎日魔力と気力を増加させることに念頭を
おいているがそろそろ次の段階に進んでも良いころだ
と考えている
(なにから教えようかのぉ)
いつも通り顎に手を当てながらマクスウェルは思案
する
魔法か、剣術か、格闘術か、教えることはまだまだ
あるなぁと
マクスウェルももはや老人、いつ死んでもおかしく
はない
ステラにはこの世界で生きていくための術を早いうち
に叩き込んでおきたい
(と、考えるとやはり魔法からかの)
そう考えをまとめながら、部屋の掃除をしていくの
だった
そして教えることをまとめるために数日が立ち、
ステラの新しい修行は始まる
「今日から魔法の修行を始めるのじゃ」
朝食を取りつつ、向かいの席に座っているステラに
そういうと
ステラはきょとんとした顔から一気に満面の笑みと
変わっていく
ガタンッ!と席を立ち上がり、
「いいの?!、やったぁ!」
と喜んでいる
よほど魔法を使ってみたかったらしい
「まずはご飯を食べてからじゃ」
はしゃぐステラを窘めつつ、二人は朝食をとった
二人は広い草原に立っている
昔、マクスウェルが爆発を引き起こし、ステラが誕生
してきた場所だ
今では爆発前の状態にすっかりと元通りになっている
できてしまったクレーターはマクスウェルが埋め直し、
そこに草木を生やすことでようやく元通りとなった
「まずは空間魔法から教えるかの」
「くうかんまほう?ひとかみずとかじゃないの?」
「そうじゃ、魔法というのはこの世界の理の上で成り
立っているのじゃ
魔力がなければ魔法は使えない、魔法の仕組みを
知っていなければ魔法は使えないのじゃ
その魔法の仕組みについての大前提にあるのが
空間魔法なのじゃ」
「それができないとまほうはつかえないの?」
「そうじゃ、じゃから凄く大切なことなのじゃぞ」
「わかった!おししょうさま!」
ステラは良い返事を返した
「まずは、空間を自在に操れるになることが重要じゃ、
よく見ているのじゃぞ」
左手を前にだし、魔力をゆっくりと放出していく
そして、目の前の空間を縮めたり、伸ばしたりして
見せた
「おおお」
ステラは目を見開きよくその現象を観察している
「この伸縮ができるかで他の魔法を使った時に差が
生まれてくるのじゃ
どうじゃやれそうか?」
「やってみる!」
ステラも同様に手を翳す
そして魔力と気力、魔気力が手から目の前の空間に
放出されていく
次第に目の前の空間に歪みが生じ始めた
ぐにぐに、空間をいじっている
「こんなかんじ?」
「良いかんじじゃ、今日からは今やっていることを
もっと自在に操れるように、体にどんどん覚えさせ
ていくのじゃ」
「はい、おししょうさま!」
ステラに新しい遊びが増えた
それから毎日、空間をいじって遊んでいたがそれは
どんどんエスカレートしていく
もはや空間をいじるのに飽きたのか、木や土、岩を
圧縮したり伸ばしたりして遊んでいる
そしてついには
「おししょうさま、みてみて、そらにおえかきできる
ようになったよ!」
とステラは空を指さす、
そこには白い線で鳥等の動物が描かれていた
それをみてマクスウェルは唖然とするしかなかった
「なん、じゃ、これは」
「こうするの!」
とステラは手を空に翳して、雲を操り始める
雲を細くして伸ばしたり、ちぎったりして、空に絵を
書いていくのを実際に見させられた
「すげー・・・・」
「どう?上手に描けた?}
ステラは操っていることよりも絵の上手さの方が
気がかりらしい
「すごいのじゃ、うまい、うまい」
(いやいや、そもそもあんな上空まで魔力は飛ばす
ことなんてできないのじゃ
途中で霧散してしまうから、相当の魔力が必要な
はず・・・・・
あ、でもステラの場合は魔気力だから魔力自体が
気力で守られるからあそこまで届くのかの)
「えへへー」
ステラは自慢げな顔だ
雲をぐにぐにといじって遊ぶのは凄く楽しいらしい
ステラは空という大きなキャンバスを手に入れたのだ
それからしばらくして
マクスウェルが夕飯の準備をしている時だった
ドオオオオオオンッ!
