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Planet Salvation ~一人の少女が世界を救う物語~  作者: YOU
第3章_初めての町編
43/47

第43_やらかし


アンナはいつも通りにカウンターで受付をしていた

今日はステラ達が初めて訓練に来ているからか少し

気になってそわそわしている


それにそんな面白い子達に目を付けたバジル―ルが

教官というのも不安要素の一つではあった


「大丈夫かなぁー

 心配だなぁー」


カウンターで一人つぶやくお姉さん

そんな時だった


ズドォオオオオオン!!


ギルド全体が大きく揺れ地面がぐらつき、天上からは

崩れたがれきが落下してきた


うぉ!なんだこれ!


キャアアアアア!


そこら中から悲鳴だったり大きな声が飛び交う


一瞬の出来事にアンナも惚けていたが急いで、

避難誘導へと走っていった




地下室の訓練場では大多数の人が転がり気絶していた

立っていたのは私とルナ、セレーネ、ガインの4人

だけだった


セレーネは急いで防御魔法を使ったらしく、ガインは

持前の頑丈さで耐えきったようだ


「な、なんだ、何が起こった・・・」


もわもわと部屋中に霧が立ち込め状況把握ができない


そんな中てくてくとルナが私に近づいてくる


「ねぇ、ルナ・・・

 これってまずいと思う?」


転がっている訓練生達

おそらく死んでいる人はいないとは思うが、負傷者は

いるかもしれない


「まずいでしょうね、間違いなく」


「だよねぇー」


私は失念していた

超高温の物体が水にぶつかった時にどうなるのかを

そう、水蒸気爆発だ


「はぁー、どうしよ」


「今回は主様が自重する番でしたね」


「ほんっとにね・・・

 私もルナのこと怒れないなぁ」


とても気が重い

壁には至るところにヒビが入り、天上は崩れ

かけている

この分だと上の階もどうなっているかわからない


「とりあえず霧を晴らそうか」


部屋全体の霧を圧縮して水に戻すと、元々はセレーネ

の魔力だからだろうか、霧散し消えてなくなった


霧が一気に無くなって驚いているセレーネとガインは

私達が無事だと知ってかこちらに駆け寄ってくる


「大丈夫!?ケガはない?」


セレーネも先ほどまではおっとりとした雰囲気を

していたが、状況が状況だけに焦りが隠せない


「ひとまず怪我人を上の階に運ぼう

 セレーネは助けを呼んできてくれ」


「わかったわ」



何人かの職員が降りてきて、大勢の怪我人を外へと

連れ出していく

私たちもそれに習って手伝いをした


上の階に上がるとこちらも中々酷い状態となっていた

地下よりは遥かにマシだが、それでも壁が崩れたり

ヒビ割れは多少あるようだ



それから時間は掛かったが建物内の全員を外へと

避難させることが終わった


「それで、何があったのかしら?」


アンナがガインとセレーネに説明を求めている

バジル―ルは爆発と一緒に気絶してしまって、未だに

