5話『兆し』
バケツを持ったまま転んだプリーは今日1日をどんよりした雰囲気で過ごしていた。
「ごめんねアーク君次は転ばないから」
「もう大丈夫だって! 同じ失敗を繰り返さなければ良いだけだよ」
「うん! 次こそは頑張るね!」
「うん、その調子だ!よしよし」
「えへへ」
なんやかんや過ごし、 もう夕方近くになった。 父とベーギさんはまだ帰って来ていない。
「お父さん達まだ帰って来ないわね……夜遅くだと心配になるわ」
「うん、 パパ大丈夫かな」
「きっと大丈夫、 父さんとベーギさんそれに他の村の人達も協力してる何かあればすぐ対処できるさ!」
「うん……」
結局次の日も父達が帰って来る事は無かった。
「流石にそろそろ心配だわ、 ちょっと様子を見に行ってこようかしら」
「流石に危ないよ! 昼間でも今はまだ出ない方がいい!」
母が痺れを切らし様子を見に行こうとした時玄関の扉が開き父達が帰って来た。
「父さん!」
「あなた!」
「パパ!」
「すまない、 遅くなってしまった!」
「プリー……」
父と母と僕はギュッと抱き合いプリーも小走りでベーギさんに駆け寄り抱き付いた。
「聞いてくれ、 今回はやはりゴブリンの仕業だと思う。 原因となるゴブリンはまだ見つけられてないが村周辺を隈無く探した、 その結果今は村に居ないと皆で結論付けた」
「怪我人とかは大丈夫だったの?」
「ああ、 捜索中に襲われる事は無かった。 無事帰って来れたさ」
「その……ゴブリンはまた村を襲わないかしら?」
「それは分からないが可能性はある。 一先ず今回に関して無闇に捜索せず村の守りを固める方針にした」
「じゃぁまだ外は危険なんだ」
「まぁ今までとそこまで変わらないさゴブリンは村の外だ今回は警備も固めてあるそうそう村の中には入って来れない、 仮に来たとしても撃退してやるさ! だから安心してくれ庭先までなら遊んでも構わないぞ!」
「それじゃプリーもお家に帰れるのかな? 」
「そうだな、 ひと段落着いたし家に帰ってしっかり休むと良い。 お互いにな」
「ああ、 そうだな」
「そっか、 プリーまた遊ぼうね!」
「う、うん! また遊ぼ! お、お泊まりも来て良い?」
「もちろん!」
「それじゃ俺達は帰るな、 プリーの面倒を見てくれてありがとよアーク」
「僕も楽しかったからまたいつでも来て下さい!」
「ベーギ気を付けろよ」
「おまえもなジル」
「アーク君またね!」
「またねプリー! ぅくっ……」
プリーに別れの挨拶をした瞬間何か大事な物を見落としてる気が、 頭をガンと叩かれた感覚に陥ったがその時は結局何なのか分からなかった。 後になりその違和感に早く気付くべきだったのかも知れないと後悔しても仕方ない事である。
その夜またうなされる事になった。 まるで現実を見ているかのようなリアル感に目が覚め視界がぼやける。
「うぅ……また変な夢を見た……くそぅ……水を飲んでもう一眠りするか」
結局その夢には深く触れず翌日を迎えた。
朝になりいつもの様に食事をし、 いつもの様に稽古をした。 午後になりプリー達と遊び夕方になった。
「もう夕方だねお家に帰らなくちゃ! アーク君今日も遊んでくれてありがとうね!」
「うんまた遊ぼ!…………ねぇ、プリー」
「ん? どうしたの?」
「なんかさ、 変な事あったりしない?」
「変な事ぉ? 例えば?」
「いや……なんて言うか危険な気がするとか何かに巻き込まれるとか……」
「ん〜? 今は楽しいよ? 毎日アーク君が遊んでくれて、 パパが居て、 美味しいご飯が食べれるの!」
そう言ってニコニコと楽しそうな事を語り始めるプリー。元気なプリーに励まされ釣られて僕も元気になった。そんな幸せな時間が着々と終わりに近づいて来た。
「わ! もうこんな時間だ! 急いで帰らないとパパに怒られちゃう!」
「うん! 見送るよ! ありがとうプリー最近不穏な事が重なってて怖くなってたんだ元気なプリーを見れて勇気付けられたよ」
「そんな事ないよ! 私の方がアーク君にいっつも元気付けられてるよ!」
「うん!……よし! 急いで帰ろう! お家まで走ってきょーそーだー!」
「わー!ずるいー!」
元気なプリーちゃんが1番ですね。
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