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第25話_VSハマス



~ルナside~


主様には合図だけを送り、蹴り飛ばした龍の後を

追った

これで対局的には1対1、どんな敵でも主様なら勝てる

だろう

私の役目は片方の敵を抑えることだ


吹き飛ばされた龍は木々をなぎ倒し地面に蹲っていた

体は茶色と黒が入り乱れ昔は強靭であったのだろう

牙や爪が見えるが、肉はところどころ腐敗し骨が見え

ていて気持ちが悪い

首は長いが腐敗が進んでいるためかほとんど骨で支え

ていた

体に似合わず、目だけは綺麗に紅く光っている


ルージュ並みの大きさや厳つさはあるが彼女程の

脅威はこれと言って感じられなかった


「早く倒して主様のところに戻らないと」


龍の胴体は蹴られた衝撃で陥没し骨が数本折れている

防御力はほとんど無いに等しいし、倒れたまま起き上

がっても来ない


「あれ、死んじゃった?」


そんな龍の生存を確認しようと安易に近づいたのが

誤算だった


死んだふり、それが相手の目論見だった

ハマスは特別な龍だからなのか、死んでいるにも

関わらず知能があるような戦いを仕掛けてきた


「グォオオオオオオ!」


大きな咆哮と共に体からは一気にマギが溢れかえり、

そのマギはブシューっと体全体からドス黒い瘴気へと

変換され辺り一面へと拡散していく


「ぐっ!」


(息ができない、油断した)


瘴気は余りにも臭く、吸っては行けないとルナは瞬時

に呼吸を止める

それに加え、体からは紫色の液体がジャバジャバと

地面を浸食していき、その液体は大地を溶かし、

徐々に毒沼を作り始めた


(これでは近づけない)


息を止めながら大きく後退するほか選択肢は無かった


「ぷはぁ、はぁはぁ、厄介ですね」


マギで体を覆っていなければ徐々に溶かされていた

ことだろう

地面や草木を見ればその威力は一目瞭然だ、若干服

も溶かされていた


(せっかく貰った服が・・・}


瘴気事態が毒の性質を持っているのだろう、少しずつ

だが周りの物体を溶かしていっている

私も少し吸ってしまったためか、肺が痛い

流石は守り神だったというだけのことはある

姿形は昔とは変わっていたとしても、マギの扱いだけ

は忘れていないようだ


(あの沼はもっと凄いのでしょうね)


瘴気で近づけない、近づいたとしても毒沼で着地は

できない

近距離でしか攻撃手段が無い私に取っては相性最悪

の敵だ


「さて、どうしましょうか」


瘴気と毒沼は徐々に徐々に広がってきていた

このまま広がり続けたら余計に攻撃手段が無くなって

しまう


ルナに残された選択肢はもう突撃しか無かった

考えていても仕方ない

地面を思い切り踏み込んでハマスへと突撃した


(さっきみたいに吹き飛ばせれば!)


息を止め、できるだけ多くのマギで体を纏う

地面には足をつかないようになるべく低く飛びつつ

胴体を狙おう


だが相手もそれは読んでいた

龍はその大きな体を利用して、体を回転させ尻尾で

攻撃をしてきたのだ


ハマスはぐるんっと一回転する


(!避けれない!)


空中にいることと、突進した勢いで体勢を変えること

ができない

急いで腕をクロスさせ、足を縮める


バシンッ!


と大きな衝撃と共にルナは大きく吹き飛ばされて

しまった

何とか受け身は取れたものの腕がひりひりする

ダメージ的には余り大した事無いはずだが、何かが

おかしい

そう思い腕を見ると、袖は無くなり腕が少し溶け落ち

ていた


(体全体も毒ですか・・・・)


これは非常にまずい、動きが遅いからとそこまで

防御力も無いからと私は完全に油断をしていた

ハマスの強さは別のところにあったのだ

近づけば毒で溶かされ、体に届いたとしても体の毒で

溶かされる

攻防一体の構えだ、手が付けられない


「ほんとにどうしましょうか」


このままでは勝てない、”このままでは”

この状態ではどんどん体を溶かされてしまいジリ貧だ


「しょうがないですね」


私は意を決する他に選択肢は無いようだ

辺りを少し見渡し、深呼吸をする


「よしっ!」


と気合を入れて私は服を脱いだ

せっかく主様から頂いた服を台無しにすることは

できない


「流石にこの季節だと寒いですね」


服をたたんで地面へと置き、そして最後に

ブレスレットとアンクレットを外していく

もう今はこの手段しか思いつかない


主様からはいつも可愛いねと褒められるこの姿が

変わってしまうのが少し癪だが背に腹は変えられない

せっかく主様の姿を模して作った体がどんどん

変化する

めきめき、めきめきと白い素肌はどんどん毛深くなる

とともに細かった体もたくましくなっていく

アクセサリで抑えられていた力が解放されていく

小さかった身長はみるみる大きくなり、やがてカムイ

としての本来の姿へと戻った


「ガァアアアアアアアア!!」


と久々に戻った解放感から思わず咆哮が出てしまった

3人での修行の成果だろうかカムイとしての姿にも

少し変化が見られ、体が前より大きく、毛並みの艶も

増していた

ハマスよりは少し小さいが、体格差はほぼ埋まった

だろう


(前よりも力が溢れてくる、マギも体に通しやすい)


そんなことを思っているとハマスも相手の変わりよう

に焦りを感じたのか

盛大に体から瘴気と毒液を作り出す

瘴気はルナの元へと届く程の量を出していた


だがもはやそんな瘴気程度ではカムイの体となった

ルナに一切のダメージは無い

聖獣の毛はマギの攻撃すらも防ぐことができるのだ


それが効かないと判断したハマスは今度は口にマギを

かき集め始めた

口元にはどんどん紫色をした球がドロドロと作られて

いく

おそらくは瘴気や沼と一緒なのだろうがその密度が

違っていた


(流石にあれはまずいでしょうか?)


