表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/47

第30話_回復魔法


シルファさんから貸してもらった回復魔法に関する

本はとても興味深いものだった


まず回復魔法というのは総称の名前らしい

その中には再生魔法、生成魔法、復活魔法の3つに

分かれているようだ


再生魔法はいつも私がやっているものと同じで、

魔力を損傷した部分に送り込むことで肉体を活性化

させ再生力を高めるものだ

ただ、本来の再生魔法にはその続きがあった

損傷している内容に合わせてどの部分に魔力をあて

がうかで効き目が違うらしい


例としてケガした部分の少し内側に魔力を当てると、

傷ついた部分と傷がついていない部分同時に活性化

させることができ、肉体の結び付きが良くなって傷の

治りが早い

病気になった場合でも同じやり方で悪い場所に魔力を

あてがうことができれば治りが早い


どのやり方においても要は集中させる場所がわかって

いなければ効果は薄いとのことだ


(どうせマギの量はいっぱいあるんだから、一人分

覆った方が早いかも・・・

今度ルナに試してみよう)


ただ、再生魔法はあくまでその本人の再生する力を

手助けするためのものであり、重症をおっている場合

には余り役に立たないとのこと



その次のステップとして有効な回復魔法が生成魔法

のようだ

ただしここからはむやみに使用することはやめた方が

良いことが注意書きとして記載されていた


それもそのはず生成魔法はその人の体を読み解くこと

で、魔力で血を作り出したり、細胞を作り出したり

する魔法のようだ

同じものを作り出すことが出来なければ、体に不具合

が現われ逆効果になることが長々と記されている


言わば魔力物質変換が完璧であることが大前提なのだ

魔力を火や水に変換させるのと同じで、血や細胞を

魔力で作り出せなければならない

しかも、普段の魔法と違い、相手に合わせた完璧な

ものを作り出さなければ逆効果となってしまう


そこで私は気づいてしまった


(あれ、じゃあ生成魔法って全ての魔法の根源

なんじゃ・・・

火や水も魔力物質変換

血や細胞も魔力物質変換

作り出すものが違うだけで、どちらも一括りに

生成魔法って言えるよね?)


そもそもどうやって火を作り出してたっけ?

実際に手元に火を作り出す

幼い頃から無意識の間にできるようになっていたから

あまり気にしていなかったが


お師匠様にもそこまで詳しくは教えて貰っておらず、

ほとんど雰囲気で火とはこういうものだと教えられた

記憶がある

水も同じだ

実際の水を見せられ、同じものを魔力で作れるか

どうかをやって見たりと、自分だけの力で水を作り

出す時は雰囲気でやっていた記憶しかない


(うーん、どういうこと?)


