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第17話_VS 紅龍



私の目の前に現れたの紅龍だった

目を見開き良くその姿を確認する


「紅、龍・・・イドラ」


ゴクリと齧っていた肉を飲み干した

体長はルナよりも遥かに大きく、2倍近くは

ありそうだ


昔お師匠様から読み聞かせて貰った本の中にも登場

する伝説級の魔物

その残された本の特徴から間違いはなさそうだ


ゆっくりと叩きつけられた体を起き上がらせ、面と

向かう


「人間とはめずらしい、久しぶりに見たわね」


え、喋るの?龍って喋るの?

私はそんな龍の第一声に驚いてしまった

本には喋っている記載はなかった、しかも声からして

メスではなかろうか


「えーと、その、初めまして!」


とりあえず相手を刺激しないようにいこう

おそらく私では相手にすらならない


「あら、私を見て恐怖しないのね」


そういうと私をじっと見つめてきた

黄色い目の中の黒い瞳が細められる


「へぇ、あなたもマギを使えるの、久々に面白そう

だわ」


そういうと紅龍はにやりと笑ったような気がした


マギ?マギってなに

首を傾げていると紅龍は前足を地へとおろし臨戦体制

に入った


「え、ちょっと、待って!」


戦うの?


そうこうしている間に紅龍の口には大きな火の球が

作られている

私が作るよりも何倍もの大きさだ

いくら魔法をある程度防げてもあれは防げる気がし

ない


「ガァアアアアア!」


と紅龍が咆哮すると、巨大な火球が私に向かって

放たれた

(これは、流石に無理!)


っと瞬時に踏み込んで火球を避けるが、逃げ遅れた

髪の毛の先が焼き焦がされてしまう


ドォオオオオオン!


火球は後ろの岩山にぶつかり大きな爆発が上がった

地面を転がりつつ後ろを見ると、今まであったその

岩山は消し飛び、至るところをドロドロに溶かして

いる


あああ、私の髪の毛があああ

髪の先端だけだが消えてなくなっていた


地面を転がりつつ紅龍へと目を向けると口からもく

もくと煙が出ている


(あれだけの火球をだして・・・どうして口は溶けな

いのか!)


ステラはどこかずれていた


しかし、そんなステラでも頬から冷や汗が地面に

足れる

自分の防御を一発で破ってきたのは紅龍が初めて

だった

避けてなければ体丸ごと消し炭だっただろう


(やるしか、ないのね)


そう思って、腰の刀に手を伸ばす・・・・がそこに

刀は無かった


(あ、お昼セットと一緒に下敷きだ・・・)


その普段身に着けていた刀は座る時に取り外し、

今となっては紅龍の腹の下である

刀さえあればまだ勝機はあったが、今となっては

それも叶わない


それも束の間、紅龍の攻撃は続いた

大きな足で地面を踏むと、地面は砕け大きな振動が

ステラの体を宙へと持ち上げる

そこに、何mにもわたる尻尾がステラ目掛けて放た

れた

宙に浮いているステラは身動きを取ることができず、

そのまま尻尾の直撃を受けてしまう


バシンッ!!


なんとか腕をクロスしてガードはしたものの、

そのまま後ろの岩まで吹き飛ばされ


ガハッ!


肺に溜まっていた空気とさっきまで胃に入れていた

肉が一緒に吐き出される


「うぇえ!、はぁ、はぁ」


ドロドロっと全てが地面にぶちまけられる

ガードした腕には傷が入り、尻尾による打撃もやす

やすと防御を貫通してきていた


(かなり・・・まずいなぁ)


打撃による衝撃で意識も飛びそうになる

今までダメージを追ったことが無かったせいか、

痛みに対する耐性はほぼ無い

ユリも袖はだいぶ傷だらけにされてしまった

体へのダメージは大きい、だが


(まだ死ねない、私はまだなにもできてない!)


フラフラになりつつも、伝説級の魔物に向かって

私は構えた

ありったけの魔気力を体中に纏わせて



ステラは今まで本気を出したことがない

本気を出せる相手がいなかったというのもあるだろう

一瞬だけ力を放出することは何度かあったが、

それは微々たるものだった

しかし、今は自分に死の危険が迫ってきている

その体からの警告に素直に従った


外部からもありったけのマナを吸い取った

今では無くなっていたが、体から魔力が溢れだし体が

発光し始める

それと同時に赤色だった目は金色に輝きはじめ、

髪の先端も淡い赤色に輝き始めた


「ようやく、やる気になったわね」


そんな姿を見た紅龍は少し嬉しそうだ


踏み込みと同時に地面が割れ、一閃の光となって

棒立ちの紅龍にステラは突っ込んだ

相手が巨大な龍と言えど、やることは今まで学んで

きたことに変わりはない


瞬時に龍の目の前に近づき、下から上へ思いっきり

掌低を放つ

ステラの全力全開の一撃である


ドォオオオン!!


