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Planet Salvation ~一人の少女が世界を救う物語~  作者: YOU
第3章_初めての町編
36/47

第36話_病気


一階に降りた私達は見ては行けないものを見て

しまったのかもしれない


「早く返してもらおうか!」


ガタンッという物音が入口付近から聞こえてくる

二人組の男の片方が椅子を蹴り飛ばしたようだ


「もう少しだけ待ってくれないかい?

 今月分は後少しなんだ」


「毎月毎月遅れてるよな

 こっちも商売でやってんだ

 あんたらだけ特別扱いすることはできねぇ」


「キャッ!」


「お前んとこの娘もそろそろいい年ごろだろう?

 金が払えないっていうんなら娘で払ってもらっても

 いいんだぜ!」


椅子を蹴り飛ばした男がアイシャの腕を掴んで

拘束する


「お母さん!」


アイシャは一生懸命腕を振りほどこうとするが

大人の男の力には到底およびはしない


「アイシャ!

 お願い!娘だけわ勘弁してくれ!」



おそらく取り立てか何かなのだろう

私はいてもたってもいられなかった


「主様!」


ルナが私の肩を押さえる


「ルナ、離して」


「どうするつもりですか?」


「あの子を助ける」


「相手方は正しいようにも思えます

 私たちがどうこうできるような状況ではないと

 思いますが・・・」


「クッ」


確かにそうだ

相手は悪くはないのだろう

でもこのままではアイシャは連れて行かれてしまう


(何か、何かないか)


頭の中をフル回転させ出した答えは一つだった

ルナが押さえていた手を振りほどき私は駆け出す


「あのー!

 お腹が空いたので何か作って頂きたいのですが!」


この状況に水を差す形で大きな声で呼びかける


「なんだ、珍しく客がいたのか」


「今はそれどころじゃねぇんだよ!

 見たらわかんだろ?」


アイシャの腕を掴んでいた男の手にさらに力が籠り、

彼女の顔が痛みで歪む


「ルナ、お願い」


「はいっ」


ルナは私の隣を駆け抜け、アイシャと男の間に割って

入り、腕を掴んでいた手を払いのけた

他の人たちはルナの動きが見えていなかっただろう

何が起きたのかわかっていない様子だ


「な、なにすんだお前!」


男は殴り掛かろうとするがルナはアイシャを抱き抱え

後ろに下がり、男の拳は空を切った


一連の流れを見ていたもう一人の男は


「はぁー」


っと大きな溜息とともに話を元に戻す


「あのな嬢ちゃん達

 俺たちも仕事なんだ、金を貸したから返してもらい

 に来た、ただそれだけなんだよ

 他人が首を突っ込むところじゃねぇ!」


もう一人の男の方は少しはやれるのだろう

常人ならそこそこの圧が掛かりビビってしまう

ところだ


「返済はいくらなんですか?」


「ああん?

 なんだ、嬢ちゃんが払うってのか?

 今月は5万ジウムだ」


5万か、1ヶ月ここにいたとして約10万ぐらいか


「わかったわ」


私は袋から1万ジウム硬貨を10枚取り出し

男に渡す


「私達はここに1ヶ月滞在する予定だった

 だから宿代として10万ジウムを先に前払い

 するわ

 これで来月までの分は無しでいいでしょう?」


「はっ!この宿に1ヶ月も住むとか正気か?

 まぁいい、金さえ返ってくれば俺たちは何も

 言わねぇ

 良かったなマーサ、客がアホなやつで」


そういうと男たちは宿から出ていった

嵐のような時間が過ぎ去り、アイシャは相当怖かった

のだろう、ルナの腕の中で泣き出した


「ありがとう、ありがとう

 なんて言ったら良いか・・・」


マーサは私に頭を下げる


「良いんですよ、少しの間は滞在する予定でしたし

 お師匠様の付けもありますしね」


「でも主様

 これでは一時的にしか凌げません」


ルナは泣きじゃくるアイシャの頭を撫でながら

そう口にする


「そうね

 マーサさん、どういうしてこうなってしまったのか

 よかったら教えて貰えませんか

 何か手助けができるかもしれません」


ぐーッ!