目が覚めてはいない

他の訓練生も気絶はしているものの目立ってケガを

している人はいなさそうだ


「ごめんなさい・・・

 私がやりました」


私はアンナへと潔く出向き頭を下げた

これまで誰かに謝ったことは余りない

あってもお師匠様ぐらいだろうか

だけど、今回は私が圧倒的に悪いことぐらいは

わかっているつもりだ、ことの重大さも


「え、え、どういうこと?」


アンナは私の泣きそうな顔とセレーネの顔を交互に

見ながら驚いている


「いいえ、あなたが悪いわけではないわ

 あなたの実力を把握できなったこちらも悪いし

 すぐに対処する実力が無かった私も悪いもの」


いや、あの爆発を回避するのは私でも無理だろう

あるとすれば私が途中で魔法を消す以外は無かった

と思う


「ごめんなさい」


そう謝る私の頭を珍しくルナが撫でてくる

そうすると小声で


「主様だってたまには失敗の一つや二つありますよ

 気にしないでください」


その言葉がさらに辛くて、余計に涙が出てくる

気にしないわけがない



それからセレーネがギルド職員全員にことの顛末を

説明した

職員全員は私の方へと顔を向ける


「確かに、それは予想できない自体では・・・あるな」


「とりあえずギルマスが明日には戻るはずだ

 それから考えるってことでいいんじゃないか」


「そうですね、今日は建物が危険なので閉じるしか

 ありませんが

 扉に張り紙でも貼っておきますか」


「それと修理するには職人が何人か必要だな

 こちらであたってみるとしよう」


「怪我人は目を冷ますまでこちらで様子を見ておくよ」


各々職員が今後どうするかの対策を決め、

とりあえず今日は解散の流れとなった


「あなた達もとりあえず今日は帰って休んで

 ただ、明日ギルマスが戻るみたいだから、

 来てもうことにはなるけど」


アンナさんは優しく私達に語りかけてくれる

怒るわけでもなく・・・

それがやっぱり心ぐるしかった




「なんだい、あんたたち戻ってくるのがだいぶ早いね」


宿に戻るとちょうどマーサさんに出くわした


「なーんだい、泣いてるじゃないか

 何かあったのかい?」


「やらかしました・・・」


ことの顛末をマーサさんに話すとマーサさんは

ホットミルクを出してくれた


「そうかい、でも悪気があってやったわけじゃ

 ないんだろう?

 それに自分が一番に悪いと思って謝った

 偉いじゃないか」


「でも、たくさんの人に迷惑をかけました」


「そりゃあそうかもしれないね

 でもあんたたちはまだまだ子供だよ

 子供の失敗を見守るのも大人の勤めさね

 それにあんたの場合、碌に失敗もしてこなかった

 んだろう?

 こういうところで学ぶのも成長の一つだよ」


マーサさんの言葉は暖かかった

さらにホットミルクの暖かさが心に染みる


「でも、でも・・・」


「子供はね、元気な姿を見せ続けるのが仕事なんだ

 大人はそれを守るのが仕事なんだよ

 今日だって怒ってきたやつはいなかったんだろう?

