第11話_旅立ち
そして時は動き出す
そんな懐かしいことを思い出していたら、私の目から
はいつの間にか涙が溢れいた
最近では時々昔のことを思い出して泣いてしまう日
がある
マクスウェルが亡くなった後に、家の近くにお墓を
立てた
本で学んだが人が亡くなってしまった時には墓を
立てるらしい
毎日お墓参りを欠かさず行い、修行に励んだ
お師匠様は私にたくさんのことを教えてくれた
ただ、これから私はどういう人生を歩んで行けばいい
のだろう
今まではお師匠様が私の道しるべとなってくれていた
でも今はそんなお師匠様はいない
「はぁ~、私を一人にしないでよ」
溜息が漏れる
それでも、毎日修行だけは欠かさないようにしよう
しばらくして9歳の誕生日を迎えた
ついに9歳の誕生日は一人で迎えることとなって
しまった
しかし、朝起きると家の中には異変が合った
部屋には飾り付けがされており
テーブルにはご馳走が並べられていた
「え?ええ?」
どういうことだろう
自分で用意した記憶はない、むしろ誕生日だけど
まぁいっかと流すつもりでさえいた
ただ見慣れた飾りつけではあった
いつもお師匠様が用意してくれる飾り付け、それに
決まって誕生日の日に用意されるご馳走
「お師匠様!!」
ステラは部屋を飛び出した
お師匠様の部屋に行っても彼はいない
外に行っても彼の気配は感じられない
そして気づいた
いつもお師匠様が座っていた方のテーブルには
たくさんの箱と手紙が置かれていた
ステラはまず手紙を開けることにした
~~~~~~~~~~ステラへ~~~~~~~~~~
まずはお誕生日おめでとうじゃ
お主が9歳になるころにはわしはこの世にはいない
じゃろう
きっと寂しい思いをさせていることじゃろう
すまんのぉ
本当はもっとお主に教えたいことはいっぱいあったの
じゃが
時間が許してくれんかった
不出来な師匠を許してほしい
だが、残された時間でお主にできるだけ残せる物を
用意したつもりじゃ
わしからの最後のプレゼントとして受け取って欲しい
1つ目が本じゃ
これにはわしの知識が全て書いてある
暇な時にでも呼んでくれたらええ
2つ目が刀じゃ
これはわしの全魔力を使って作り込んだ最高の品じゃ
素材には一番硬い鉱石やらいろんな材料とお主の髪の
毛が使われておる、
扱い安いはずじゃ、名前を気にすると思ったから名
も付けておくとしよう
『神剣-アステラス』なんてどうじゃ
お主の名前と似たような意味じゃ、気に入ってくれる
とありがたい
3つ目が指輪じゃ
これにはわしお手製の空間魔術が込められておってな
中にいろんなものを詰め込むことができるすぐれ物
じゃ
凄いじゃろ?
荷物を運ぶのが大変そうで、可愛そうと思って
しまっての
使い方は全て本に書いてあるから呼んでおくのじゃぞ
最後に4つ目じゃ
これが一番大切になるかもしれんな
今後のお主の人生についてじゃ
きっとわしが突然いなくなってこれからどうしようか
と迷っているのじゃろう?
そこでじゃ、わしが昔通っていた学校に推薦状を
出しておいた
古い知り合いがそこで先生をやっているのじゃ
もし、やることがないのであればそこに行って今後
のことを考えてみてもええかもしれんの
場所はもちろん本の中に載っておる
ただし、ちと遠くての、ここからだと1年ぐらいじゃ
旅をしながら新しい目標を見つけても良いしの
そしてわしからのお願いが一つじゃ
わしは全てをお主に託そうと思っていた
もう年じゃったからのぉ
その願いがわしの愛した人物を助けて欲しいことじゃ
名前は『精霊王の娘:ティターニア』
彼女はどこかに囚われの身となっているみたいでの
彼女を救うことがわしの目標だったのじゃ
すまんが頭の片隅にでも入れておいてくれたら嬉しい
のぉ
後はそうじゃの
わしはステラと出会えて凄く幸せじゃった
お主がいてくれたからこそ、頑張れたのじゃ
体には気を付けるんじゃぞ
危険だと思ったら逃げるんじゃぞ
息詰まったら、本の中身を見るんじゃぞ
そして、ずっと愛しておるぞ、ステラよ!
