解決!鈴音ちゃん!!
「鈴音ちゃん、私、どうしたらいいのかな。」
二人だけの教室で、琴音は私に泣きついてきた。
「どうしたの、琴音。」
私は琴音を慰めながら、琴音が落ち着いて、話し出すまで待った。
「浩介が明日、転校しちゃうみたいなの。」
「えっ!そうなの、全然知らなかった。」
「みんなには黙ってたんだって、私にだけさっき伝えてきたの。それも近くじゃなくて、海外だって。私、突然そんなこと言われたって、どうすればいいか分からない。
浩介は離れていても、いつも通り私と付き合っていたいし、きっとどうにかなるって言っているの。浩介は先に私から離れることを分かっていたから、勝手に気持ちを整理できたかもしれないけど、私は全然、気持ちを整理できてない。
今も心の中はぐちゃぐちゃなの。私は、浩介と離れて、上手くやっていける自信がないの。どうなるか分からないけど、不安しかないの。ねえ、鈴音ちゃん。私、どうすればいいかな。」
私はすぐにいい答えを返すことができなかった。私は泣きついてくる琴音を見ていた。すると、右手に何かを持っていた。
「その右手に持っているものは何?」
「……これ?これは浩介がさっきプレゼントしてくれたブローチ。確か、あやめの花のブローチだったかな。私、花になんて興味ないのにね……。」
私はそれを聞いて、あることを思いついた。私は琴音の持っているあやめのブローチを取り上げて、琴音にあることを聞いた。
「ねえ、琴音。あやめの花言葉知っている?」
「……知らない。」
「そうだよね。私も知らない。」
そう言うと、私は手に持ったブローチを力の限り、握りしめた。私の手の中で、ブローチが壊れていくのが分かった。私は手を開いた。ブローチは変形して、一部の部品が壊れていた。私はその残骸を地面に叩きつけた。
そして、足で何度も何度もその残骸を踏みつけた。床が揺れるくらいに強く踏みしめた。しばらく踏んでいると、ブローチは鉄でできた枝の部分が残り、他は砂のように粉になっていた。私はその砂を綺麗に拾い集めて、教室の窓から投げ捨てた。
ブローチの砂は、風に流されていった。私は窓の外で、手のひらに付いた砂を払って、琴音の方を向いた。琴音は口を開けて、呆然としていた。
「あやめの花言葉は、スマホで調べればいつでも出てくると思う。でも、琴音の今の気持ちは、今しか出てこないの。
分かるでしょう。琴音が浩介からもらって、大切なものだったはずのあのブローチも今はもうないの。粉々に壊れてしまったの。今、どれだけ大切に思っているものでも、いつなくなっちゃうか分からない。
だから、今、琴音が思っている気持ち、浩介にそのまま伝えてみたらどうかな。いつか、後悔しないために。」
琴音はしばらく呆気に取られているようだったが、急に表情をやわらげ、教室を飛び出していった。
「あーあ、これが青春ってやつか~。」
私は一人ぼっちの教室で、そう言うと、掃除道具入れからほうきと塵取りを取り出して、ブローチの砂を掃きとった。