第18話_女子会
「う、うぅぅん」
パチ、パチパチ
目を開けると青空が見えた
頭には柔らかな感触
「あ、主様、おはようございます」
真っ白な少女が目の前で見下ろして来る
私はその少女の頬に手を当てて
「ルナ、おはよう」
とペタペタと顔の周りを触り
むにむにと頬っぺたを動かす
「ふぁるじさまぁ?」
「本物だ」
どうやら私はルナに膝枕をされているらしい
ふわふわな太ももは凄く心地よく、ルナからはお日様
の香りがした
「ルナ、どうして戻ってきたの?」
「主様、酷いです、最初からついていくつもりだった
です
ルナは置いて行かれたです」
ルナは困惑顔だった
「え、そうなの?凄く迷ってた見たいだったから、
てっきり」
「ああ、でもルナも何も言えなかったので・・・・
でも間に合って良かったです」
にっこり微笑んで、頭を撫でてくる
それがとても心地よかった
話を聞くと、一度戻って父親と話を付けてきたらしい
そこで人里に行くならと人の姿になれる道具を貸して
くれたとか
「ところで、私にそっくりなのは気のせい?」
髪の毛は真っ白だし、背丈もほぼ一緒である
違うといえば目の色が青いところと髪の毛の長さが
肩までしか無いところか
「え、うぅ、その、主様ぐらいしか人間を見たことが
なくて・・・
ダメでしたか?」
頬を赤らめながら、困った顔をしている
(可愛い)
「全然!私も姉妹見たいで嬉しいよ!」
そういって腰に抱きついた
ルナはブレスレットとアンクレットを両腕、両足に
付けていた
話によると全部付けることで人間に化けることが
できるらしい
まだまだ未熟で自分の力だけでは化けることが
できないとのこと
出発の準備をして戻ってきたら私がいなくなっていて、
私の痕跡を探りながら山を登っていたら、山頂から
大量の魔気力や、爆音が聞こえ始め焦って追いついて
きたらしい
そういった積もる話をして、私たちは再会を喜びあい
「ごめんね、置いていったりして、これからも
よろしくね」
と二人は抱き締め合った
「そろそろ、起きるよ、どれくらいたった?」
ルナの膝を惜しみながら、致し方なく体を起こす
「2時間くらいでしょうか」
辺りを見回すと紅龍との激闘の後が見える
地面が抉れたり割れたり、山が吹き飛んで無くなって
いたりとその光景を見ると良く自分は生きていたなと
関心してしまった
そしてふと目に止まったのが、全裸で倒れている赤毛
の女の子だ
「ルナ、あれは?」
その赤毛の少女を指さす
「ああ、さっき戦ってた龍さんですね
主様が倒れてからすぐにあの姿になられてました」
どうやら紅龍らしい
昔の本では伝説と称されている紅龍
その伝説が全裸でうつ伏せのまま倒れていた
「死んでないよね?」
少し冷や汗が流れる
喋れる魔物を殺してしまったとなれば気分が悪い
最後は腕を一本持って行ったものの、殺すまでには
至っていないはずだ
「確認しましたけど、生きてます」
私たちは少しづつ彼女へ近づいた
そしてうつ伏せで倒れているのを仰向けに治す
少女はすぅすぅっと寝息を立てていた
奪った腕もちゃんとあり5体満足で寝ている
まずは一安心だ
しかし、そんな赤毛の少女の見た目は私たちよりも
少し年上の美少女だった
顔は小さく綺麗に整っていてまつ毛も長い
髪の毛も背中まであり、さらさらつやつやだった
ルナもそうだが、魔物が人化すると皆美人になるの
だろうか
「とりあえず、今日はここで一泊しようか
まずは吹っ飛ばされた私の荷物を探さないと」
「そういえば刀を持っていませんでしたね」
私は少し恥ずかしくなって顔をそむけてしまった
まさか、一番の武器を戦う前から吹き飛ばして、
無くしていたなんて言えない
あの刀があればあそこまで追い詰められることも
無かったはずなのだ