私の頭の中はぐるぐるし始め、何時しかパンク寸前の

ところまで来ていた

今までの魔法のあり方がこの一冊の本によって覆り

そうだったからだ



「あらあら、顔が歪んでますよ」


そんな時だった

ずっと考え事をしていたせいでシルファさん達が

帰ってきていたことに気づかなかった

彼女はお茶を入れ、ルナは着替えをしているようだ


「お帰りなさい

 少し考え事をしてたもので」


そうだ、もしかしたらシルファさんなら何か教えて

くれるかもしれない


「この本に書かれていたことで質問したいことがある

んですけど」


シルファさんはお茶の準備を済ませ、椅子に腰かけた

そして一口お茶を飲むと


「私もその本については良くわかりませんよ?」


彼女も一度はこの本の中身を全て読んではいるだろう

よくわからないといっても私よりは詳しいはずだ


私は今疑問に思っていることを彼女に打ち明けた

生成魔法のことについて、私達が普段使っている魔法

と一体何が違っているのか

その質問に彼女の顔も曇り始める


「そこまでたどり着いたのであれば答えはすぐそこ

なんですが・・

 うーん、先日教えると言いましたしね」


歯切れが悪いのには何か理由があるのだろうか

私も出されたお茶を飲み、シルファさんの言葉を待つ


「そうですね、まずは基本的な魔法についてから

ですが・・・

 魔法というのはですね想像と創造なのです

 今私達が使っている魔法は本当にそこにあるものと

は一緒ではありません

 例えばですが、火の魔法があるでしょう

 ちょっと出してもらえますか?」


私は掌に炎を浮かべてみせた

彼女も同じようにして炎を作ってみせる


「この二つの炎は一緒だと思いますか?」


まったく瓜二つで違わぬ炎

大きさは少し違うが色も熱さも同じように見える


「一緒ではないのですか?」


そういうと彼女はふふと笑って見せ


「それではあの暖炉の炎とこの炎は一緒だと思います

か?」


暖炉の炎は木が燃えることで炎を灯し続けているの

に対し、私たちの炎は魔力を変換させることで炎を

灯している

だけど、同じように燃えていることに変わりはないの

ではないだろうか


彼女はまたふふと笑い


「そうですね、これはとても難しい話です

 暖炉の炎は木を燃やし、酸素を取り込むことで燃え

続けることができます

 どちらか一方が無くなったら燃えることは

できません

 ですが、魔力で作り出す炎はそもそも酸素を必要と

はしません

 なぜなら、その炎は現実の炎とは違い魔力によって

創造することで1から作り出された炎だからです

 見た目や形、能力が一緒と言えどその人の魔力と

想像によって作られた全く別の炎なのです」


彼女の言葉をなんとなくだが理解することはできた

私が今まで使っていた炎

確かに現象は全く一緒だが、作り出す時の違和感

炎とはこういうものだという違和感の答えがそれなの

だろう


「つまり、私が想像して創った炎とシルファさんが

想像して創った炎は全くの別物となるわけですか

 想像する人によって考え方が違うからということ

ですよね」


「理解が早くて助かります

 水で比較するのもわかり安いかもしれませんね

 自分で作り出す水と自然で取れる水とでは味が

全然違いますから」


今まで気にして飲んだことは無かったが、確かに全然

違うかもしれない

それに、私が今まで使って来た魔法も自然現象を応用

したものばかりだけど、本来は想像するだけで使う

ことができるのかもしれない

お師匠様も炎はどのように燃えるのかとか、水は何で

できているからとかは教えてくれたが、その物質を

実物として一度も見たことはない

酸素なんて目に見えないし自分の中でこういうものだ

と想像していただけだ


ただ原理としてどうやって発生するのかを知っておか

なければ想像すること

すらできないのだから、学んだことは間違っては

いないのだろう


「だから、想像と創造なんですね・・・」


このことを知らなかったら今後間違った方向に進んで

いたかもしれない


(今まで学んできたことってずれてたんだなぁ)


そう思うと少し悲しくもなってしまう

お師匠様から一生懸命教えてもらった魔法だし、

形見と言ってもいいものだし


「そんなに気に留めることもありませんよ

 私がそれを知ったのもその本を読んでからですから

 それまではおそらくステラさんと同じ考えだったで

しょうね」


本へと視線を移す

お師匠様よりも魔法が詳しく、知らない魔法を知って

いる人

一体誰が何の目的でこれを残したのだろうか

他にもこういった書物が残っているのだろうか


一番最後のページを開くとそこには本を書いたで

あろう人の名前が乗っていた


『シーマ・ドルイド』


「おそらく私の先祖に当たる人だと思います

 私の名前も本名はシルファ・ドルイドですから

 私達の間でも知ってるものがいないのでかなり昔の

方になると思います」


シルファが付け加えて説明してくれた


「さてと、お茶のお代わりはいかがですか?

