第4話_体の異変
新しい修行が始まってかれこれ1年の月日が流れた
ステラも3歳となり、だいぶ大きくなってきた
白く艶やかな髪の毛もそろそろ腰ぐらいまで届きそうである
修行の成果はというと
ステラは一人で魔力増加を行うことができるように
なっていた
マクスウェルは心底驚いている
あれは3ヶ月前ぐらいのことであろうか
部屋の片付けをしている時に唐突にステラが走って
きて抱きついてきた
そして
「おししょうさま、ひとりでひかれるようになった!」
そういうステラを見ると確かに淡く光っており、体中
は汗でびっしょりである
それをみて唖然としてしまい、声を出すことが
できない
「おししょうさま?」
「どどどど、どうやったのじゃ?」
かなりどもってしまった
「?うんとね、なんかね、いっぱいすったらできたの」
何をいっぱい吸ったらこうなるのだろうか
決まっている魔力だ
おそらくステラは大気にあるマナを一人でいっぱい
吸ったのだろう
それはマクスウェルといえどできない芸当であった
(まさか一人で、勝ってに魔力吸収を覚えたのか!
わしでもできないことを・・・
本当にわし以上の逸材じゃぞ!これは)
マクスウェルは飛びついてきたステラを抱きかかえ
頬ずりをする
「よくやった!ステラ、すごいことじゃぞ、それは!」
すりすりされるステラも頬をすりすりし返してくる
ずっと淡く光ったままだからか、凄く暖かい
冬場であればちょうどいい暖房器具になるだろう
夏の今となっては凄く熱いだけなのだが・・・
「すごい?すごい?!」
ステラもマクスウェルの嬉しそうな顔を見て、
はしゃいでいるようだ
ステラを床におろし頭をなでつつ
「汗でびっしょりじゃな、お風呂を準備をしようかの」
(だがやりすぎては危険じゃ、よく見ておかねばの)
「おふろはいる!」
淡く発光した少女は無邪気に飛び跳ねているのだった
ということがあり
今では食事や寝る時以外は常に淡く光続けている
はたから見たら光輝く人間であるため、見る人に
よっては神様かと思うかもしれない
「常に光ってて、苦しくないのかの?」
以前は非常に苦しそうにトレーニングをしていたが
「そこまでくるしくないよ?あせがでるくらい?」
汗が出るくらいで済んでいるようだった
だが、常に汗をかき続けているため、身体的な
ダメージがありそうだ
なにかあってからではおそいため、危険がないように
ステラを終始見張るようになった
ここ1年での修行でステラの魔力総量はマクスウェル
のおよそ3倍近くまで増幅していた
それもそのはず、毎日常に発光し続けており、自分の
体が常に光っているのを自分自身も楽しんでしまって
いる
『遊び道具がないなら、自分を遊び道具にすればいい
じゃない』
とはマクスウェル自身も昔は自身で人体実験をして
いたため、そこは親子じゃのと思えてきた
この日は3歳の誕生日を二人で盛大にお祝いした
異変が起きたのはそれから数ヶ月後の出来事だった
なんでもないいつもの朝だった
季節は冬となり、家の周りには雪がちらほらと
積もってきていた
ステラのベッドを見るとそこには誰もいなかった
すでに起きているようだ
マクスウェルもベッドから起きて、朝食の準備を
しようと部屋を出る
そのとき異変に気づいた
床が血だらけだった
血はリビングの方へと続いている
急いでリビングへと走った
するとソファのところには血だらけの少女が
横たわっている
「ステラ!!」
彼は急いで駆け寄り少女の容態を見る
ステラは全身という全身から血が流れていた
「ステラ!ステラ!!」
はっ、はっ、とよわよわしいがまだ息はしている
マクスウェルは急いで魔法をかけ続ける
しかし、傷は癒えない
体は冬ということや大量に流れてしまった血のせいで
かなり冷たくなってしまっている
急いで暖炉に火を付け部屋を温める
彼は考える、昨日までなんともなかった少女のことを
全身から流れる血、どこかケガしているわけではない
しかし、流れ続ける血
昨日までは毎日汗を描きながら淡く発光し、
『おししょうさま!』と抱きついて
来てくれた少女
そこで、はっと彼は気づく
ステラの魔力量は自分の3倍以上となっている
こんな小さな少女の体の中に自分の3倍以上の魔力が
内包されているのだ
その魔力は器を壊して外側に出ていこうとしている
(もしや、自分の魔力に自分の肉体の方が負け始めた
のか!!)
