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第32話_お礼2


「ただいま戻りましたー」


「おかえりなさい、もうそろそろご飯ができますよ」


私達は入口でさっと汚れを落として、テーブルへ

とつく


テーブルにはたくさんの野菜に囲まれた大きな

鳥の丸焼きが置かれていた

他にもパンだったりスープだったり、おいしそう

な料理ばかりだ

見ているだけで涎が出てきてしまう


「今日は本当に豪華にですね」


「そうでしょう、ステラさんも元気なって、森も

 ルナ様に手伝ってもらって粗方元に戻ってきたし

 盛大にお祝いをしましょう」


皆がテーブルにつき、声を揃えて


「「いただきます!」」


食事についた


鶏肉はとてもやわらかく、ナイフで簡単に切れ、

中からはトロリと油が滴ってきた

それを一口ほおばると口の中でお肉がとろけ、

香辛料の風味と合わさることでなんとも言えない

味が広がる


「おいしい!」


その一言しか出てこないくらいの味だった


私とルナは話すこともせず用意された料理を黙々

と平らげていく

シルファさんはそんな私達をみてにこにこと嬉しそう

な顔で眺めていた


「そんなに気にいってもらえるなんて

 作った甲斐がありましたね」


これまで生きてきて食べた料理の中では一番では

ないだろうか

お師匠様には申し訳ないけれど、流石にシルファさん

には勝てそうにもないですね

そんなことを言ってしまうとしょんぼりしてしまう

だろうか


「主様、ぜひ今後もこういうのが食べたいです」


隣でむしゃむしゃ食べていたルナが無理難題を

言ってくる


「ルナ、わかる、わかるよ、これまでの道のりで

 食べてきた物を思うと私も考えるものがあるよ

 でも・・・私の腕前ではちょっと厳しいかなぁ」


そんなことを言いつつ、スープを飲む

いろんな意味で涙がでそうだ


「あら、良かったらレシピを書いてあげましょうか」


まさかの申し出だった

いやでも、流石にそこまでお世話になるわけには


「いいのよ、せっかくできた娘みたいなものでしょう

 お料理くらい教えたいものよ」


にこにことシルファさんは嬉しいことを言ってくれる


「じゃあ、料理の時は一緒に手伝います

 実際に見て覚えます!」


それであれば私も納得ができるし、覚えるのも

早いだろう


「そう?じゃあお願いしようかしら」


シルファさんも乗り気のようだ

明日からはいろんなことができるようになって少し

わくわくが止まらない


私達は食事を終え片付けをした

3人で洗い物をしたり、片付けをしたりするのは

中々に楽しいものである


それが終わり、お茶を飲んで少しゆっくりしている

最中、私は切り出した


「シルファさん!」


「はい!」


私の唐突の呼びかけに少し驚いているのか、声が

大きくなってしまったようだ


「あの、その、今まで私達かなりお世話になっている

 じゃないですか

 それで、そのちょっとしたプレゼントを用意したの

 ですが、受け取って貰えますか?

 気に入って貰えるかはちょっとわかりませんが」


「あらあら、そんなの気にしなくていいのに」


私達は寒空の下、シルファさんを外に連れ出し

先ほど作ったばかりのお風呂場へと向かった



魔法で辺りを照らし出す

その光景をみたシルファさんは目をまん丸に見開いて

驚きの表情を浮かべていた


「これです!

