第21話_ルージュ完全敗北2
~ルージュside~
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私は夢を見ていた
龍族の国で暮らしていた時の夢を
父イドラは紅龍の中でも飛びぬけて強く、いつしか
龍族の王になるまでになった
母親ルベルも龍の中では強さこそそこまでだが、
その代わり美しい容姿をしている
イドラはそんなルベルに一目ぼれをし、私が生まれた
そんな私は生まれた時から厳しい教育を受けてきた
世界の歴史や強くなるための訓練、龍族とはどういう
種族なのか
父や母に厳しく躾けられ、今では国の中でも私に勝て
る者はそうそういない
そのせいで友達と呼べるものが誰一人としていな
かった
他の子達が遊んでいる中、私は勉強や訓練に明け暮れ
ていた
私は孤独だった
誰とも対等に話をすることもできない
一人寂しい毎日を送る私を父は良く励ましてくれた
「いいかいルージュ、強くなることは同時に孤独にも
なるということだ
私も昔はそうだったが、今では対等に渡り合える
友が少しはいる
いつかルージュもそういう人と巡り合える、という
か巡り合うことができただろう?
ほら・・・」
イドラは指を指す
そこにはステラとルナの姿があった
「お前にも友ができただろう
龍族の誇りも大切だが、そういう友は二度と手に
入らないかもしれない
だから行ってきなさい」
そういって私の背中を押してくれた
自然と足は二人のもとに向かって歩き出し、次第に
走り出す
私は二人に飛び込んで、抱きしめた
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目をゆっくり開けると
目の前にはルナの顔があった
またこの光景か
ルナに膝枕をされ、また顔を覗かれている
「おはようございます、気分はいかがですか」
微笑むルナの顔
体中に大量に流れているステラのマギ
「・・・・・・・・・はぁぁぁ」
私は盛大に大きな溜息をついた
また体中が凄く熱くなっていてフワフワする
だが前まであった苦しさは全て吹き飛び、今では
体がものすごく軽い
「それで?どのくらい流し込まれたのかしら?」
「主様がマギを流せなくなるところまで・・・
つまりルージュの体が満足するまでですね」
龍の体全てに行きわたり、魔石内部まで満タンとも
なると相当な量のマギを流し込まれたのだろう
「そう・・・・もう諦めるわ」
ここまでされてしまっては元には戻れないだろうし
「フフッ」
ルナはニコニコと微笑み、髪をさらさら撫でてくる
「なによ?なんか文句ある?」
「いえ、私は嬉しいのですよ
ルージュが味方になってくれたら安心できます
一緒に主様を守りましょう」
「当たり前よ
友達を助けるのは
それにステラがいなくなったら・・・
ごにょごにょごにょ」
ステラがいなくなってしまったら私たちはどうなって
しまうのだろう
マギの供給源が無くなったら死ぬのかな
そんなことを考えていたら、
チュッ
っとおでこにキスをされた
「な、な、な、なにするのよ!」
顔が真っ赤になる
「親友の証ですよ」
ルナはニコニコと微笑んで言うのだった
~ステラside~
「できたぁああああああ!」
ステラが知らない間にルージュが陥落したころ、
ようやくマギを扱うコツを得とくした
それはステラが考え抜いてたどり着いた、言わばマギ
を使うための究極系だろう
今までは経路上で魔力と気力をちまちま織り交ぜ
ながらマギに変換していた
そのため、どっちも意識して操作する必要があった
しかし、今回は経路上では無く魔力が作られる魔石
内部で最初からマギにしてしまえば良いのではという
発想だ
そうすれば経路に流れてくるのは最初からマギになる
常々マナ吸収をしていたステラにとって、やるのは
割りと簡単だった
マナを気力に置き換えればいいだけだからである
私は何回も反復練習を繰り返した
体中にある気力を全て魔石の中にぶち込んでいく
その中で何が起こっているかはわからないが、マナと
気力が同時に取り込まれることで
魔力では無く最初からマギになっていると予想する
やはり体から流れてくるのは最初からマギに
なっている
「やったぁああああ!」
はぁはぁ、と地面に寝っ転がった
長かったけど、なんとかうまくいってよかったぁ
しかし、ステラは知らない
自分自身が生物の枠組みから外れてしまったことに
どんな生物であっても最初からマギを生成する機能は
持ち合わせていないのだ
言い換えれば、生物としての進化に近いかもしれない
そこに近づいてくる二人
「あ、ルージュ、体は大丈夫?」
少しフラフラ気味で顔は赤いが、だいぶ調子は
よさそうだ
「ええ、助かったわ、ありがとう」