「ちょっと戦ってる最中に吹き飛ばされちゃって」
それから二人で道具を探し、無事に刀を見つけること
ができた
特に傷も無く一安心だ
他にも調理道具も無事なものはあったが、唯一突撃
された時に使っていた金属プレートはへしゃげて
曲がってしまっていた
「これはもう使えないかなぁ」
せっかくお師匠様が用意してくれものだし、記念
として指輪の中に保存した
それから二人で野営の準備をした
ルナはご飯の調達、私はお風呂の準備やら全裸の
少女に布を被せてあげたりした
ルナはとても優秀だった
おいしそうなお肉やら、山菜やらを時間を駆けず
取ってきてくれた
流石はカムイと行ったところだろうか
人の姿になってもその能力だけは変わらないらしい
陽も暮れ始めたところで夕食の準備を始める
鉄板が無くなってしまったので、細く切った棒に
取ってきて貰った食材を刺して焼くことにした
ジューっと油が滴り、食欲をそそる音がなり始める
「へっくちゅん!」
ぐぅぅぅうう
とどこからともなく腹の根が聞こえてきた
むくっと赤毛の少女が起き上がる
そして辺りを確認したところで私達と目が合った
「あなたも食べる?」
私もだいぶのんきな性格をしていると思う
ついさっきまで死を争っていた相手にご飯を差し
出しているのだから
ちょうど良く焼かれた串焼きのいい匂いに紅龍は
少しづつ近づいて来る
ゴクリッ
っと喉を慣らしたところで首をぶんぶんと振った
「人間からの施しなんて受けないわ!」
そういってぷんッっと顔をそむけてしまった
ぐぅぅうううう
私とルナはクスッっと笑った
「いいからいいから」
と少女の前に串焼きを置く
ちらっ・・・・・・
チラッ・・・・・
パクッ
っと勢い良く食らいついた
「おいしいでしょ?」
そうしてステラは紅龍への餌付けに成功したのだった
夕飯を食べ終わり、私とルナはお風呂に入った
「ふぁあ、生き返るー」
ルナは恐る恐ると足からお湯の中に入る
「これがお風呂、癖になりそうです!」
(ルナって私より大きいのね・・・)
そんな二人の気持ちよさそうな光景をまじまじと
見つめる少女
いいなぁ、入りたいなぁ、という欲望が顔に見える
「あなたも入ったらどう?気持ちいいよ?」
「だ、だから、人間の施しは受けないって、あれほど、
わぷっ!」
私はめんどくさくなったのでワイヤーで少女を
引っ張った
どうせ龍の体をしていたのだ、さほど荒っぽくても
問題あるまい
「ぷはぁーッ!何するの!」
ざぱぁと頭をお湯から引っこ抜いて抗議する少女
「いいから、いいから」
そう優しくさとし、3人一緒にお風呂に入るのだった
お風呂から出て着替えようと思ったが、つい最近まで
着ていたはずのユリは一日にしてボロボロになって
しまった
「しょうがない、違う服を着るかー」
他にも服は用意していたが、お師匠様の趣味で
作られた服にはフリフリのフワフワな服しかなかった
旅で着用するには似つかわしく無いが、何も着ない
よりはましだろう
自分の服を出すついでに、ルナ用の服と紅龍用の服
を準備してあげた
「わぁ、主様可愛いです」
「ルナも可愛いよ
さて、あなたもね!」
どうせまた文句しか言わないだろうからと紅龍には
無理やり着させる
「うん、あなたも凄く可愛いよ!」
にこっとステラは微笑んで頭を撫でてやった
もはや3人組の中の長女と化しているステラである
「ルー・・・」
「え?なに?」
「ルージュ!、あなたじゃなくて、私はルージュって
いうの!」
紅龍の名前はルージュというらしい
あれ、でも本にはイドラって書いてあったような
「あれ、紅龍ってイドラっていうんじゃ」
「それはお父様の名前よ!私は娘なの!」
ぷいっと顔をそむけてしまった
なるほど、それで本に書いてあったことと全然違った
わけか!