 その、ルナからお風呂がないって話を聞いたので、

 作ってみました

 良かったら入ってみませんか?」


そこには綺麗に張られた板、そして真ん中には岩に

囲まれてはいるものの、綺麗なくぼみがあり、家の

ように屋根がついている


シルファはそんなお風呂をみて


「わぁ、凄いわね

 驚いて声もでませんよ」


ルナがシルファの手を引っ張り


「早く入りましょう、すぐ入りましょう、

 とても気持ちいですよ」


ルナはもう待ちきれない様子だ

どちらかと言えば自分がものすごく入りたいのだろう


「ちょっと待ってね、お湯を入れるから」


私は魔法でお湯を湯舟の中に投入していく

温度は私が中に入っていれば程良く調節できるかな


一瞬にして張られたお湯をみて、さらに驚いている


「お湯ってこんなに簡単に作れるものだったかしら」


いろんなことが一気に起きすぎて、頭がついていって

ない様子だ


「さぁ、はいりましょう!」


寒空の下というのもあり、服を脱ぐと流石に寒い

私とルナは脱ぐなりすぐにお湯の中にダイブした


シルファさんは恐る恐る、お湯の中に足を入れる


「はぁ~~~、主様、これです、これ~」


ルナは久々のお風呂ともあってか、とても満足気味だ

シルファさんも初めてではないのかとても気持ち

よさそうにしている


「まさか、こんなところでお風呂に入れるとは

 思いませんでした」


「シルファさんに何かお礼がしたくて・・・

 そのご迷惑でしたか?」


「迷惑だなんてそんな

 とても嬉しいですよ、今まで生きてきてこんなに

 嬉しい送りものは初めてだったので

 どう受け止めていいのかが少しわからないのです」


「それなら良かったです、作った甲斐がありました」


気に入ってもらえてよかった

実は大々的に作ってしまったので、少し不安では

あったのだ


「ステラさん

 成り行きとはいえ、私もたくさんの物を貰いました

 こんなに楽しいと思うのは久方ぶりです

 本当にありがとうございます」


まさかシルファさんがそんな風に思っていて

くれているとは思いもしなかった

突然押しかけたようなもので、迷惑がっていないか

心配ばかりしていたし


私はシルファさんに近づき隣へと腰かける

ルナも同じ気持ちになったのか、反対側へ腰かけた


「こちらこそありがとうございます」


それから私達はゆっくりと湯舟に浸かり、体の芯まで

疲れをとるのだった




翌日になって、ついに私はリハビリをスタートする

まずは鈍ってしまった体を元に戻すところからだ

しばらく、動かしていなかったので体のあちこちが

バキバキになっている

体力もだいぶ落ちてしまっているし、感覚も鈍って

いるので体を動かすついでに魔物を狩ることにした


「ルナー、待ってよー!」


全力で走っているのにも関わらず、全然ルナに

追いつけない


「主様、頑張ってください

 ルナはまだ本気じゃないですよー?」


今までと立場が逆転してしまった

ルナは私が寝ている間も魔物狩りをしていたためか

前よりも強くなっているようだ

それにいろいろあってか、自分の体をさらに鍛える

ようにしたらしく、以前の私より強いように感じる


「はぁ、はぁ、はぁ、全然追いつけない・・・

 くそー」


すたっと、ルナが隣にやってくる


「大丈夫ですか?いきなり動くと体に悪いかも

 しれませんよ?」


「大丈夫、大丈夫、ちゃんと見極めてやってるから

 無理そうだったら、助けてね」


そういっているとちょうど魔物が数匹突っ込んできた

オーガやら、トレントやらが数匹目の前にいる


「はぁ、はぁ、私にやらせて

 感を取り戻さないと」


息を荒げながら戦闘体勢に入る

まずはいつも通りになれた魔法を使っていこう


「ウォーターバレット!」


水弾を作り出し、オーガへと発射する

何気なくいつも通り打ったその弾はオーガの頭に

直撃し頭ごと吹き飛ばして貫通していった


????


「主様、威力あがってません?」


確かに今まで貫通してはいたけど、頭ごと吹き飛ばす

ようなことは無かった気がする


もう一発試しに、今度はトレント目掛けて発射した

するとトレントにも直撃した瞬間、胴体を粉々に

しながら貫通していった


やっぱり威力がかなり上がっていそうだ

戦闘体勢に入ってわかったが、体から溢れてくる

マギの量も前より遥かに多く感じる


身体強化も以前と同程度の量しかマギを使って

いなかったが今ならもっといけるかもしれない


私は体中にさらにマギを巡らせていく

髪の先端は淡く輝き出し、目の色も次第に

変わっていく

だが、前より全然余裕がある

もっともっとマギを込めることができそうだ


どんどん込めていくと体からマギが溢れ出した

ここが限界かな、これ以上やるとまた体が

壊れちゃいそう


その姿を見たオーガは身の危険を感じたのか

逃げ出そうとする

しかし


「逃がさないよー、よっと」


地面を踏み込み、オーガへと突進した


ドォオオン!


したのは良かったが、余りの力の強さに自分を制御

しきれずそのまま体当たり気味に突っ込んでしまう


突っ込まれたオーガは巨大な岩に跳ねられたかの

ごとくぐしゃぐしゃになってしまった


「いてて、

 なにこれ!今までと全然違うんだけど!?」


その姿にルナも驚いていた


「主様、おそらくですが、無くなったのは体力と

 体の動かし方を忘れただけじゃないですか?

 ほら、ずっと寝ていましたし」


「・・・・

 なにそれ、間抜けじゃん」


確かにルナのいう通り、体を動かすのにぎこちなさを

感じてはいたけど・・・

あ、だから体力の減りも早いのか


「やっぱり無理やりにでも体を動かさないとだめだね」


一度身体強化をやめて、ルナと同じように格闘術に

切り替え、改めて魔物達と向き合うことにした

まずはいつも通り動けるようになってからにしよう


まだ始まったばかりだが、まだまだリハビリは長く

なりそうである



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