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第19話_それぞれの思惑



ルージュの朝は早い

この森の守り手となってからは、毎朝森に異常が無い

かを確認している

どんなに昨日遅くに寝たからと行って、起きる時間は

変わらない

ルージュは口は悪いが、根は真面目で良い子なのだ


むくっと起き上がるとまだ陽が見え始めた頃だろう

隣を見ると少女が二人気持ちよさそうに寝ている


私は服を脱ぎ見回りの準備を始めた


「ルージュ様、お出かけですか?」


後ろから声を駆けられ、少しビクッと体が震える


「ルナ、起こしてしまったからしら?

 ええ、見回りをしてくるわ、日課だから

 あと様はいらないわよ」


「そうですか、お気をつけて」


「ええ、行ってくるわ」


そういうとルージュは龍の姿へと戻り少し離れた

ところから静かに飛び去っていた



ルージュは森の上空をいつものように飛ぶ

ただいつもとは違い、考えていることは全く別のこと

昨日ステラと戦い、始めて敗北を味わった

その戦いを思い出しながら


(9歳・・・かぁ

私が今までサボってきたというのもあるけれど

でもそれは言い訳・・ね)


私は龍として情けない

ステラの話だと、毎日修行し勉強し、これまで

たくさんのことを積み重ねてきた

本人はなんとも思っていない様子だったが

人間ごときに負けたというのもあるが、人生の全て

を努力してきたからこそ私に勝つことができたの

だろう

確かにステラは化け物級の強さではあるが、自分も

まともに鍛錬を積んでいれば負けることは無かった

と思う


ただ、それをしてこなかった

負けは負け、結果が全てだ

そしてその結果は自分が招いた怠惰によるもの


(私は龍よ!、次は負けない!絶対に負けない!

・・・・・・・

・・・・・

クスッ、反省したのなんていつぶりかしら)


負けてはしまったけれどあそこまで白熱した戦いは

初めてだったし、いっそすがすがしい気分でもある


そして新しくできた目標に向かっていくことが

こんなにわくわくするものだとは

思っていない赤い龍の姿そこにはあったのだった




ルナはルージュが飛び去った後、ステラのもとへ戻り

気持ちよさそうに眠るステラを見て、隣に再び寝なお

した


私は主の顔を覗き込む

白い髪の毛はさらさらで肌は白くてスベスベ、

いつのまにかステラのそこら中を撫でまわしていた


(はっ!、私はなんてことを)


だが、手は止まらない

背中や柔らかな太もも、手は吸い込まれるように勝手

に動いてしまう

そして最終的にはぎゅっと抱きついてしまった


(主様・・・)


ステラから流れてくるマギは凄く気持ち良かった

自分の体に溶け込み、体の内側からぽかぽかと温めて

くれる


(主様、ルナが一生ついてきますからね)


ルナも昨日の戦いを思い出していた

最後自分が間に合わなければおそらく主様は死んで

いただろう

それを思うとぞっとする


(これからは必ずお守りしますから)


そう思いを馳せながら、ステラを抱きしめるのだった



それからしばらくして私は目を覚ました

目を開けると目の間にはルナがいて、ぎゅっと抱き

しめられていた

顔がものすごく近い

ルナはもう起きていて、目線がピッタリあった


「あ、ルナ、おはよう」


「お、お、おはようございます、主様!」


ルナは顔を真っ赤にして私の胸の中に埋めてきた


(可愛い)


「よーし、よーし」


私はルナの頭を撫でる

ルナの髪の毛はフワフワなので凄く気持ちが良い

撫でる手が止まらないくらいだ


しばらくルナの髪の毛を堪能してから私たちは起き

上がる

ルナの顔はまだ真っ赤に染まっていた


「あれ、ルージュわ?」


「見回りと言って、朝早くから飛んで行ってしま

いました

 そのうち戻ってくるかと思いますが」


「そう、ならご飯の準備でもしようか」


ご飯の準備をしている最中、私はこれからのことに

ついて少しルナと話した


「しばらくルージュにマギについて教えてもらおう

と思う

 昨日、ルージュと戦ってみてまだまだだなって

 ルナはどう思う?」


「私は主様が行きたいところについていきます」


(もう、主様無しでは生きていけないし

いっそのことルージュもこちら側へ引き込むことは

できないだろうか)



「ルナ、ありがとう」



私の修行もまだまだということを昨日思い知らされた

しかし、ルージュと一緒にいればまだまだ強くなれ

そうな気がする

帰ってきたら頼んでみよう


ご飯の準備がちょうど終わるころ、ルージュは帰って

きた


「あ、ルージュ、お帰り」


ルージュは人の姿に戻り、着替えを済ませた

私が上げた服は気に入ってもらえたらしい

まぁ、お師匠様が作ってくれた服だけど

そんな着替えをしているルージュにステラは早速切り

出した


「あのね、ルージュ、お願いがあるんだけど」


「ん?何かしら?」


「私にマギの使い方を教えてもらいの

 修行を付けてもらえませんか?