マクスウェルより
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ステラからは大粒の涙が零れた
最後の最後にたくさんの物を残してくれた
私のために
「おししょうさまぁあああ!!」
ステラは膝から崩れ落ちてその場でわんわん泣いた
泣き疲れて、ぐぅぅ
とお腹の音がなった
お師匠様の最後の料理だ
しっかりと噛みしめて食べよう
だが、口に運ぶ度に涙が溢れて味が分からなくなって
しまう
いつも作ってくれた料理の味に、嬉しくも悲しくもな
ってしまう
そして、食べ終わった後に気づいた
「レシピ聞いて置けば良かった・・・」
それから残してもらった物を一つづつ開けていく
まずは分厚い本だ
パラっとめくると綺麗な字でびっしりと1ページ
1ページにたくさんのことが掛かれている
一番後ろのページにはこの世界の地図が記されていた
次に開けたのは刀の箱だった
そこには120cm程度の少し長めの刀が鞘におさめられ
ていた
これもユリと同様に柄と鞘は黒と赤で塗られている
そして、手に取り刀を抜いてみる
すると
刀身は真っ白で少し光っているようにも見える、刃の
部分は少し淡く赤色になっているだろうか
まるで私の髪の毛の様だった
手に持っただけでわかる、この刀の凄さが
カチャともとに戻し、後で使って確認することに
しよう
最後に指輪だ
何でもおさめることができるらしい
試しに近くに置いてあったお皿を入れてみることに
する
すると、お皿はどんどん小さくなって最後には指輪の
中に消えていった
「え、なにこれ、すごい」
取り出し方は本に書いてあった
魔力を流し込み、取り出したい物のを掴んでとればも
との大きさに戻り現れる
実際にお皿は元通りの大きさに戻って指輪から取り出
すことができた
4つ目が学校に関する件だ
本には大抵の人間が学校に通うことで多くを学び
その中で将来自分のやりたいことを決めるという
あるものは騎士になったり、商人になったり、冒険者
になったり
私には特にやりたいことがなかった
それを見つけるためにも、お師匠様のいう通り学校に
行って見つけても良いのかもしれない
これについては少し考えることにしよう
また、お師匠様からたくさん貰ってしまった
思い起こせば私は弟子として貰ってばかりで何も
上げることができなった気がする
「不出来なのは、私のほうだ」
それから悩むこと数日、ようやくステラの心は
決まった
お師匠様から貰った本を読んだり、刀を振って見たり、
指輪の使い方を学んだりしている間、頭の中をよぎる
のは学校に行くかどうかであった
私はお師匠様以外を全く知らない、知っていると
すれば、魔物ぐらいであろう
しかし、お師匠様はいつも言っていた
「新しいことを始めることは怖いことだが、
それなくしては人は前には進めないのじゃ」
新しいことを始める時、私の今がその時だ
そして決心する
それからの行動は速かった
部屋の片付けをしたり、必要そうな道具は全て指輪
に入れたりした
綺麗になった部屋の中を見渡すと本当に簡素で
ほとんど何もない
しかし、ステラにとっては9年間の思い出がいっぱい
詰まっている
そして、翌日
ステラはお墓の前に立っていた
「お師匠様、私、旅立つことにしました
お師匠様のいう通り、自分のやりたいことを見つけ
に行こうと思います
どうか不出来な弟子を見守っててください
行ってきます!」
そして家の前にも立ち、別れの言葉を告げる
あまり大きくはない家、広い庭、良くここで修行を
した毎日
私を9年間も育ててくれた場所だ
その場所に一言
「ありがとうございました!」
とお礼の言葉を述べる
ステラは歩き出す
始めての旅、始めての世界へと
彼女の人生はまだまだこれからなのだ