 皆わかってるんだ」


「でも・・・

 それが逆に辛いです」


「そうだね、それならまた明日皆に謝ってきな

 謝れていない人がいる、それが胸のつかえに

 なっているかもしれない

 そこまでやってまだ納得行かないようだったら

 またあたしのところにきな

 こういうことしかしてあげられないんだ

 喜んで話ぐらい聞いてやるよ」


ルナもずっと黙ったまま背中をさすってくれた

だからこそ皆の暖かさが涙となってしまうのだった



何時間立ってもやっぱり気は晴れず、ベッドに横に

なっても眠れない

そんないつもと違う私にルナもどうしていいか

わからないようで


「あ、主様・・・」


「ルナ、こっちに入って」


「いいんですか?」


「早く!」


同じベッドで反対になって横になる

私もなんでこんなことを言ったのかよくわからない

ただただぬくもりが欲しかっただけなのかな


「抱きしめて」


「はい」


回された手を握りしめる

やわらかくて暖かい


「明日、一緒に謝りに行ってくれる?」


「もちろんです」


「ルナがいてくれてホントに良かった」


「ルナはずっと一緒にいますよ」


こういう時に一人じゃないのは本当にありがたかった

一人だったら気に病んで、何もせずこの町を離れて

いたかもしれない


「ありがとう」




次の日になって、私たちはボロボロになったギルドに

向かった

マーサさんからは


「あたしもついていくかい?」


と言われたが流石に断った

今回のことは私の責任だ


未だに入口には貼り紙が貼られいて一般の人たち

は入ることができないようになっている

そんな扉を開くと部屋の真ん中では職員が集まり

会議をしているようだった


扉を開ける音に気づいたアンナさんが私たちを

出迎えてくれる


「ステラちゃん、ごめんねー

 また来てもらっちゃって」


「いいえ、構いません」


「そんな硬くならないで

 今ギルマスとも話をしていたの」


「アンナ、そいつらか?」


そこに大柄な筋肉だけでできていそうな白髪の男

が入ってきた

この人がギルドマスターっていう人かな


「はい、そうです」


「ほう、本当にまだ子供じゃないか」


ギルマスはじろじろと私の顔を眺めてくる

とりあえず謝ろう、今日は皆に謝らなくちゃ


「今回のことは本当にごめんなさい!」


そう頭を下げると


「ふむ、俺はギルドマスターのリゲル・ディアモン

 ハンターランクは7つ星だ

 そんなに謝らなくていいぞ

 今回の件はギルド側に責任があるからな」


「いや、で、でも、やったのは私です」


「そうだな、だがな魔法を打ち込むように言ったのは

 セレーネ、つまり教官だ

 お前は教官の言った通りに魔法を打った

 それだけだろう?]


「そう・・・ですけど」


それでも威力を自重することはできたはずだ


「ところでだ、お前の打ったのは本当に

 ファイアーボールだったのか?

 セレーネの話だと赤い球ではなく青い球だと変な

 ことを言っていた

 それに杖も無く、詠唱もしていなかったと・・・」


「ギルマス、そんなこと可能なんですか?

 普通は詠唱しないと魔法が使えないんじゃ?」


「それは今の魔法協会の教えがそうなっているからな

 本来の魔法は無詠唱で発動することが可能なんだが、

 人間にとってそれは難しすぎたんだ

 だから、詠唱することで誰でも、簡単に魔法を

 使えるようにしたのが今の魔法のあり方だ」


「でもそんなこと勉強しませんでしたよ?」


「そう思うだろ?

 だから一般的に使われている教材を調べて見たん

 だが、教えられないだけで載ってはいるんだ

 ただ使える人がめっきりいなくなったのと、

 詠唱すれば使えてしまうから、だんだん教えなく

 なったんだろうな」


「ギルマスの言うとおりですねー」


いつの間にかセレーネさんが話を聞いていた

どうやら私と同じように呼ばれていたらしい


「そして追加で言うなれば無詠唱で魔法が使える場合

 どんなことでも可能になるらしいですよー

 それこそ本来赤い球を青い球に変化させること

 なんて簡単なんでしょうねー」


「ということだ

 それを知りながら、止めることができなかったのは

 セレーネなのでギルド側が悪い

 というか実力の測り方が悪いな

 アンナ、すぐに改善するように言っといてくれ

 また、同じことになりかねん」


アンナは頷くと会議の場へと戻っていく


「だから、お前もそんなに気にするな

 まだ子供だろう?こういう時は大人を頼っとけ」


そういって私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる


「ありがとう」


「あ、それとー、訓練は明日から再開になったわー

 また、明日からきてちょうだいねー」


セレーネさんもいつも通りのおっとりモードに

戻っていて少し安心する


「建て物は大丈夫なんですか?」


「地下以外はとりあえず大丈夫そうよー

 だから実技だけは野外で実施することになったわー」


そういうとリゲルとセレーネも会議の場へと

戻っていった



それから私達は一日かけて迷惑をかけた人達に謝罪

して回った


だが、私のことを悪く言う人は誰もいなかった


「気にすんな」


「やっちまったのはしょうがない」


「子供なのにすげぇな」


と賞賛されたり

バジル―ルからは逆に謝られたぐらいだ


「すまねぇ、俺たちが不甲斐ないばっかりに・・・

 舐めて掛かってたのは俺たちの方だ

 ホントにすまねぇ」


さっそく修理に取り掛かっている職人の人たちからは


「次は壊れないくらいに頑丈に作ってやらぁ」


と息まいているくらいだった



「良かったですね、主様」


「うん・・・大人って凄いね

 私もああいう風になれるかな」


「なれますよ、きっと」


ボロボロになったギルドを見上げながら、いつかは

私もこの人達みたいに暖かい人になろうと心に

誓う一日となった



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