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第28話_ドルイド



暖かな光

ふわふわととても気持ちが良い

もぞもぞ

ふかふかのベッドで私は何回も寝がえりを打つ

重さを感じさせない掛け布団の中でぬくぬくと

縮こまりながら一時の幸せを感じていた


(あれ、そういえば、あの後どうなったんだっけ)


徐々に意識が覚醒していく


もぞもぞしている間にピタっと柔らかな肌に手が

触れる

肌はすべすべでいい匂いがする

その物体を抱き寄せると小さく声が聞こえた


「主さま~」


隣の住人もまだ寝ているようだ

私はゆっくりと目を開けるとルナは気持ちよさそうに

布団の中で眠っていた


(あの後、確か気絶してしまって・・・それからの

記憶が無い)


ここはどこなのだろう

硬い地面の上で倒れたような気がするが、いつの間に

かふかふかなベッドの上で寝ている

来ている服もいつの間にかユリでは無く薄手の

ワンピース一枚になっている


辺りを見回すと木製のテーブルやら家具やらが置いて

あり部屋は円形でとても広く、壁も床も全て木製だ

私達が寝ているベッドは窓際にあり、陽の光が

ちょうど良く当たる場所のようだ


「あら、ようやく目を覚ましましたか」


部屋の入口だろうか、一人の女性がそこには立って

いた

その人は徐々にこっちらへと近づいてくる

あの人が私達を助けてくれたのだろうか

私は体を起こそうとするが、体の至るところが痺れて

起き上がることができなかった


「痛っ・・・」


「あらあら、無理に起きない方が良いですよ

 あなたの体はまだ回復しきっていませんから」


女の人はベッドの近くにあった椅子に腰を掛けた

近くでみるととても綺麗な人だ

腰まで伸びる髪は薄い緑色で透き通って見える

顔は小さく耳は尖っていて雰囲気はとてもおしとやか

で優しそうだ

何より身長はスラっとしているくせにローブの隙間

から見える胸は大きい、大きい


「そんなに胸ばかり見つめないで貰えますか」


少し恥ずかしそうに胸元を隠す


「あ、ごめんなさい・・・

 凄くスタイルが良かったので、つい」


視線を悟られていたことに恥ずかしくなってしまう


「ところで、ここは?」


「森の中にある、私の家ですよ

 その子とはもう自己紹介を済ませていましたけれど

 あなたとはまだでしたね」


自分の髪をすきながら、眠っているルナに視線を移す


「私はドルイド族のシルファと申します

 この世界のあらゆる森を管理している一族に

なりますね」


『ドルイド族』

本には森の精霊だの妖精だの記されている、表舞台に

は一切立たない種族だ

基本森の中にずっといるため、人に目撃されることも

無いし情報がほとんど無い


「あ、こんな状態で失礼ですけど、ステラと言います

 よろしくお願いします」


「いいえ、こちらこそ森を守って頂いたのです、感謝

しかありません

 まさか、魔族がハマス様まで呼び起こすとは思って

もいませんでしたので

 あのまま野放しにして入ればいずれこの森はもっと

酷いことになっていたと思います」


実際にハマスとは戦ってはいないのだが、あの龍も

相当やばいやつだったらしい

それもルナが何とかしてくれた見たいではあるが


「前から魔族が森にいることはわかってはいたのです

 が、こちらからはどうすることもできない程相手が

 強かったので、助かりました

 あの魔族はネクロマンシー、死者を操る魔法を得意

 としていたみたいなのでいずれ森は大混乱になって

 いたでしょうね」


確かにハデスは死者を操って私たちに攻撃に仕掛けて

来ていたし、魔力を使い果たす程の魔法を行使した

とも言っていた気がする


「蘇った死者達は全部消えたのですか?」


「まだ、完全に全部が消えた分けではありませんね

 今は聖獣様、ルナ様と一緒に残党の処理をしてい

 ます」


あれ、もしかして結構時間たってる?