空間を振るわせる程の衝撃が、龍の体ごと宙へと持ち

上げる

そこへ、体を一回転させ、回転力を乗せたまま回し

蹴りを顔面へと放った

紅龍は反応することすらできず、まともにくらって

しまう


ズシンッ!


そのまま地面へと巨体が転がされるが、ステラの攻撃

は止まらない

そのまま倒れた紅龍周辺の空間を圧縮していく


(つぶしきれないッ、なら)


限界まで圧縮しようとしたが、紅龍事態の身体強度が

かなり強く本体まではつぶしきれない


「いっくよー!『エクスプロージョン』」


思いっきり圧縮した空間へ火球を投げ込む

それと同時に激しい爆発が紅龍をつつみ込んだ


ドォオオオン!


スタッと地面に着地するステラ

紅龍は爆発の煙でどうなっているかがわからないが、

おそらく生きているだろう


「はぁ、はぁ、少しは傷ついてるといいな」


「アハハ、凄い、凄いわね、地面に伏されたこと

なんて生涯ないわよ」


そんな声が煙の中から聞こえてきた

バサッと大きな羽で煙が払われる

紅龍の口元にはうっすらと血が出ているのが見えた


(よし!、ダメージは入ってる)


しかし、全力全開での攻撃でもわずかしか傷付ける

ことができなかった

魔法によるダメージもほとんど入ってはいない


「まだ、やるの?」


もうやりたくない一心からそんなことを聞いて

しまった


「私の縄張りに勝手に入り込んだんだから、やるに

決まってるでしょう?

 まだ始まったばかりよ」


なぜか紅龍は嬉しそうにしている


(まぁ、そうだよね)


私は気合を入れなおした

かつてない程の強敵だ、勝てるかどうかもわからない

だから全力で生きよう


相手も本気で来るようだ

紅龍は自分の周りに大量の火炎球を展開し始めた


(やっぱり魔法も使えるよね)


「でも、負けられない!」


私は相反して水弾を大量に作り出す

話している間に準備は済ませて置いた、昔ぼつにした

作品だけど


「『ウォーターバレット、フルバースト!』」


私が大量の水弾を放つと同時に大量の火炎球が同じく

発射された

お互いの魔法は同時にぶつかり合い、大量の水蒸気を

発生させる


シュワーっと辺り一体に水蒸気が広がった


「これが私の狙いだよ!」


その出来上がった水蒸気を紅龍の上空でまとめ、圧縮

していく


「あなたとの合作になっちゃうのが、ボツになる理由

だけど!」


その水蒸気はぐるぐるとランダムに回転を始め黒い渦

となった


「いっくよー!合作『サンダーボルト!』」


巨大な雷が紅龍へと降り注ぐ


ズドォオン!


「ウガアアアアアアアア!」


紅龍も大容量の雷に打たれたことは無かったのか

思わず声を上げてしまっていた

ズシンッと再び地面へとひれ伏されてしまう紅龍


「はぁはぁ、これで少しは効いたかな?

 やめる気になった?はぁはぁ」


ステラも大量の魔気力を消費したためか地面へ膝を

ついてしまう

目の前には丸焦げになり、痺れて動けない龍の姿が

あった


「ぐぬぬぬ、小娘ごときが!」


紅龍は痺れた体を何とか立て直す

私もマナ吸収のおかげか、ある程度魔力は戻ってきた


あそこまでの大容量の雷であれば紅龍に対しても

ダメージを与えられることがわかった

それでも、まだ余裕のある紅龍に対して勝ち筋が

見当たらない


(せめて刀さえあれば)


辺りを見回すが私の刀は見当たらなかった

どこかに吹き飛ばされてしまったらしい



紅龍は魔法だと分が悪いと思ったのか、肉弾戦に

切り替えてきた

それが一掃ステラに絶望を与え始める


まず体格差が違い過ぎる

紅龍は体を振り回すだけで、ステラに強力な一撃を

与えることができる

対してステラはその攻撃の全てを避けてピンポイント

で頭や関節を狙わなくてはならなかった


攻防は圧倒的にフリだった

ワイヤーで相手の体を切りつけてみるが、硬すぎて

刃が通らない

何とかしばりつけて動きを止めるのが精一杯だ

そうやって私が一撃入れるのに対して相手は2,3撃は

命中させてきている

ユリもすでにボロボロになり機能を果たさなくなって

しまった

しかし、紅龍もここまで戦ったことがなかったのか、


「はぁ、はぁ、しぶといわね」


だいぶ弱っては来ていた

お互い傷だらけである


「はぁ、はぁ、そっちこそ!」


そんな会話に油断させられてしまった

血が流れ、右目に入ろうかとした瞬間を狙われた


尻尾が右側から振られていることに気づくのが遅れ、

攻撃を受けてしまい吹き飛ばされる


ズンッ!