真剣な話をしている最中ではあったものの、ルナの

お腹はそんなことはお構い無しのようだ


クスクスと私とマーサさんは笑い


「ごめんなさい、先にご飯を作って貰えませんか」


「あいよ」


とマーサは厨房の方へと向かっていった



ご飯を食べながらことの経緯を話してもらった


どうやら昔はそこそこ儲けていたらしい

だが、6年前ぐらいから主人が倒れてしまい、看病と

育児に追われ、宿の経営が上手く行かなくなった

主人の病気も治らず、生活費や薬代の出費が重なり

借金をするしかなくなってしまったとのこと

だから宿の修繕をすることもできず、ずるずると

ここまで来てしまったのだとマーサさんは語って

くれた


娘も8歳になって宿の手伝いができるようになり、

二人で何とか建て直そうとはしているものの、

それもなかなか上手くいっていないらしい


「なるほど

 まずは主人の病気を直すことが先決ですね」


「そうなんだけどね

 普通の薬じゃ治らない病気らしくてね

 安い薬じゃ直せないのよ」


「一度見せてくれませんか?

 もしかしたらなにかわかるかもしれないので」


シルファさんから貰った回復魔法の本の中には病気

でも直す方法が幾つか書かれていた

もしかしたら、その通りにやってみればなんとなか

なるかもしれない


「ルナ、アイシャちゃんをお願いね

 ちょっとお父さんの様子を見てくるから」


ルナとアイシャちゃんは仲良くご飯を食べている

こんな時でも食い意地だけは凄い


「ふぁい、おまかへくだはい」


頭をくしゃくしゃと撫でて上げて、私はマーサと

一緒に主人がいる部屋へと向かう


「ここだよ」


扉を開けると少し嫌な匂いがした

死臭に近いだろうか


この部屋はまだ蓄光石があるようだ


明かりを付けるとベッドの上にはやせ細った男の

姿が合った

だが、肌の血色は悪く、息をするのもやっとのように

見える


「少し魔法を使います」


私はマギを放出させ、横たわる男の体全体をつつみ

込んだ

そして、少しづつ体の中に自分のマギを侵入させて

いく


「うぐっ!」


男の体は少しビクンと跳ねる

体に違う物が入ってきているのがわかるのか拒絶反応

を示そうとするが、体が弱っているためそこまで邪魔

にもならない


マギを体中へと行きわたらせると同時に多くの情報が

手に入った


まず、ところどころの細胞が少しずつだが破壊され

ていっている

何かが細胞を浸食していっているのだ

そのせいで内臓機能の大部分が弱くなっている

このままいけばもうすぐ死んでしまうだろう


なんとなく状態はわかったのでマーサに説明をする


「おそらくですが・・・」


説明を聞き終えたマーサには思い当たる節が何個

かあったようだ


まず6年前に森に出かけたことがあったこと

悪いものを食べたことを言っていたこと

何かに噛まれたようなこと


「だとすると、毒とかの類かと思います

 すぐに治すことはできないと思うけど、どうにか

 なるかとは思います」


「ホントかい!」


「はい

 病気の元を取り除くことができれば・・

 ルナを呼んで来てもらえますか?

 あと何か大きな器と布をお願いします」


「あいよ!」


マーサはすぐに部屋を飛び出していった


(さて、うまくいくかな)


私は回復魔法の本をぱらぱらとめくり、病気の

治癒について一通り読み直した


基の原因を取り出すのと取り出した後の回復を

同時に一人でやるのは辛いものがある

だから回復の方はルナにお願いしよう


私は主人の衣服を脱がし、ダメそうなところに

マークを付けていく

全部で7箇所、そのうちの3箇所は肺や心臓に近く

危険な場所だ

ただ、最初にその危険な箇所を直してさえしまえば

死ぬことは無いだろう


「主様、どうですか?」


ルナが部屋に入ってくると同時に顔をしかめる

彼女にも直観でわかるのだろう、主人の状態が


「ルナ、手伝って欲しい」


「そんな、当たり前じゃないですか

 ルナは主様のものですよ?」


なんか意味合いが違うような気もするけど、

まぁいいか


ルナにも状態を説明後、どうやって直すかを一通り

説明した


「じゃあまずはこの3箇所をやっていくよ」


再度主人にマギを流し込む

それに続いてルナも同じようにマギを流し込んでいく

私とルナのマギがほぼ一緒だからこそできる芸当だ


「それじゃいくよ」


「はい、いつでも」


マギを細胞を死滅させている箇所にあて、他の細胞

から引きちぎり分離させていく

一つも残すことのないように


「うぐ!