 まだ本題にも入っていませんし」


「あ、すいません、ありがとうございます」


いつの間にかルナも着替えを済ませベッドに腰かけて

お茶を飲んでいた

難しい話をしていたからだろうか、ルナも真剣な表情

で私たちの会話に口を挟まず聞いていたのだろう

空気まで読めてえらいえらい


そう思ってルナの頭を撫でてやった


だが本題はこれからだ

そもそもの魔法については理解することができた

問題は生成魔法とはなんなのかである


話が長くなるだろうとシルファさんはお茶の他にも

お菓子を用意してくれた


「それで、生成魔法についてでしたね」


そして再び椅子に腰かけて話の続きを始める


「先ほど説明したのは良く使われる魔法の一部になり、

私達は創造魔法と呼びます

 創造魔法はあらゆる現象をその人の想像から生み

出す魔法ですね

 他にも自分の魔力を自在に操ることで肉体や物体の

強化、現実に直接干渉していく干渉魔法っていうの

があったりします」


おそらくは最近使い始めたマギによるワイヤーとかも

干渉魔法になるんだろう

あとは周囲にマギを飛ばしたり、それを圧縮したり

する空間魔法も同じかな


「そして本題の生成魔法ですが、この魔法は

 無から有を生み出す魔法

 現実に存在している物体そのものを作り出す魔法

 のことを言います」


創造魔法はその人が想像によって作りだした魔法

生成魔法は本物を作り出す魔法ということだろうか

ここまでのシルファさんの話でなんとなくわかって

きた

生成魔法の中身や難しさ、危険視される理由が


「そこで一番最初の質問に帰ってくるわけですが、

 創造魔法は全てが想像で創られていて、生成魔法は

 ちゃんとしたその物体の組成で構成されている物を

 創り出すという違いがあるわけです

 そしてもっと大きな違いが、生成魔法で創られた

 物体は消えることはありません

 魔力自体がその物体その物になるからです

 つまり、こちらが本当の魔力物質変換になるという

 ことですね」


そこまで話したところでシルファさんは一息ついた

頭の中身はごちゃごちゃだが、今まで曖昧になって

いた部分がすっきりしたような気はしている


「シルファさんは生成魔法を使うことができるん

 ですか?」


なんだかんだで本の中身をほとんど理解しているの

だから少しくらいは使えると思っていた

しかし、


「残念ながら、私は生成魔法を使うことはできません

 生成魔法はいわば全ての魔法の集大成に値します

 魔力の量、創造魔法、干渉魔法、他にも様々な魔法

 がありますがその全てを完璧に扱うことができて

 初めて生成魔法を習得する一歩を踏み出すことが

 できるのです

 私ではその領域に至ることはないでしょうね」


少し悲しそうな顔で彼女は答えた

だから最初によくわからないと言ったり、少し言葉に

詰まっていた部分があったのだろう


(シルファさんですら、習得できないのであれば人間

である私にはもっと無理なんだろうな)


「そう、ですか

 でも、ありがとうございます

 魔法について凄く勉強になりました」


私はそんな彼女を悲しませないように明るくお礼を

述べる


「いいえ、こちらこそ教えると言ったのに

ごめんなさいね

 ただ再生魔法ならある程度使えるので何か合ったら

聞いてくださいね」


そういうとシルファはお茶を片付けキッチンへと

向かっていた


(思っていたよりも奥が深いなぁ

他にもいろんな魔法があるだろうし、私の知って

いることでさえ間違っていたわけだし

それにしても、一番最後に書かれている復活魔法

というのはどれだけ凄いのだろうか)


そんなことを思っていると今まで私とシルファさんの

話を黙って聞いていたルナが初めて口を開いた


「主様」


「どうしたの、ルナ?」


ルナは私の耳元に近づきこっそリと喋った


「先ほどの話の内容ですが、ここだけの話

 主様は生成魔法を一度使ったことがありますよ?」


「え、どこで?、これだけの魔法を使ったことがある

ならこんなに悩んで無いんだけど??」


少し声が大きくなってしまう


「主様、声が大きいです」


確かに、今シルファさんにそんなことを聞かれしまう

とさらに悲しませてしまう可能性がある


「え、どこで?」


私も小声でルナに問いかける


「ハデスとの戦いでボロボロになったはずのユリが

なんで元に戻ってるかを考えればわかるかと・・・」


あっ、確かに

記憶が無かったにしろ、私、使ってるじゃん




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