そうステラは一人で納得していた
「ごめんね、ルージュ!私はステラ、これから
よろしくね」
「私はルナなのです」
3人はようやくそれぞれ自己紹介を済ませた
3人は焚火を囲うように座った
「ところでなんで聖獣と人間が一緒にいるのよ」
ルージュの口調は少しきつめだが、これが普段通り
らしい
そんな彼女の質問にステラはかくかくしかじかでと
道中であったことを話す
「気になってたんだけど、聖獣ってなに?」
素朴な疑問だった、お師匠様からも教えて貰ってい
なかったため良く知らない
「はぁ?そんなことも今の人間は知らないのね!」
それから偉そうにペラペラとルージュは語り始める
要約すると聖獣はこの星を守っている獣らしい
聖獣が絶滅すると星が滅びるのだとか
「へぇ、ルナってば凄いんだね!」
そういうとルナは顔を赤くした
(可愛いい)
「んで、人間・・・ステラはどうしてこんなところ
にいるのよ
普通じゃあ人間なんてこんなところ来ないわよ?」
「私?私かぁ、話すと長くなるなぁ」
「いいから話しなさいよ!」
ルージュは性格の割りに知りたがりのようだ
私は生まれてからの話を掻い摘んで話をした
お師匠様と暮らしていたこと
修行して強くなったこと
そんなお師匠様が死んでしまって自分の道を探し
始めたこと
ルナと出会って、ルージュに襲われたこと
全て話が終わる頃には話を聞いていた二人の目には
涙が浮かんでいた
ルナは隣に来て抱きしめてくれた
「あんたにもいろいろあったのね・・・・・ぐすっ」
以外にもルージュは涙脆かった
「だからマギも使いこなしてるわけか」
「あっ!そのマギってなに?」
「ああ、あんたの話だと魔気力?っていうのがマギよ
聖獣や私たちも使ってるわ、ただ今の人間で使える
のは・・・見たことないわね!
昔から生きてる魔物や生物なんかは普通に使ってる
わよ」
今の人間は・・か、確かにお師匠様も自分で使うこと
はできないって
言っていた気がする
そもそも、魔力と気力は相反するからって
「そうなんだ」
「だから私も久々に強そうなのがいるって思って興奮
してしまったわ
だから、その、ごめんなさい!
やりすぎてしまって」
ルージュは口は悪くても素直でいい子だった
「私の方こそ、腕、やっちゃって、ごめんね」
「いいのよ、そのうち生えてくるし、先に嗾けたのは
こっちだし」
顔を赤くしてそっぽを向くルージュもまた非常に
可愛らしかった
「それでルージュはなんでこんなところを縄張りに
してたの?」
今度は私から質問してみた
「ああ、この森にはね、たくさんの聖獣が住んでる
のよ
お父様からはそれを守ってこいって言われてね」
ルージュもかれこれこの山に15年近くいるらしい
お師匠様がちょうど通り過ぎた辺りに来たみたいだ
「ところであんたたちって何歳なの?」
「9歳」
と私が
「11歳」
とルナが
「え、ルナって私より年上だったの???」
てっきり下だと思っていた
そんな会話の最中一人震える少女
「っでルージュわ?」
わなわなと震えている
「もう50歳過ぎてるわよぉおおおおおおお!!」
ウワァアアアン!
と泣き始めてしまった
あまりにも二人が若すぎたためというのもあるが、
9歳の少女に敗北したというのもショックだったの
だろう
ステラは少し大人びているし、9歳には見えない
ため勘違いしていたらしい
そんなルージュは大泣きした
ステラとルナはそんな可愛そうなルージュに
くっつきながらおしゃべりをしつつ夜を明かしていく
(9歳も50歳もあまり変わらないなぁ)
と少し酷いことを思ってしまうステラであった