打たせてはなるまいとすかさずハマスへと距離を

詰めより体重を乗せたまま右手をハマスの頭へと

思いっきり振るった

足は毒沼には浸かってしまうが構うことは無い、

ブレスの方がまずいのは一目瞭然だ


パァアン!っとハマスの顔が半分弾け飛ぶ

それと同時に貯めていた球が上空へと打ち出され、

空中で爆散した

直撃を受けるよりはマシだが、毒が辺り一面へと拡散

し大量の雨となって森に降り注ぐ


足が沼に少しずつ焼かれているがこの程度なら全然

耐えられそうだ


すかさず胴体へと今度は蹴りを放つ、姿が変わっても

やることはいつもと一緒だ

学んだように相手の体勢を崩し、先手を取り続ける

ハマスも抵抗して爪や尻尾で攻撃をしてくるが、

速度が遅すぎて私の相手では無い


逆に降り注ぐ雨の方が厄介だ

ジュウッ!ジュウッ!と森中を溶かし、私の毛でさえ

も少しずつ溶かしていっている

直撃を食らっていればタダでは済まなかっただろう


(このままじゃ、森がなくなってしまう!)


自分自身にはマギでの防御があるためさほどの

ダメージにはならないが森はそうではない

私も聖獣として森が傷ついていくのは悲しかった


急げ!、急げ!


ズシンっ!ズシンっ!と胴体、前足、後ろ足と連続で

攻撃を加え、ハマスの体をバラバラに引き裂いていく

ハマスの体は腐敗しているからか、私の力が上がった

からか非常に脆かった

一発殴れば、一発蹴れば、その度に体の一部が

どんどん削れていく


だが、森はあらゆる毒の飛散によって死滅していき、

いつしか辺りの草木はほとんど無くなってしまって

いた


その光景を眺め少し悲しくなりながらも、地面に這い

つくばるハマスの方へと目をやる


(これでもまだ死なないのですね)


死霊と化しているハマスには肉体的なダメージは無い

のだろう

痛みも感じず、ただそこに手や足がとりついている

だけなのだ

そんな龍も攻撃を受け続けている間、必死に守って

いる部分に私は気が付いていた

体をどんどん削っている間に見え隠れしている心臓、

その心臓の中からドス黒い光が発光している

おそらく魔石だ

ハデスはこの龍を最高傑作と言っていたし、きっと

特別に仕立て上げられたのだろう



狙う場所は決まった


グルルッ!っと低く唸り、さらにマギを放出していく

そして、四肢をもがれた龍へと最後の攻撃を仕掛けた


ハマスは首だけで何とか抵抗をしようとするものの、

私はその首に噛みつき動きを止める

体だけでじたばたするハマスにマギを込めた右手を

一気に心臓へと突き立てた


ザシュッ!


っと心臓を突き破り魔石に手をかける


「ガァアアアアア!」


ハマスから特大の咆哮が響き渡り空気を振動させた

私はその魔石をグッと握りしめ思いっきり引き抜き、

大きく後ろに下がって距離を取る

手には大きな黒い魔石が発光していたが、やがてその

光はどんどん失われていき、

パリンッと砕け散った


「ガァ、ガァ」


とハマスは苦しむように首を地面へと横たえる

弱々しく息をしていたがやがてその声は聞こえなくな

り、残っていた体はどんどん溶けなくなっていった


そんな姿を見た私はやるせない気持ちでいっぱい

だった

辺りを見回すと森は溶けて散々な状態になっている

自分で守ってきた森を自分の手で壊してしまった龍に

憐れむばかりだ


(あなたもこんなことをしたかったわけではないで

しょうに)


私は一礼だけして元の場所に戻るのだった



(少しばかり時間が掛かってしまいましたね)


人の姿に戻った私は自分の体を見る

ところどころ肌や髪が焼けただれてはいるが、

動くのに問題はなさそうだ

主様から貰った服を着なおすが、袖が無くなって

しまったことや少し溶けてしまったことに悲しくなる


「せっかく頂いた服が・・・」



はぁっと溜息をついたその時だった


ズドオオオオオオン!


遥か遠くから凄まじい衝撃と爆音が鳴り響いた

音がする方向へ振り向くと、そこには空から降り注ぐ

一本の光の柱が見えた

その柱から感じ取れる大量の魔力に


「主様のじゃ・・・ない」


私は胸騒ぎがした

あの主様が、絶対的なマギの量を誇る主様が負ける

はずが無い

そう思ってはいるが、胸騒ぎが収まらない

やがて光の柱は消え去り、こちらへも爆風が届いた


「いかなきゃ、いかなきゃ!」


私は急いで主の元へと駆け出した




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