彼はステラの体を良く見渡した
傷があるわけではないが体の表面から血が噴出して
いるように見える
回復魔法を再度試してみたところ、一瞬だけ傷口が
塞がっているように見えた
(おそらく魔力が肉体の内側から破壊し続けているん
じゃ・・・まずいの、このままでは血が無くなって
死んでしまう)
マクスウェルは焦っていた
回復魔法が効かない症状には出くわしたことがない
「そうか、魔力を一時的に放出すれば!」
マクスウェルは以前と同様にステラから不要な魔力を
放出しに掛かる
そうすることで一時的に血は止まったものの、すぐに
大気からマナを吸収してしまい再び血が出始める
「無意識で吸収しておるのか!」
ステラは毎日発光することで遊んでいた
いつしか無意識で吸収できるようになっていても
おかしくはない
焦る、焦る、このままだとまずい・・・
そしうてたどり着いた答えは身体強化だった
肉体が内側から破壊されているのであればその器自体
を強化するしかない
そう彼は行きついたのだ
そして彼は身体強化の魔法をステラへと掛けた
すると体から溢れていた血は何とか止まってくれたの
である
しかし、ステラは死んでいてもおかしくはない量の
血を流してしまった
いつ死んでもおかしくはない状況である
(くそっ、目を離しては行けなかったはずじゃろ!)
彼は自分自身を叱咤した
それからのマクスウェルは気が狂いそうな程大変な
毎日を過ごした
身体強化の魔法をかけ続け、溢れそうな魔力を体から
放出し、血が流れてしまって傷ついた体へは魔法を
掛け続けた
それから1週間が立って、ようやくステラは目を
覚ました
「おし、しょうさ、ま」
マクスウェルはガバッっと起き上がる
「ステラ!!」
二人はずっと手を繋いだままだった
「おは、よう、ございます」
ステラの顔色はまだ悪い
「よかった、よかった」
目に涙を浮かべながらマクスウェルはステラの手を
強く握った
「まだ眠るとよいのじゃ」
ステラの頭をなでなでしながら眠りへと誘う
顔色はまだ悪いが、気持ちよさそうな顔で再び眠り
につくのであった
それから数日してステラは完全に復活した
一度死にかけた体はさらに強度を増して
そんな姿を見て、安堵したのか憔悴しきっていた
マクスウェルは自分自身が床へと伏せり、死んだよう
に眠るのだった
眠りについたマクスウェル
その隣で手を握り締めたまま動かないステラ
ステラは彼の姿をみて何を思っているのだろうか
するとベッドから飛び降りてステラは部屋からでて
家中を見回った
マクスウェルはステラを助けるために必死だった
血だらけの床やソファをそのままにし、永遠と魔法を
かけ続けたのだ
そしてステラ自身も家の中を見て気が付いていた
今まで何日も眠っていた自分、逆に眠りについて
しまったおししょうさま
きっと自分が何かをやらかしてしまったに違いない
眠っている間、ずっとおししょうさまがそばにいて
くれた気がする
そう思うとステラは一人しょんぼりとしてしまった
だが、この家には二人しかいない
ステラは気を取り直して
「がんばります!!」
と手をグッと握りしめて頑張るポーズを取るのだった
それからのステラの行動は早かった
とてとてと歩きながら、暖炉に向かい火を付ける
キッチンに行って水をだし、お湯を沸かす
いつもマクスウェルのそばをついて回り、抱っこ
されながらも彼の行動の全てを見ていた
見よう見まねで部屋の中を掃除していく
緊急自体に陥った時、人間の頭はフル回転される
3歳と少ししか立っていない少女も例外では無かった
おそらく考えてやっているわけではなく本能がそう
させているのだろう
ステラは今まで魔法を使ったことはないが、使わざる
を得ない状態に陥った
しかし、その準備はすでに万端だった
全て、マクスウェルから教わっていたのだ、言葉では
なく行動の全てで
自分でできるところが全て終わると、水とタオルを
もってマクスウェルの部屋に向かう
そして小さなテーブルの上に起き、自分も同じベッド
の中へ潜り込む
すやすやと眠る老人に抱きつき「おししょうさま」と
つぶやきつつ
一緒に眠るのであった
それからの数日間マクスウェルは眠り続けていた
大量の魔力を消費し続けたのと、精神的な疲れが出た
のだろう
ステラはテーブルにつき足をぶらぶらさせながら一人
考え事をしていた
自分は何か失敗をしてしまった
おししょうさまがずっと眠ったままのもそのせいなの
だろう
ただ、泣きはしなかった
泣いてもおししょうさまは眠りから覚めてくれるわけ
ではない
そして少女は考えて、考えて、一人で行きついた
「からだをつよくしよう!」
体を丈夫にすれば心配されることも、失敗されること
も無くなる!
少女にはあった、体を強くする方法が
眠ったままではあったが、体のそこら中が再生されて、
強くなっていく感覚が
「がんばります!」
最近では何かをする前には必ずこのポーズを取るよう
になっていた
そして少女は始めて一人で動き出すのだった