 うあぁああ!」


主人の叫び声が部屋中に響き渡った

それもそうだろう、内部から体を破壊されているの

一緒なのだから


「マーサさん、押さえていてください」


マーサとアイシャは二人で主人の体をベッドに

押さえつける


「ルナ、再生魔法を」


引きちぎったところから次々とマギを流して込んで

他の細胞を活性化させていく


ダメな細胞は一か所に集め、マギを刃物状に変化させ

肌を斬り裂いて外へと取り出す

それを用意してもらった器へと入れていく


ルナの再生魔法は少し遅いがこの程度なら十分に

間に合うだろう

なんとかなりそうだ


私たちは次々と悪いところの排除を行った

無事危険だった3箇所の処置を終え、体に問題が

無いことを再確認する


(少しマギを流し込んでおいた方がいいかも)


体力の無い今では他の病気に掛かる可能性もある


「ふぅ、これでなんとかなったかな

 ルナもありがとね」


「後でご褒美ください」


ルナは最近わがまま少女になってきた気がする


「はいはい」


「マーサさん、おそらくこれでなんとかなったと

 思います

 ただ、他にも数か所悪い部分があるのでしばらく

 したらそちらも直した方がいいです

 少しの間体力を回復させましょう」


主人の顔色は先ほどとは打って変わってすこぶる

良くなっていた

呼吸もスムーズになっている


「本当になんとかしちまうなんて・・・

 なんていったらいいか、なにからなにまで

 グスッ

 言葉にできないね・・・」


そういいながら泣き崩れてしまった

そんな姿にアイシャは隣に寄りそい背中を撫でる

私とルナは目が合うとこちらも笑い合うのだった




「はぁ~、疲れたー

 慣れないことするとどっと疲れるよねー」


部屋に戻ってすぐベッドにダイブする


「しっかし、シルファさんから貰った本がこんなに

 早く活躍するとは

 貰っておいてほんとよかったよ」


ドスッ!

っとルナもベッドにダイブした

なぜかこちらのベッドに


「ルナ?あっちのベッド使いなよ」


横たわる私にガシッと抱き付いてくるルナ


「嫌です

 こちらじゃなきゃダメです」


最近は余り無かったが時々ルナは私に抱きついて

寝ることがある

しかし、今日は何か雰囲気が違う


「ええ、狭いんだけど・・・」


「ご褒美くれるっていったじゃないですか」


そういえばさっきそんなことを言ってたっけか


「だから今日は離しませんよ」


そういうとルナは腕を私の背中に回し、足を体に

絡みつかせてくる


寝づらい


顔も首元へと近づけてくるせいで息が掛かって

くすぐったい


そう思っていると今度はルナからマギを流し込まれた

体に徐々に侵入してくるマギは私のマギに絡みついて

無理やりルナのほうへと引っ張られている

体中から引っ張られてむず痒い


「もうっ!」


ガバッと全てを振りほどいて起き上がる

体中をまさぐってくるルナをにらみつけると、少し

寂しそうな眼差しをこちらに向けた


「すいません、主様」


そういうとベッドから出てとぼとぼと隣のベッドへ

移り布団を被ってしまった


「はぁ~」


大きく溜息をついた


今度はルナのベッドに侵入し返す

そして背中側からルナへと抱きついた


「ちゃんと言わなきゃダメでしょ」


いつもは抱きつかれているが今回は私からして

あげよう、ご褒美っていったしね


ルナの体に丁寧にマギを流し込んでいく

森にいたころには良くこうしてあげたっけ

最近じゃケガしたりとかでめっきり機会が減っていた

から、もしかしたら不満が溜まっていたのかも

しれない


マギを流していくと手をぎゅっと握りしめたまま

ルナは気持ちよさそうに寝息をたて始めた


たまにはこういうのもいいよね


今日はいろいろあって疲れていたのだろう

私もすぐに意識を手放した



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