「うっ、ぐっ」


(もう、立ち上がれないよ)


立ち上がる体力もあれだけあった圧倒的な魔気力も

もはや底をつきそうだ

ステラはその場から起き上がることができない


「あなたはよくやったわ、これで終わりにしましょう」


紅龍は口元に火球を作り始める

今あれを食らえば一瞬で消し炭にされてしまうだろう

しかし、私に避ける力はもはや無い


(ああ、お師匠様、ごめんなさい)


こんなにも早くお師匠様のもとへ行ったら怒られる

だろうか

そんなことが頭をよぎる

私は目を閉じた



火球はやがて最大まで大きくなり、こちらへ向けられ

ている


タッタッタッタッタッ


ズシンッ!・・・・ドォオオオオオン!!


遠くで爆発音だけがこだました

目を開くと、そこでは紅龍の口元が白い少女に殴られ、

火球が爆発している光景が見えた


(だれ、だろう)


少しずつ目を見開き、視界が鮮明になっていく


その白い少女は続けて、紅龍の頭に踵落としを

見舞った

ドンっ!

と紅龍は頭を地面に叩きつけられる


(強いなぁ)


意識がぼぉーとしたままその光景を眺める

白い少女は慌ててこちらへと駆けてきた


「主様!主様!」


(主?誰の事だろう、んんんんん?)


よーく見ると懐かしい雰囲気を感じる

でも私にお師匠様以外に知り合いはいない

そこで、はっと気づく、同じ魔気力を感じる


「ル、ナ?」


「主様!大丈夫ですか?」


「え、ルナ?なの?」


「はいっ!遅くなってごめんなさい!」


その白い少女は形、格好は異なれど、ルナだった

白いワンピースを纏い私と同じ髪の色、私より少し

小さい女の子だけれど

伝わってくる魔気力からも間違いは無かった


「ルナっ!ルナァ!」


私はルナをぎゅっと抱きしめ、泣いた

私は一人で寂しかったのだ、死にそうになって

辛かったのだ


「主様、大丈夫です、これからは一緒にいますので」


そういって、ルナは私の背中をさすってくれた


「立ち上がれますか?」


「うん、大丈夫!ルナが一緒ならまた戦える」


涙を拭いて紅龍に目をやる

紅龍はまだ立ち上がれない、体力も消耗しているの

だろう


「お前は、聖獣か?なんで聖獣が人間を主と呼ぶ?」


突っ伏しながらそんなことを聞いてきた

聖獣?ルナのことだろうか


「私は主様に助けられました、だから従うのが獣の

道理です」


「そうか、私もここまでやってしまっては後に引け

ないわね」


そういうと紅龍はゆっくりと立ち上がる


「最後の勝負よ」


掛かってきなさいと言わんばかりだ


「ルナは左から、私は右から行くね」


「はい、主様」


私達はお互いに頷きあい、手を繋いで魔気力を循環

させた

元々は私の魔気力、すぐに同調して力を解放していく


一緒に一気に地面を踏み込み、紅龍へと突っ込む

紅龍もそれと同時に体を回転させて同時に吹き飛ばし

に掛かった


それをルナはギリギリで躱し、ステラの技同様、顎に

掌低を思いっきり放った

浮き上がる紅龍に、今度はステラが蹴りを見舞う

始めて一緒に戦ったのにも関わらず息はピッタリ

だった

ステラは最後の魔気力をふり絞り、溢れた魔気力を

束ね巨大なランスを作り出した


「これで、終わりだぁああああ!」


ランスを紅龍目掛けて突き刺す

紅龍も左腕を前に出してランスを受け止めに掛かった

ランスは掴まれてしまったが、ステラの攻撃はまだ

終わらない

束ねていた魔気力を高速回転させる


「貫けぇえええええ!!」


渾身の一撃は紅龍の左腕を斬り裂きながら腕を丸ごと

もぎ取った


ドォオオオン!!


とランスが激しく地面へと突き刺さり砂埃を上げる


「はぁ、はぁ、もう、立てない」


ドサッっと体ごと地面にダイブする

隣で倒れている紅龍も意識を失っているようだった


「主様!主様!」


駆け寄ってくるルナ

その光景を見て、安心したからか私も意識を手放した



こうして紅龍との戦いはステラとルナに軍配が

あがったのだった



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