第12話_死の森
ステラが家から旅立ち最初に突破しなければならない
のが広大に広がる森だった
別名『死の森』
地図によるとここから遥か西に行くと一個目の山脈
がある
まずはそこを目指さなければならない
この森の中には数多くの魔物が生息している
実戦で多く戦ったのはデスウォルフだったが
カムイ等の非常に強い魔物も多く生息しているらしい
その中でもちょっと厄介だったのが、
インビジブルラビットだ
力がそこそこあり主に蹴りで攻撃してくるのだが、
常に消えているため目で見ることができない
そして、今まさにそのウサギにステラは苦戦を
強いられていた
ヒュンッ、ヒュンッ
と今も敵が近くにいる
相手が高速で移動し、空気を切る音は聞こえるのだが
目に見えないためどこから攻撃してくるのかがわからない
そして
バシンッ!
と背後から背中を蹴られてしまう
しかし、いくら蹴られてもステラの魔気力で固められ
ている防御を貫くことはできないようだった
ただ体制を崩されるぐらいの衝撃はある
「うっとうしなぁ、もう
そもそも見えないなんて卑怯じゃん」
そう悪態をつきながら周りを見回す
バシンッ、バシンッ!
と蹴られる回数も増えてきた
おそらく一匹だけではないのだろう
そして、何匹から攻撃されているのかわからない
から厄介である
「うーん、何か良い方法はないかなぁ
火だと森が燃えちゃうし、水だったら優しいかな?」
そう考えてから、自分の上空に手を翳し水を集め出す
魔力を操作している間も蹴り続けられている
だが、そんなのはお構い無しだと言わんばかりに
ステラは棒立ちだ
木々の上では大量の水が生成され始めた
そして集めた水を丸ごと圧縮して強度を高めていく
「いっくよー!ステラ作
『ウォーターバレット、フルバーストォオ』」
それを雨のように一気に地面へと放った
大量の雨が弾丸となって地面へと突き刺さる
ドドドドドドドドドドッ
辺り一面に一気に降り注ぎ、水弾に貫かれたうさぎが
何匹も現れ始める
インビジブルラビットは絶命すると見えない状態から
見える状態へと変化する
おそらく常には魔法か何かで自分のことを隠している
のだろう
それが死んでしまうことで効力が無くなり現れるよう
になるらしかった
雨がやむと結構広範囲で水浸しになってしまった
「1,2,3,4,5,6匹かぁ
結構いたねぇ」
数えると周りには6匹のうさぎが死んでいた
ステラはうさぎを回収すると心臓から魔石を
取り出した
全てを回収することができ、しばらくの間のご飯を
手に入れたのだった
「このうさぎ、結構おいしいのよね」
目に見えず出くわす機会があまりないため、
たまにしか食べることができなかった
しかし、そんな魔物も森の奥行けば結構いるらしい
びちゃびちゃと水浸しの中を歩く
「あーあ、泥だらけになっちゃうなぁ
この魔法はだめだねぇ、ぼつにしよう」
広範囲に大量の水弾をばら撒くことができて、複数の
敵がいるときには便利だが使い終わった後が最悪だ
ユリは汚れても拭くだけで綺麗にすることができるが、
そもそも最初から汚れる前提であること事態がステラ
に取って気に入らなかった
しばらく歩くと、河原へとたどりついた
河原は山の麓へと続いてるようだ
「地図によると、この河原をまっすぐ行くとよさそう
まずはきゅーけー」
家から出て半日、早くも目的としていた場所まで
たどりついた
河原についてしまえば後はどこで休むことになっても
いいだろう
(行けるところまで行ってしまおう)
「さてと」
ステラは泥だらけになった靴や足袋を綺麗にした
ユリにも少しだけ泥が跳ねている
布で拭いて綺麗にしてやる
それが終わるとしばらくの間、河の中に足を入れて
休憩をした
先はまだまだ長い
そんな長い旅路を一人で歩くのは寂しいなぁと
家を出発して一日も立たない間に感じていた
それからご飯にした
メニューは先ほど手に入れうさぎを使った料理だ
調理器具を指輪から取り出す
指輪の機能は非常に便利だった
入れる時は魔力を流し込めば勝手に吸い込んでくれる
し、取り出す時は魔力で取りたい物を引っ張り出せば
取り出すことができる
ただ残念なことに中の空間は同一空間とされているよ
うで、例えば本を収納した後に水をそのまま吸い
込ませると、中の本はびしょびしょに濡れてしまう
取り扱い方には注意が必要だ
調理器具は簡単に包丁や器、まな板である
これらもお師匠様があらかじめ用意してくれていた
日用品だ
包丁なんかは研がなくても切れ味が損なわれることは
ないらしい
お師匠様も料理を好んでやっていたため、調理に欲し
い物はだいたいわかっていたのだろう
非常にありがたかった
余談ではあるが、私の髪の毛を切るための専用ハサミ
も用意してくれていた
なんでも、普通のハサミで切ると刃零れしてしまうの
だとか
調理器具を出し終え、まずは下ごしらえをした
皮を剥ぎ落とし、内臓やら何やらを取り出して中身を
綺麗にする
手に入れたのは6匹分
これから出会えるとは限らないので食べない分を
保存食として少し手を加える
綺麗に処理した生肉からある程度の大きさへと切り
分けていき、肉の中に含まれる水分を全て奪い干し肉
にしていく終わった物から袋に入れて指輪へと吸収
させる
こうしないと指輪の中の空間でぶつかった時に他の物
が汚れてしまうからだ
生肉のまま保存をすると中で腐ってしまいそうだった
ので、怖くてできない
匂いについては諦めるしかなかった
保存食を作り終えてから、今度は今から食べる食材を
調理する
肉を簡単においしく食べるのであれば焼くのが速い
薄くスライスした肉を、熱した金属プレートに乗せていく
すると
ジューッ!
と香ばしい音を立てながら肉が焼かれた
味付けは特にはない
というよりも調味料が家にはほとんどなかった
この半年で自分で使い切ってしまい、補充することも
できなかった
庭には菜園があったが作り方がさっぱりわからな
かったためである
そのまま焼けた肉を一切れ食べる
ぱくっ
「んんんんー!」
香ばしい肉の香りとやわらかい触感、程よい脂身が
口の中に広がっていく
「おいしい!」
次々と焼かれた肉をぱくぱくぱくぱくとどんどん
食べいてく
そして、あっという間に一匹分のうさぎは食べられて
しまった
「ごちそうさまでした!」
ふぅーと満足する
食器を洗って、水分を飛ばし、指輪へと収納する
ご飯を食べたのと、ここまで歩いてきたからか眠気が
襲ってきた
「お昼寝しようかな~」
そう思って指輪から簡易結界が張れる魔力結晶を取り
出した
これも旅の必需品だとあらかじめ指輪の中にしまって
あった
結界の能力としては直径2m程度を守ってくれる
防御結界だ
破るにはそれ相応の力が必要だし、破られる前に
気づくだろうとのこと
「本当にお師匠様には頭が上がらないなぁ
ありがとうだよ」
魔力結晶を設置し防御結界を張りつつお礼をいう
そして、結界の中で少し眠るのであった