「あの、私はどれくらい眠っていたのですか?」


「ああ、私があなたたちを連れ帰ってからかれこれ

 1ヶ月は立ちましたか

 中々大変でしたよ、何せステラさんもルナ様も

 回復魔法が効かないのですから

 ただ、ルナ様の傷はまだ軽傷だったのですぐには

 良くなりましたね

 ステラさんの方はもう全身ボロボロで手の付けよう

 がありませんでした

 生きているのが不思議なくらいですよ」


ルナの傷が軽傷程度済んでいたことにまずは一安心だ

だけど私は知らない間にまた死にそうになっていた

とか・・・

しかも今回は1ヶ月も寝たきりの状態

まぁあれだけマギを放出して、全身から血を吹き出せ

ばそれはそうなるだろうか

しかし、回復魔法が効かないとは一体どうして・・・


「何から何まで本当にありがとうございます

 ところで、回復魔法が効かなかったのですか?」


「おそらくですが、私の魔力がステラさんやルナ様の

 体に送り込めなかったのが原因ですね

 魔力を送り込めなければ回復魔法は成立しません

 から

 それでもステラさんは勝ってに自分の体を再構築

 しようと日々うごめいていたのでかなり驚かされ

 ましたよ・・・

 どうしたものかと眺めることしかできませんでした

 ルナ様が目覚めてからはステラさんにマギを送る

 ことができるようになったので順調に回復できる

 ようになりましたが、不思議なんですよね

 ルナ様のマギはすんなりと通すことができたん

 ですよ」


今は体にマギがだいぶ戻ってきてはいるのを感じるが、

それでもまだ経路自体の修復は不完全なようで、微妙

に痛みが走る

昔、体を作り変えていた時のような痛みの酷い版が

今回の症状に近い

また、私の体は無意識に作り変えられているの

だろうか、少し怖いな

ルナのマギを通すことができたのも、一部私のマギ

がおり混ざっているせいもあるのだろう

相性抜群なのだ


「ふぁあ、主様」


そんなルナが目を覚ましたようだ

私と目がぴたりと合うと


「主様!あるじさまぁああ!」


と勢い良く抱きつかれた

ズキン!

と全身に痛みが駆け巡る


「痛い!、痛い!、死んじゃう!」


嬉しいことではあるが、今はそれどころでは無い

涙目になりながら抗議を上げる


「ああ、ごめんなさい、つい」


ルナは急いで離れて、しゅんとしてしまった


「いたた・・・

 いいのよ、ごめんね、心配かけて

 またルナに助けられちゃったね」


そっと手だけ握る


「いいえ、ルナこそ、ルナがもっと強ければ主様を

 守ることができたんです

 自分が弱かったせいで・・・」


ルナは自分を不甲斐ないと思っているのかなぜか涙目

で謝ってくる

そんなことは全然無いのに


「今度は私が主様の体を治します!」


そう張り切るのだった


「お茶でも入れましょうかね」


シルファは椅子から立ち上がりキッチンへと

向かっていく


「ルナ・・・体は大丈夫?

 その、私、やっちゃったでしょう?」


私の手は一度ルナの体を貫通している

いくらルナと言えど致命傷には違い無いほどの

ダメージを追ったはずだ

だが、ルナは


「あれですか・・・

 その、凄く、痛かったです

 私も初めてで、でも体の内側から主様を感じること

 ができて

 痛かったですけどとても気持ち良かったというか、

 初体験でした・・・」


そんなことを顔赤らめて恥らないながら答える少女の

顔を両側から引っ張り

むにむにとこねくり回す


「あふぅじさまー、いたひです」


「ほんっとうに心配して損した!」


手を顔から離し、ルナのお腹へと当てる

それでもこの子は私を必死に呼び続けてくれた

あれが無ければ今ごろ死んでいたに違い無い


「でも、ありがとう」


ルナは顔を見られるのが恥ずかしいのか私の体に顔を

埋めて隠してしまう


「あらあら、本当に仲がいいのですね」


お茶をもってきたシルファはそんな光景をまじまじと

見ている

そして、シルファが魔力をベッドに流し込むと、背中

の部分だけが起き上がり

体を動かすこと無くお茶を飲み安いようにはからって

くれた


(何これ、凄い)