 お願いします」


ステラはいつもの口調とは少し違い丁寧にお願いした

そんな彼女のお願いにルージュは心が踊る

空を飛びながらどんなことをすればもっと強くなれる

のだろうか、

悩んでいる真っ最中だった

そんな時に、ちょうどよく都合のいい相手が申し出を

してきてくれたのだ


「いいわよ、私も相手が欲しいと思っていたから」


快く引き受けてくれたルージュに私は感謝した



ご飯を食べながらルージュはマギについてある程度の

ことを教えてくれた

そもそもな話、使える、使えないは体の作りに大きく

影響するらしい

遺伝とも言えるだろう

使える物の多くは魔力量が総じて多く、頑丈な体質で

気力がしっかりと保てる体なのだとか

人間の場合寿命が短いし、体が弱いというのがあって

かどちらか一方になりがちのようだ

しかし、龍種や聖獣といったように生まれつきから

どっちにも恵まれている種族にとっては最初から使え

てしまう、とのことだった


ステラが人間であるにも関わらずそのどちらも得とく

することができていたのは小さい頃から魔力を鍛え、

肉体改変をし続けた結果だろう


「つまり、あなたが異常なのよ」


むしゃむしゃとお肉を食べながらルージュは言い

放った


「そもそも肉体を破壊する行為事態が異常だわ

 普通の生物なら防衛本能が働いてやろうとさえ

しないわよ」


「まぁ、私の場合魔力が多すぎて死にそうだった

からね

 どのみちやらなきゃ死んでたよ?」


そう笑いながら答えるステラに


(精神的にも強いのね、恐れ入るわ)


「主様は凄いのです」


「あなたが威張ってどうするのよ」


3人はクスクスと笑い合った



それから3人の修行は始まった


ルージュを前に私とルナは隣同士で立つ

はたから見れば師匠と弟子の構図だ


「まずは二人ともマギをなるべく多くだして

ちょうだい

 私と戦っていた時くらいで良いわ」


ルージュの問いかけに私とルナは見つめあって頷いた


魔力と気力を織り交ぜ少しずつマギを放出していく

次第に体は発光し始め、髪の毛は淡く赤くなり、目の

色も輝き出した


「そこで一旦止まって!

 ・・・・・・・

 あー、うん、そうね

 ルナはとりあえずそれでいいわ

 だけど・・・ステラはダメね」


いきなりダメ出しを食らってしまった


「え、何がダメなの?」


「マギの操作、いいえ、魔力の操作はずば抜けてるわ

 ただ、大量の魔力を消費して無理やりマギに変換し

てるでしょ?

 燃費が悪すぎるわ

 それだと放出量が多いだけで、1/10の力も発揮でき

ないわよ」


ルージュの指摘は適格だった

私よりも何十年も多く生きているのだ、もしかしたら

お師匠様よりも

経験の差は歴然だ


確かにルージュのいう通り、大量の魔力を気力に無理

やり混ぜこませてマギを作り出している

だから大気中からマナを多く吸収し、魔力暴走気味に

なってしまっているのが現状だ

しかし、それしかやり方を知らない


「なんて言ったらいいのかしら

 二つのものを別々のもとして考えるんじゃ無くて

 一つのものとして考えるのよ

 最初からこれで一つって思うのが良いかしらね」


ルナにできて、私がダメな理由

そこには人間と聖獣という生まれつきの開きがあった

私は最初から同時に混ぜて使っていたわけでは無く、

1つ1つで使っていたからマギの使い肩を間違っていた

のだ

二つで一つ、ルージュはそう言いたいのだろう


考えている間に私の眉根は寄せられ難しい顔になって

いたらしい


「考えていても仕方無いわ

 慣れよ、慣れ!

 最初から一つだったって、体に思い込ませるしか

ないわ」


「頑張ってみる・・・・」


「ルナはそうね、

 マギの量を底上げするところからかしら

 今のままだと瞬間的には強いかもしれないけど

 持続しないわね」


「わかりました、やってみます」


ルナもルージュの指摘を快く受けるようだ

魔物同士の関係性は良くわからないが、別種の意見に

争い事が起きなくてとりあえず一安心である


「とは言ったものの、量を増やすなんてわからないの

よね

 そこはステラの方が詳しいのかしら」


「うーん、私のやり方は魔力を大量に吸収して、

魔力暴走気味になったところで我慢するっていう

無理やりなやり方だし

 気力も体を壊しては作り直すっていう無理やりな

やり方だし

 参考になるかわからないなー」


そんなことをいう私に


「無理やりっていう自覚はあったのね」


っと飽きれるルージュであった


「それについては、私にいい考えがあります

 ルージュが受け入れてくれるかはわかりませんが」


そこまであまり言葉を発してこなかったルナからの

提案だった


「いいわ、言ってみて」


一呼吸置いてルナは提案する


「主様から大量のマギを流し込んで貰うのです

 ゆっくりにはなりますが、量を上げれます、

実体験です

 それに主様の特訓にも繋がります」


そうルナは言い放った

確かに、ルナはときどき私のマギを好き好んでわざ

と吸っている

ただそんな効果があったとは知らなかった


「ああ、あなた達そんなことをやっていたわね

 どんな感じなのかしら、私も興味あるし・・・・

うん、いいわ、しばらくはそれでいきましょう」


チラッとこちらを見ながらルージュはルナの提案に

賛成する



しかし数年後、ルージュはこの提案に乗ってしまった

ことを後悔することになる

もう少しよく考えるべきだったと・・・


ルナはルージュが提案に乗ってくれたに一人微笑む

のだった




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