彼女は手を差し伸べ、私を立ち上がらせてくる
そして、ぎゅっと抱きしめられた
「ど、どうしたのルージュ」
「なんでもないわ、なんでも」
彼女はいつもの元気とは裏腹に少ししおらしくなって
いる
元気が無いときは誰でもそうなってしまうのだろう、
龍族も例外ではないらしい
だから私もぎゅっと力を入れて抱きしめ返した
「それより、あなた、雰囲気変わったわね」
「そう?」
自分ではよくわからない
ルージュとルナは私の全身を舐めまわすように見て
きた
「な、何か変?かな?」
じろじろ見られて恥ずかしい
「そもそも髪の色が変わってるし、目の色も変わって
るわよ
でも、前の時と違って魔力暴走でもなさそうだし」
「マギのせいかな?私的にはなんともないから」
「前よりも力が増してる気がします
近づくだけで、肌がぴりぴりしますね」
とルナからの感想
「まずいわね、無駄は無くなってそうだけど
常にそんな状態でいたら誰も寄り付かなくなって
しまうわ
私たちは問題無いでしょうけど・・・・
隠す技術を身につけましょう」
自分ではわからないが、二人から見るとよっぽど
らしい
私の修行はまだまだ先が長いみたいだ
そして3人の修行はしばらく立って、雪がちらちらと
降る季節になった
それぞれが毎日頑張ったおかげか、だいぶ成長する
ことができている
その中でも大きく成長したのはルナだろう
今ではルージュと1対1で互角の勝負ができるように
なっている
(人型の状態ではあるが)
ただルージュは魔法も使える分、戦略的な部分でまだ
上のようだ
ルージュも確実に強くなっていはいるが、ルナや私と
違って伸びしろが小さい
「やるわね!」
「そろそろ龍の姿に戻ってもいいのですよ?」
二人はいつの間にかライバルのような関係になって
いた
あれからどちらが私のマギを多く吸えるかや、魔物の
討伐数、料理対決
ことあるごとに二人は争っていた
だけどお互い認めあっているのか、仲はとても
良かった
「そろそろ冬かー、どうしようかなー」
ちらちらと雪が降る中、そろそろ最初の目的に戻って
もいいかもしれない
今はかなり脱線してしまい2ヶ月近くは時間が過ぎて
いる
そろそろ出発するかー
そんなことを考えながら、ユリの修復作業を行って
いた
「よし、完成!」
久しぶりに自分の衣装に袖を通す
「やっぱり一番しっくりくるなー」
鼻歌を歌いながら思わずくるくると回ってしまうの
だった
夜は3人でお風呂に入った
「今日も疲れたわねー」
今ではルージュもお風呂を気に入ってくれて毎日
入っている
私はそんなルージュの裸を見て思うところがあった
身長はそこまで変わらないはずなのだが、胸が私より
一回り大きい
じーーっと見つめていると
「な、なによ」
「いや、ちょっと・・・」
大丈夫、私はまだ9歳、これからだ、これから育つ
はず
今度はルナの方を見る
ルナは私を模倣した人型のはずだ
チラッ
あれ、私より大きくないか?
「ルナ、ちょっとこっちきて」
「なんでしょう」
ざぶざぶと近づいてきた
「ちょっと失礼」
むにっ、むにむにむにむに
「あ、主様!」
むにむにむにむに
やっぱり私より大きい
スーン
「なんで私を模倣してるのに、私より大きいのよ・・」
そんな光景を見ていたルージュは
「なんだ、胸の話か、人間はそんなことで張り合う
のね、馬鹿みたい」
「フーン、そういうこというんだ
そういう人にはお仕置きです!」
マギで水を操りルージュの体を揉みしだく
「ちょ、ちょやめ、やめーーーーーー!」
それからルージュの体を散々弄んだ
彼女は端の方でくったりと横たわっている
「あーすっきりした、そろそろ上がろうか」
そんなルージュを放っておき、ルナとお風呂を
上がった
「そういえばルナ、そろそろ旅を再会させようと思う
んだけど」
「私は構いませんが、ルージュは・・・」
ぐったりと横になっている彼女をルナは見た
しかし、彼女はちゃんと目を開いて、空を見上げて
いる
「ルージュも行くよね?」
私がそういうと、彼女は少し時間を開けてから
「わたしは・・・行かないわ」
え、行かないの?っときょとんとしてしまう
「私には、お父様に任された仕事があるもの」
そういえばここに来た時、この森を守ることだと
彼女は言っていた
「本当に良いのですか?」
ルナの問いかけに彼女は体を起こしながら答える
「良いも悪いも、私は最初から任されたこそここに
いるのよ
それを放棄して勝手に離れることはできないわ」
「そうですか・・・」
せっかくできた友達
これから3人で旅をするんだろうというわくわく感が
打ち砕かれた
しゅんとなってしまうステラに
「でも、そのうちあなたたちに会いに行くわ
必ずね、約束よ」
少し悲しそうにほほ笑みながら彼女は言うのだった