目の前にはテーブルが置かれそこにお茶を用意して

いく、もちろんルナの分も


「どうぞ」


お茶からはハーブだろうか、良い香りが漂っている


「ありがとうございます、頂きます」


一口飲むと少し苦いが体全体が暖まるような優しい

味がした


「おいしい」


ほぉっと一呼吸

なんともリラックスできる最高の味だ

そんな表情を見てシルファも満足気味だった


「そういってもらえて嬉しいです

 自慢の一品なのですよ」


そんな自慢の一品には披露や内臓機能の低下等の様々

な効果があるらしい

ぜひ作り方を教えて貰いたいものだ


お茶を飲みつつ3人で談笑は続いた


なんで聖獣と人間が一緒にいるのかや、これまで

何があったのか

逆にシルファもどういうことをしているのか、

いろんな話をした


「そうですか、魔族が聖獣様を・・・

 今のところ理由はわかりませんが、聖獣様が滅べば

 いずれマナは枯渇することになり、あらゆる生物が

 息絶えることになりますね」


だがそれは魔族でも同じことだろうとシルファは

付け加えた


「そのことなのですが、聖獣がマナを生み出している

 んですか?」


「いいえ、聖獣はあくまで守り手です・・・」


何かを思案するようにシルファは少し考え込んでいて

いる


「そうですね、あなたは知っておいた方がいいかも

 しれません

 もはや、人としての枠を大きく外れてきていますし」


なんだか最近人外宣言されることが多い気がするの

だが

私はそもそも人間なんてお師匠様くらいしか知らない

し、どういった生き物なのかもある程度しか知らない

し、まぁ、どうでもいっか


「そもそもマナとは世界樹であるマナの木が生成して

 いるものになるのです

 マナの木は世界の各地に幾つも存在することで、

 この星の大気にマナを供給し続けている別名

 『神の木』とも言われています

 その木を守ったり管理しているのが聖獣様達です

 その聖獣様がいなくなってしまうと管理が行きわた

 らなくなり、いずれマナの木は枯れてなくなって

 しまいます

 そして、聖獣様は最後の砦、その聖獣様を守る者達

 が、私たちドルイドであったり獣族や龍族の一部の

 者たちだったりします」


シルファはお代わりのお茶をカップに注ぎつつ、話を

続けてくれた


「これについては、各種族でも本当に一部の者しか

 知らされていません

 そして、もうお気づきかもしれませんが、あなたの

 住んでいた死の森と言われていた森にはマナの木が

 存在しています

 おそらく、人間の中で知っているものが近づかない

 ようにそういう別名を付けたのかもしれませんね

 人間の中ではもはや幻の木として語り継がれている

 ので情報を知っている人もいないかもしれませんが」


お師匠様はたまたま人に邪魔されない、そして邪魔を

しない場所を選択してあの森を選んだだけだ

だけどそのおかげでルナと合うことができた

あれ、ということはルナは最初から知っていた?


チラッとルナの方を見ると、ばつが悪そうにそっぽを

向いてしまう


知ってたみたいね


ジーとルナを見続けるとシルファが答えてくれる


「そんなにルナ様を責めないで上げてください

 おそらくは掟か何かあるのでしょう

 種族によっては情報が厳しくされていますので」


「じゃあ、なんで私には教えてくれたのですか」


本当に一部しか知りえない貴重な情報を私に教える

意味があるのだろうか


「ここまで話をしてみて、悪い人ではなさそうですし、

 それに・・・

 教えておかないと最悪森が消えて無くなってしまう

 でしょう?

 もし森やマナの木が無くなることになればこの星が

 どうなってしまうかわかりません

 前のように森や山を一刀両断されては困るのですよ」


苦笑いをしながらのシルファの答えは本当に単純な

ものだった


うん、確かに

知らなかったらいずれはやっていたかもしれない


他にもいろいろ教えて欲しいことはあったがお茶の

せいかだんだんと眠くなってきてしまった

そんな私に気づいたのか、シルファはお茶を片付けて

ベッドを再度横にしてくれる


「今はゆっくりと休んでください

 お話はいつでもできますから」


シルファはそういうと部屋からでていってしまった


体の回復はまだまだ先になるだろう

ここはお言葉に甘えてゆっくり休むことにしよう


「主様、私もご一緒して良いですか?」


と隣に寝転がっているルナが懇願してきた


「もうご一緒してるよね?

 いいよ、ルナが一緒だと安心するから」


ルナはにこにことこちらに体を寄せてくる


(可愛い

ルナを守ることができて本当に良かった

これからのことは明日から考えよう)


そうしてルナを抱き枕にしながら、再び眠りへと

落ちた



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