と近くで爆発が起きた
一瞬体がビクッっとして急いで外へと駆け出す
「何事じゃ!!」
するとそこにはびしょ濡れになったステラの姿と
まっぷたつに割れて燃えている木があった
そんなずぶ濡れの少女はおそるおそるとこちらを
振り返って見てくる
やばい!見つかった、というような子供のしぐさだ
「あ、おししょうさま・・・てへっ」
やっちゃった、みたいな苦笑いをしてくる
その状況をみてなんとなく察して空を見上げた
そこには一か所だけ黒い渦を巻いている雲がある
おそらく雷を落としたのだろう
「はぁ~、お主はまったく、とりあえずお風呂に
入ってくるのじゃ
あと、あんまりこういうことはやらないようにする
のじゃ」
上空を指さし、注意した
彼があまり怒ることはない
本当に危険なときだけ、少し強めにいうくらいだ
それをステラはなんとなく感じとっているようだった
「ごめんなさい・・・」
とぼとぼとお風呂場へ向かうステラ
「あ、ステラよ」
マクスウェルはステラを呼び止め前で膝をつき頭を
撫でた
「そこまで落ち込むことはない、やってはいけない
ことだがステラが凄いことには変わりはないのじゃ、
よく頑張ったの」
しょんぼりしていた顔が嬉しそうな顔へと変わり、
抱きついてくる
「よし、よし」
師匠と弟子、親と子の関係
だがあまり怒らないのもだめかと、思いつつも怒る
ことに慣れていないマクスウェルなのであった
季節は冬となりちらほらと雪が降り始める
そんな肌寒くなってきた頃合いにステラには新しく
火魔法を教えた
寒い季節にはやはり火を起こして暖まるのが良い
じゃろうと凄く安直な考えである
まぁ、ステラの場合魔気力で常日頃から体全体を
覆っているため寒さとかあまり関係ないのかもしれ
ないが・・・
火魔法を覚えるまでに対して時間は掛からなかった
もともと水をお湯にすることはできていたし、暖炉に
火を付けることも
当然のようにしていたからである
そんな彼女は外に出ては体の周りに炎を出しながら、
走ったりぐるぐる回ったり、何かを焼いてみたり
いろいろ楽しんでいた
おかげで家の周りに雪が積もることは一切なかった
ステラが遊ぶついでにどんどん雪を溶かしてしまう
からだ
一家に一台、素晴らしい除雪道具の誕生である
「そこに空間魔法も足すともっと楽しくなるぞ」
「あ!、そっか!」
その遊ぶ姿を見ながら、時おり助言を足していく
すると、散らばっていた火をかき集め球状に変化
させていく
その球をステラはまじまじと見つめ、何を思ったのか
それを・・・・・投げた
一本の木に球は命中する
ボゥ!
と表面だけを焦がして消える
やはり球は投げるものだ
そこに球があったら投げたくなるのが本能であろう
火の球を作れるようになったステラは、投げて遊んだ
りお手球を始めたり、と遊びかたのバリエーションが
どんどん増えていく
そしてとある日の夜
「みてみてー、おししょうさま」
ステラは庭へと走り出し、上空へと火の球を放った
その球は天高く掛け上げっていき、やがて雲まで到達
しただろうか
そこで
バァアアアアン!
と球が弾け飛び、いくつもの火の粉がさらに大きな
球状になって広がった
ステラ特性の花火だった
「おおおお、これはなんとも、綺麗じゃな」
「えへへー、すごいでしょ!」
何度も何度も火の球を打ち上げ、空には地面が明るく
なるほどの花火が
真っ暗な夜に咲きほこった
寒い冬の夜
二人しかいないが、マクスウェルにとっては凄く幸せ
な一時を謳歌していた